子どもの就活を心配しすぎる氷河期世代の親 バブル世代とも違う親子ギャップ 大学職員の本音座談会【後編】

2025/08/01

■連載:大学職員座談会

キャリア支援担当の大学職員が支援するのは学生ですが、近年は保護者対応もかなり比重が大きくなってきているようです。今回は、学生の就活における保護者の関わり方の現状と、保護者や受験生に伝えておきたいことを、都留文科大学、龍谷大学、創価大学のキャリア支援担当者に聞きました。(聞き手=朝日新聞「Thinkキャンパス」平岡妙子編集長、写真=Getty Images)

保護者向けの懇談会やガイダンスも

——最近の就活で気になることはありますか。

龍谷大学:就活に親の影響力がかなり大きくなっていることが挙げられます。本学では「全国保護者懇談会」という、保護者を対象とした学修状況や就職状況等の疑問点や不安を解消するための懇談会を全国29カ所で行っています。教職員が面談するのですが、保護者の方からの質問や意見は多くあります。「もっと地方(出身地)との連携を強めてほしい」といった要望も多いです。本学は19の府県と就職支援協定を結んでいて、UターンやIターンの強化もしていますが、実際に地元志向が強くなっています。学生の意思かもしれませんが、親の影響も大きいのかなという印象です。

創価大学:少子化の影響もあると思いますが、子どもとより親密にコミュニケーションを取ろうとする保護者の方は増えていますね。本学では3年生対象のガイダンスに保護者の方にも参加いただいています。

龍谷大学:何となく、子離れできない親と、親離れできない子どもが増えているように感じますね。子どもの意見も聞かずに、「こんな会社はやめとけ」と言うとか、親が介入しすぎるケースも多く、ちょっと考えものかなと感じます。今の学生の親御さんは、バブル世代と氷河期世代が混在しています。世代によって就活への意識も全然違うので、お父さんからは「大手行けるやろ」と言われるのに、次の日にお母さんから「休む暇があったら就活しなさい」と叱られるとか、そんなこともあるのかもしれませんね。

 創価大学:保護者自身が就活で苦労した氷河期世代は、現在の就職活動に対して強い関心や不安を抱いている方もいらっしゃいますね。この20年間ぐらいで業界の様相や仕事の仕方がかなり変化しており、保護者の就職観が現在の状況と少しずれていると感じることもあります。例えば、文系学生はIT系へは就職しない、経済学部なら金融系に就職する、地元で就職するなら公務員や農協関係だろう、とか。でも今は、数年間は都市部で働いて、テレワーク可能な仕事に就いてから地元に戻るなど、フレキシブルな選択もできるので、こうした世代間ギャップを埋めていく必要性を感じます。

 親は「信じて見守る」のが仕事

——保護者の方に伝えたいメッセージはありますか。

創価大学:学生の可能性は本当に無限大で、1人の人間が持っている力はすごいと常々感じているので、大学生活の中でお子さんはもちろん、親御さんも一緒にそれを信じられる機会を提供できればと思いますね。大学進学については親子ともに不安があると思いますが、不安が大きければ大きいほど変化も大きいと思うので、ぜひ可能性を信じて進学していただけたらと思います。

都留文科大学:本学も含めて、大学ではキャリア支援だけでなく、いろんな部署が連携しながら学生生活全体をサポートしていますので、ぜひ安心して送り込んでいただければと思います。

龍谷大学:私が子育てで一番大事だと思っているのは、「信じてほっとく」ことです。「ほっとく」だと言葉が悪いかな、「信じて見守る」ですね。これはすごく難しいことですが、これができた時には、本当の意味で親子関係もうまくいくし、就活も成功に導かれると思います。小児科専門医で発達脳科学者でもある成田奈緒子先生の言葉に、「子育てとは『心配』を『信頼』に変えていく旅」というものがあって、私はすごく好きです。まさにそれができた時こそ、子どものために親がやるべき本当の仕事がわかるんじゃないかなと思います。だから、心配になってつい手を出したくなってもグッと耐え、子どもを信じて見守ってもらいたいと思います。

大学は人生を変える力を持っている

——受験生の皆さんにはどんなことを伝えたいですか。

創価大学:大学ってやっぱり自分の世界を広げていく、大きな翼を得ていくところだと思います。本学の場合、国際寮もあるので、異国の友達と一緒に暮らしたり、海外に初めて行ったり、いろんな挑戦機会も得られると思います。大学はまだまだ学生の人生を変える力を持っていると信じているので、広い世界に飛び出し、自分自身が信じられないくらい変わっていくことを体感してもらいたいと思います。

都留文科大学:受験は大変だと思いますが、ぜひオープンキャンパスなどで大学の魅力を直に感じる経験をしてもらいたいですね。本学は山梨県にある大学ですが、47都道府県全部から学生が集まってきています。富士山のすぐ近くで学ぶ環境としても申し分ないので、機会があればぜひ足をお運びいただけたらと思います。

龍谷大学:大学受験を考える時に、偏差値を気にするかもしれませんが、それに惑わされすぎないでほしいと思います。どこに入るかではなく、入ってから何をするかが大事だと思います。だから高校生の皆さん、ぜひ、入ってから何を学びたいかを改めてよく考えてみてください。

>>大学生の就職活動、担当者のホンネは「サポートしすぎかな?」 大学職員の本音座談会【前編】

 >>面接で「御社は第2志望です」と言ってしまう学生も 「エージェント任せの就活」が気になる 大学職員の本音座談会【中編】

 (文=小元佳津江)

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