「滑り止めへの入学金、もったいない」 息子が大学受験、自らの経験を活かした母

2023/08/05

■特集:大学受験・進学にまつわるお金

大学受験にかかる費用は、受験校数や、志望する学部・学科、自宅から通える大学かどうかなどによって異なりますが、実際のところ、どれくらいかかるのでしょうか。長男が都立高校から現役で私立大学農学部に進学した鈴木美穂子さん(仮名)のケースを紹介します。

創薬の仕事を夢見て、高1から通信教育を受講

息子は2023年春から社会人になりましたが、大学受験のことは今もありありとよみがえってきます。息子の第一志望は国立大学の薬学部でした。中学から陸上競技をしており、長距離が専門でした。高校の陸上部は全国大会に出場する年もある強豪で、入学直後から部活漬けの日々でした。

息子は、長距離選手に起こりやすいスポーツ貧血による、めまいや立ちくらみなどの症状に悩まされました。その経験から、「自分と同じ悩みを持つ人のために薬を開発したい」と、早い時期から国立大学の薬学部を志望していました。

部活は遅くまで練習があり、塾や予備校に通う時間はありません。さらに引退は高3の冬だと言います。「受験の目前まで部活があるの?」と耳を疑いましたが、本人は最後まで続ける決意でした。塾や予備校に通うのは難しく、「自分の都合に合わせて勉強ができるから」と、かねて受講していた通信教育1本で受験に臨むことにしました。スタート時の高1の受講料は1教科が月約2000円、国立大学受験に必要な5教科を受講したので、約1万円でした。受講料は学年が上がるにつれ、高くなりましたが、それでも3年間で支払った金額は37万円程度です。塾や予備校などと比べれば、かなり安くすみました

子どもが生まれたときから学費の積み立て

都立高校の同じ陸上部の先輩たちの多くが有名大学や難関大学に現役合格していました。陸上部の同級生はほとんど塾や予備校には行っていませんでした。その分、みんなで集まってよく勉強をしていました。

受験校はセンター試験(当時)の成績をもとに、前期、中期、後期と3つの国公立大学に出願しました。国公立大学は地方の大学を含め、私立大学は自宅から通える大学にしました。私立大学は薬学部以外に、農学部も受験しました。受験に必要な費用については、子どもが生まれるとすぐに銀行に口座を作り、学費や習い事に備えて積み立てをしていたので、大きな問題はありませんでした。

滑り止め大学への入学金支払いを今も後悔する母親

一方、私は自分の大学受験の時に、行かなかった滑り止め校に入学金を払ったことを、親に対してずっと申し訳なく思っていました。入学金の納入期限をよく調べて出願すべきでした。こうした反省もあり、息子の私立大学受験ではこのようなことがないように、よく考えて計画を立てました。受験する4校のうち2校は一般入試(現在は一般選抜)に比べて受験料が安い大学入試センター試験利用入試(現在は大学入学共通テスト利用入試)にしました。合格ラインは一般入試より高くなりますが、個別に受験せずにすむので、子どもの負担も少なくてすみます。その一方で、センター利用入試は合格発表や入学金、学費の納入期限が早いので、注意深く確認しました。

第一志望の国公立大学は手ごたえがあったにもかかわらず、残念な結果となりました。息子は落ち込んでいましたが、「全力でやりきったから、浪人はせずに受かった私立大学に行く」と、私立大学の農学部へ進学しました。薬学部からの進路変更になりましたが、私立大学の中で一番行きたかったところに行けたのはよかったと思います。

使わなかったお金は、将来の結婚祝い金にしたい

大学に入った息子はスポーツサークルに所属し積極的に活動しました。派手に遊ぶようなことはなく、通学手段も「近いから」と自転車を利用。4年次からは「アルバイトで稼いでいるからお小遣いはいらない」と宣言しました。

息子の留学費用も準備していましたが、コロナ禍ということもあり、その機会はありませんでした。このお金は将来息子が結婚するときに、お祝い金として渡そうかと考えています。

第一志望は合格最低点超え 科目の基準点が足りず

余談になりますが、実は息子は第一志望だった国立大学の試験で、合計得点が合格最低点を40点以上超えていたことが後日、わかりました。不合格だったのは、個別試験のある科目で、大学が設けた基準点を超えていなかったためでした。息子は出願時に科目の基準点があることを見落としていました

結論からいえば、「入学した大学にご縁があったのだ」と思います。息子の大学生活は充実したものでしたし、親である私も息子の大学の父母会活動に参加し、めいっぱい楽しみました。体育会系の部活の試合を観戦したり、文化部のコンサートや演劇を見に行ったりしました。最近は父母会活動が盛んな大学が少なくないようですが、入学するまでこのようなことは全く知りませんでした。思いがけない機会をくれた息子に感謝しています。

(文=狩生聖子)

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