「困ってる学生を放っておけない」 心の不調から彼氏とのケンカまで、神フォローする大学職員の本音座談会【後編】

2025/06/26

■連載:大学職員座談会

大学職員がサポートするのは、学生の事務的なことばかりではありません。心の不調に親身に対応したり、彼氏とのケンカの話に耳を傾けたり……。教務課や学生課の職員が、「何でも屋」の日々を語ります。(聞き手=朝日新聞「Thinkキャンパス」平岡妙子編集長、写真=Getty Images)

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卒業にこだわる親

 ――教務課や学生課の担当として学生たちと接していて、思い出に残っている出来事はありますか。

A大学担当者(以下A大学):4年生の男子学生から、「担当教員とうまくいかず、卒論が書けない」という相談を受けたことがありました。彼はやがて大学に通い続けることが難しくなり、休学し、留年が決まりました。心配して、一人暮らしをしている彼の部屋までたびたび行ってはインターホンを鳴らしたものの、出てくる気配はありませんでした。でも、保護者の方は「せっかく4年まで通ったのだから」と卒業することにこだわっていました。

C大学担当者(以下C大学):なかなか難しい状況でしたね。

A大学:でも、このままでは何も変わらないと考えて、本人や親御さんとよく話をしたうえで、一度大学から離れてリセットしてはどうかと提案しました。

B大学担当者(以下B大学):大学には、一定の条件を満たせば再入学できる「再入学制度」がありますから。

A大学:そうなんです。ただし、家に閉じこもっていては再入学もかないません。それで仕事先を手配してあげて、1年くらい働いてみることを提案しました。その結果、環境を変えたことが功を奏したのか、半年で大学に戻ってこられました

――そこまでサポートするのですか。

A大学:彼は今年の春に第1志望の企業への就職も決まり、無事に大学を卒業しましたが、就職活動では履歴書の添削、面接の練習までとことん付き合いました。我ながら、かなり力を尽くしたと思います。でも困っている学生は放っておけないですよね。

 「彼氏とケンカして家がめちゃくちゃ」

 ――深く関わってあげて、あたたかいサポートに感動します。逆に学生から頼りにされすぎて、困ったこともあるのではないでしょうか。

B大学:印象に残っているのは、彼氏とケンカして彼の部屋の中がめちゃくちゃになり、「彼氏から弁償しろと言われているのですが、どうしたらいいですか」という女子学生からの相談です。「壊したものリスト」なるものには、部屋の外に置いてあった自転車のサドルまでありました(笑)。「これは私が払うべきだと思いますか」と真剣に聞かれたので、「彼氏と一度しっかり話し合ったほうがいいよ」とアドバイスしました。さらに、お金のことで困っているのであれば、ご両親に相談するようにも言いました。

A大学:いろいろありますね(笑)。

B大学:「壊したものリスト」を見せられても、壊れ具合もわかりません。でも、彼女はどこに相談したらいいかわからず困っていたようなので、まず学生課に相談に来てくれたことがありがたかったです

C大学:私も男子学生から「彼女に振られました」と泣かれたことがありました。でも、そんなことまで話してくれるんだ、とうれしく思って聞いてあげたことを覚えています。

困ったら教務課・学生課へ

 ――最後に今どきの大学生と日々接している立場から、学生や保護者にメッセージをお願いします。

 C大学大学職員と知り合いになることは、学生にとって実はメリットが多いことを伝えたいです。わからないことや困ったことがあったら、まずは担当部署に相談に行ってみてください。そうすると、職員が名前を覚えて、きっと気にかけてくれますから。そういう職員が一人いるだけで、親や友達に相談できないような問題が発生した時にも力になってくれて、気持ちが楽になると思います

B大学:痴話ゲンカからお金のトラブルまで、「こんなことを大学職員に相談してもいいのかな」とためらうような困りごとであっても、私たちは何でも聞きますよね。その場で解決できないことでも、次にどこに相談すればよいかを一緒に考えますそれが私たちの仕事ですから。

A大学:うちの大学では休学する学生が増えていて、何とか一人でも多くの学生に寄り添って、休学や退学を減らしていきたいと考えています。だから、保護者の方々からの相談も大歓迎です。お子さまの様子に少しでも気になるところがあったら、ぜひ早めに相談にいらしてください。

 ――大学職員の方々が、学生への優しい気持ちにあふれていることを感じました。困ったことがあったら、親身になってくれる人がちゃんといることは心強いですね。本音を聞かせていただいて、どうもありがとうございました。

 >>【連載】大学職員座談会

 (文=小内三奈)

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