■連載:大学職員座談会
大学入試を控えた受験生や保護者にとって、就職活動はまだ先のことで想像がつきにくいかもしれません。しかし、どんなキャリア支援をしているかは大学選びの重要なポイントの一つでしょう。そこで今回は都留文科大学、龍谷大学、創価大学のキャリア支援担当者に、どんな支援を行っているのかや、大学側の思いを聞きました。(聞き手=朝日新聞「Thinkキャンパス」平岡妙子編集長、写真=Getty Images)
時代背景に合わせた多様な支援
——キャリアサポートとしてどのような取り組みをしていますか。
都留文科大学 本学は教員養成からスタートした大学で、かつては90%以上が教員になっていましたが、近年では企業への就職が50%以上、公務員が約15%、教員が25〜30%になっています。学生の売り手市場が続く中、就活が早期化していますが、キャリア支援センターに対して敷居が高いイメージを持つ学生がまだまだ多いようなので、それを取り払えるように、最近は低学年、主に2年生向けのサポートに力を入れています。2年生の4月のガイダンスは、これまで教員志望者向けのみでしたが、2025年度から初めて公務員と企業向けも行いました。
龍谷大学 私たちも低年次の学生向けのキャリア教育にも力を入れています。本学ではキャリアを「就職」ではなく「将来設計」というもっと長いスパンで捉えてキャリア支援を「キャリア教育」と「進路・就職支援」の2本柱で行っています。そのキャリア教育の一つに「RYUKOKUキャリア・スタート・プログラム」を正規プログラムとして実施し単位を認定しています。これは主に1、2年生が対象です。このプログラムでは、まず「キャリア入門」でさまざまな学部の先生からキャリアと働き方や生き方をつなげた講座を全15回開講してもらい、その後「キャリア実習・実習指導」で5日以上の実習に行ってもらいます。
創価大学 本学でもキャリア支援は低年次から行っています。授業は1年生から4年生まで体系的に取れるように設計し、卒業生との懇談会や学内での就業体験、ビジネスコンテストなども1年生から参加できる機会をつくっています。また、進路が決まった4年生や大学院修士課程2年生に、学部1、2年生のキャリア支援を行ってもらう「ピアサポート」制度も設けています。
——学生からはどんな要望が出ていますか。
龍谷大学 本学は1学年5000人ほどいるので、年間のべで60回以上のセミナーやガイダンスを行っていますが、それでも「面談枠を増やしてほしい」という声を聞くことがあります。筆記試験、自己分析、エントリーシートのサポートもしていますが、ちょっとサポートしすぎかなと思うぐらい面倒見が良いです。
都留文科大学 やはり「早期選考対策やインターンシップの情報がほしい」という声が多いですね。また、本学の場合、1学科を除いて基本的に教職が取れるので、教職を取りながら民間企業や公務員を目指すケースも多く、その両立に不安を感じる学生も多いです。そのため、教職、公務員、企業それぞれの担当相談員が互いに連携を取りながら手厚くサポートするようにしています。
創価大学 本学では、約半数の学生が在学中に何らかの留学を経験しますが、長期留学中の学生から、「帰国時期を踏まえると、どんな会社の選考を受けられるか」といった問い合わせを受けることもあります。今は就活の時期がかなり複線化し、学生のスケジュールも個人によって違うケースが増えているので個別に対応しないとならず、一律のサポートが難しくなっていると感じます。
キャリア支援のジレンマも
——サポートも多岐にわたっていて大変ですね。
都留文科大学 早い学生は3年生の秋口には内定、内々定をもらいます。そういう学生が周りにいると焦ってしまい、「どこでもいいから内定がほしい」という発想になってしまいがちです。決まったものの、「実は内定先はあまり行きたいところではない」ということもよくあり、果たしてどうなのかと思ってしまいますね。
創価大学 就活が早期化しているとはいえ、企業側にも、学生時代にしかできない豊かな経験をきちんと積んできてほしいという思いはあるんです。私も、回り道しても無駄なことはないし、自分でたくさんもがいてあがいて、いろいろ失敗を重ねた学生のほうが最終的には強いと考えています。でも、早期化にも対応しなければなりません。我々も、キャリア支援のジレンマを日々感じているところです。
龍谷大学 2025年2月に行った5日間の学内合同企業説明会に、3500人ほどの学生が参加しましたが、その約半数が1、2年生でした。早めに動いてくれるのはうれしいですが、果たしてこれでいいのかな、大丈夫か日本、という気持ちにもなってしまいます。まさに大学職員のジレンマです。こんなこと言ったらいけないのかもしれないですが、本当に4年で就職せなあかんのかと思うことがあります。創価大学さんもおっしゃったように、遠回りしてもいいと思うんです。それぐらいの度量を世の中が持ってほしいなとも思いますね。
>>面接で「御社は第2志望です」と言ってしまう学生も 心配な「エージェント任せの就活」 大学職員の本音座談会【中編】
>>子どもの就活を心配しすぎる氷河期世代の親 バブル世代とも違う親子ギャップ 大学職員の本音座談会【後編】
(文=小元佳津江)

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