「医学部を受験する」子どもがそう言ったら 塾代7万、初年度学費300万…経験者が語る

2023/08/03

■特集:大学受験・進学にまつわるお金

「医学部を受験したい」。子どもにそう言われたら、保護者としては応援したい気持ちと同時に、これからかかる費用のことが頭をよぎるのではないでしょうか。現役で私立大学医学部に進学した息子がいる田中亜矢子さん(仮名)に、医学部受験や進学にかかった費用について聞きました。(写真=Getty Images)

塾代は月7万円、夏季講習20万円 中学受験と同程度

数学が得意だった息子は、都内にある中高一貫校の理系コースに通っていました。中学入学時から医学部を目指していたわけではなく、とにかく野球が大好きで、野球部の活動に熱心に取り組んでいました。高1のときに、得意な数学と大好きな野球を掛け合わせ、「スポーツドクターになる」という夢ができて、親としても「やりたいことを見つけられてよかった」と思いました。私自身も私大医学部出身で、親に金銭的な負担をかけてきたので、費用面については「頑張るしかない」という気持ちでした。

本格的に受験勉強に取り組んだのは、高2の終わりごろからです。親としては浪人してもいいと思っていました。本人も「塾には行きたくない」と言っていましたし、私も「受験勉強だけの高校生活を送ってほしくない。気がすむまで、高校生活を楽しんでほしい」と思っていました。

ところが、新型コロナウイルスの流行で、野球部の活動が高2の終わりごろからできなくなりました。それで「塾に行ったら?」と勧めました。塾嫌いの息子でも納得してくれそうだと思って見つけてきたのは、医学部受験専門ではなく、東大理学部を目指す受験生が通う塾です。数学は学校でトップの成績だったので、よりできる人たちと学んで刺激を受けてほしいと思いました。実際、1つの問題を受講生たちで話し合いながら、答えを導き出すといったところが、息子に合ったみたいです。野球部の活動が中途半端に終わってしまった悔しさを、そのまま勉強にぶつけていました。

数学のほか、苦手だった英語も受講しました。それぞれ週に1回なので、かかった費用は1カ月で7万円程度、夏期講習が約20万円でした。中学受験の際にも大手の塾に通っていましたが、そのときにかかった費用と変わらないくらいの印象です。

私大医学部受験料は1校6万円

志望校を決めたのは、高3の夏ごろです。もともと浪人を覚悟していたので、親子で「現役のときは本当に行きたいと思える大学だけを受験しよう」と話し合いました。息子が行きたいと言ったのは2校だけで、第1志望は地方の国立大学、第2志望は都内の私立大学。それ以外は受験しないと決めました。

結果的に息子の場合はそれがよかったのです。

まず、受験料が安くすみました(笑)。私立大学の医学部の受験料は1校6万円程度ですが、息子が受験した私立大学は1校だけ。国立大学は大学入学共通テストと2次試験の受験料合わせて3万5千円ですので、合わせて約10万円です。加えて国立大学は地方で親が付き添ったので、2人分の交通費と宿泊費で10万円ほどかかりました。

志望校を絞って対策、勝ち取った合格

また、志望大学に絞った試験対策をできたことも大きかったと思います。医学部に合格するには、共通テストの得点率が8割以上必要と言われていますが、息子は8割に届きませんでした。その時点で「浪人確定」と思いましたが、共通テストの後、私立大学の受験日まで2週間くらいあり、その期間に塾の英語の先生が志望大学に向けた対策をみっちりしてくれました。2校しか受けないので、スケジュール管理がしやすかったこともよかったですね。

国立大学が不合格となり、予備校の説明会を予約したところで、私立大学から繰り上げ合格の連絡を受けました。「まさか」という感じでした。

医学部でもアルバイトはできる

医学部の6年間の学費は、国公立大学で約350万円、私立大学は2千万~4千万円くらいで幅があるようです。息子が入学した大学は私立大学にしては比較的安く、1年次にかかった費用は、入学金、授業料など合わせて約300万円です。授業で使用するテキストは、授業料に含まれているので、別途かかりませんでした。2年次以降に聴診器などが入った10万円程度の診察バッグ一式を購入しましたが、それ以外では授業料のほかには大きな出費はありません。

自宅から通学していますし、本人は家庭教師や飲食店でアルバイトもしているので、お小遣いについては、どうしても足りなくなった時に相談されるくらいです。毎月、テストがあり、勉強は大変そうですが、授業によってはオンデマンド配信を選択できます。自分のペースで受講できるぶん、アルバイトのシフトも入れやすいようです。周りの同級生たちも経済的な目的だけではなく、社会勉強として積極的にアルバイトをしているようです。

本気で志望なら親はサポート

医学部は学費が高いですが、本人が志望しているのであれば、親としては何とか行かせてあげたいですよね。私立大学の場合でも、地域枠選抜は奨学金の返済が免除となるので、地域医療に興味がある受験生には選択肢になると思います。卒業後に特定の地域や診療科に所定の期間勤務することが条件になりますが、一般選抜より合格しやすいケースもあるようです。

こうした制度を調べたり、塾選びをしたりするのは親がサポートできることではありますが、医学部受験の大前提は本人が本気で医学部を志望していることだと思います。医学部の勉強は大変なので、本人の主体性や興味がなければ、大金を払って入学しても6年間学び続けるのは難しく、途中で諦める学生もいると聞きます。医学部を目指す時点で、医師という将来の職業も決めるわけですから、親子で十分に話し合うことをお勧めします。

(文=中寺暁子)

【大学受験・進学にまつわるお金】
●「このお金は…?」予備校から高額請求、娘の「ひとり暮らし」宣言…大学でかかる費用、親の涙
●子どもの受験生活、大変だった「夫対策」 出願費50万円「無駄だ」と言われて妻は…
●理系志望がまさかの美大進学、学費は160万円 想定外の出費、どう乗り越えた?
●「歴史的な円安」の中、娘がヨーロッパ留学へ…高額カード請求に驚愕
●「滑り止めへの入学金、もったいない」 息子が大学受験、自らの経験を活かした母
●生活費、帰省代、大学院進学……意外とかかる地方国立理系進学
●奨学金、返済不要型も意外と多い 1.6万種類、自分がもらえるものを探すには?
●早稲田大学は独自の奨学金が約150種類も 親子の会話で獲得を
●大学受験と学費、いくら必要? 予備校は?医学部は高い?留学すると…

1pxの透明画像

記事のご感想

記事を気に入った方は
「いいね!」をお願いします

今後の記事の品質アップのため、人気のテーマを集計しています。

関連記事

注目コンテンツ

マネー

入試

調べて!編集部

NEWS