「歴史的な円安」の中、娘がヨーロッパ留学へ…高額カード請求に驚愕

2023/07/27

■特集:大学受験・進学にまつわるお金

大学受験にかかる費用は、受験校数や、志望する学部・学科、自宅から通える大学かどうかなどによって異なりますが、実際のところ、どれくらいかかるのでしょうか。関東近県の私立高校から、近隣の私立大学外国語学部に合格した大学3年の娘を持つ、林恵美子さん(仮名)のケースを紹介します。(写真=Getty Images)

教育には無関心な夫、妻が少しずつ教育費を貯蓄

小さい頃からマイペースな娘は、部活も勉強もほどほどに楽しむタイプ。高校に進学してからも、「将来これをしたい」という確固たる夢はなく、「理系は無理だから、私立文系」というよくある消去法で、外国語学部を選んだ理由も「他の学部よりはおもしろそうだから」ということでした。それだけに、ヨーロッパ圏のある言語を学びたいと言われたときは、驚きました。

高卒の夫は、「大学なんて行かなくてもいい」が口癖でした。ただ、娘には甘いので、「お金が必要だから」と言えば出します。しかし、塾代や大学の学費がいくらかかるかなどは考えようともしません。無関心だけどうるさくないのを幸いに、お金は娘が中学に入った頃から私が家計をやりくりして少しずつためていました。

受験先も娘と二人で決めました。娘の実力やモチベーションを考えて難関大は回避。オープンキャンパスなどにも出向いて、学びたい分野がきちんと学べる、面倒見のよさそうな私立大学を第一志望に決めました。

夏期講習30万円以上のショックがいまだに忘れられない

問題は塾や予備校をどうするかでした。通っていた私立高校は入学前の説明会で、「うちの高校は塾なしでも、レベルの高い大学に合格させることができます」と何度も言っていました。娘も私もそれを信じて、通塾を考えたことはありませんでした。

ただ、外国語学部は言語ごとに学科が分かれ、1学科の定員が少ないところばかりです。そのため、合格できるのか、不安になりました。高2の終わりの三者面談で、「塾に行かなくて大丈夫でしょうか」と担任に聞いたものの、あいまいな回答しかもらえず、「これはダメだ」と思って、すぐに塾を探し始めました。

娘の希望は個別指導塾でした。受験科目にどれも不安があり、集団授業だとついていけないと思ったようです。完全個別ではなく「生徒2人に講師1人」というスタイルの塾を選びましたが、費用は相応に高く、1カ月5万~6万円かかりました。驚いたのは夏期講習の費用で、30万円以上の請求が来て本当にびっくりしました。このときのショックはいまだに記憶にありますから、当時、相当うろたえたのだと思います(笑)。

滑り止め校の入学金は想定内

出願した大学は3校です。同じ学部でもいくつかの方式があり、複数回の受験が可能だったので、受けられる日程はすべて受けることにしました。

滑り止め校は1月中に試験がありました。娘はプレッシャーのせいか、試験中に体調を崩し、別室で試験を受けさせてもらったそうです。この大学は2回(2日間)受験し、合格を1つもらうことができました。ほっとしましたが、同じように体調不良が第一志望校でも起こったら、と気が気ではありませんでした。

2月に入ると第一志望校の入試が始まりました。受験のチャンスは4回あり、すべてに出願しました。何度も受けるとその分、お金もかかり、娘の負担も大きいと心配もしましたが、結果的には受けて正解でした。いただいた合格はこちらも1つだけだったからです。4回のチャンスのおかげで無事に第1志望校に合格して、ホッとしました。

滑り止め校に払った入学金26万円は結局、無駄になってしまいましたが、これは想定内でした。浪人の選択肢は私にも娘にもありませんでした。滑り止め校がなかったら、続く第一志望大学の受験はさらに不安なものになったでしょう。

短期留学は寮費、食費も込みで約52万円

娘は「外国語学部に合格できたら留学プログラムに参加したい」と言っていました。私も娘のやりたいことを応援したかったので、その分の費用も準備していました。足りない分は私の親に一部、出してもらうことも考えましたが、なんとかなりました。留学を希望する人はインテンシブクラスに入るので、1年次から勉強が忙しいのですが、意欲的に学んでいました。

ただ、入学した年はコロナ禍の真っただ中で、サークルもバイトもほとんどできず、かわいそうでした。飲食店のバイトも、シフトにほとんど入れず、バイト代は1カ月に2万円程度しかもらえなかったのではないでしょうか。

それだけに翌年、「留学できる」と聞いたときは本当によかったと思いました。半年ほどの短期留学ですが、歴史のあるヨーロッパの大学で、キャンパスも広く、寮もありました。費用は52万円ほどかかりますが、半年間で寮費と3食の食費もすべて込みということで、これはお得だと思いました。

歴史的円安で留学先での生活費が膨大に

ところが、家族で娘の出発を見送った2週間後のことでした。

「ママ、寮の食事が合わないの。外で食べてもいいかな」と連絡が来たのです。料理は揚げ物が中心で、同じような味付けばかり。最初はよかったけれど、だんだん胃の調子が悪くなってきたと言います。周りでも体調を崩している子が多いと言われたら、無理をして食べなさいとは言えません。

ところが、ちょうど歴史的な円安になりました。ファストフードでも円に換算すると、一食2000円もすると言います。大学からの指導で、娘にはクレジットカードを持たせていたのですが、カード会社から毎月、食費だけで1カ月4万~5万円の請求が来るようになりました。

さらに慣れてくると、娘は一緒に留学した同級生たちと、休みのたびに旅行に行くようになりました。国内がメインとはいえ、トータルで10万円程度の支払いになり、洋服や日用品などの買い物も入れ、総額40万円もの出費となりました。

下の子も大学受験 教育費は親に相談予定

それでも帰国の日、成田空港の到着ロビーから出てきた娘の顔を見たとき、私は、「留学に行かせてよかった」と思いました。日本にいたときとは違って、随分と大人びて見えました。帰国後は以前にも増して勉強に取り組むようになり、語学の検定も積極的に受けています。コロナ禍が沈静化して、アルバイトもたくさんできるようになったので、お小遣いも増やさなくてすんでいます。

今、不安なのは来年、下の子が大学受験だということです。学費が2人分重なることをすっかり忘れていました。子どもが小学生くらいのときから、もっとお金を蓄えておけばよかったなというのが反省点ですね。今回ばかりは「足りなくなったら私の親に相談しよう」と思っています。

(文=狩生聖子)

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