■連載:大学職員座談会
デジタル時代を生きる今どきの大学生たちは、大学職員の目にはどう映っているのでしょうか。大学での事務手続きから日常の困りごとまで、大学生活全般をサポートしている教務課や学生課の職員に、学内での様子を語ってもらいました。まずは、学生と連絡を取る難しさについての悩みを聞きました。(聞き手=朝日新聞「Thinkキャンパス」平岡妙子編集長、写真=Getty Images)
とにかく高いITリテラシー
――学生と日々、いろんな場面で接していて、「今どきの大学生だな」と感じるところはありますか。
A大学担当者(以下A大学):入学前から学習の中でもさまざまなITツールに触れてきたからか、ITリテラシーがとても高いと思います。
B大学担当者(以下B大学):同感です。
A大学:入学直後に行う履修科目の登録なども、一度説明すれば難なく対応できる学生がほとんどです。新しく利用するシステムにも柔軟に対応できているようで、使い方に関する問い合わせはほとんどありません。
C大学担当者(以下C大学):それは私も強く感じます。コロナ禍を経て、学生たちのIT対応力は一層、上がったように感じます。
B大学:最近、落とし物の検索システムを導入したのですが、学生に案内したところ、すぐに多くの学生が活用してくれているようでした。ITに適応できる学生は、年々増えている印象がありますね。
C大学:うちの大学でも数年前に、それまで紙で運用していたものを電子化したところ、学生はすぐに使いこなして何の質問も来なかったのに、先生方からは「見られない」「開けない」という問い合わせが殺到しました。「紙に戻してほしい」という要望まで出て、両者のギャップに驚きました(笑)。
チャットは“秒”でレスポンス
――学生とのやり取りを通じて、昔とは変わったと感じるところはありますか。
C大学:電話でのやり取りが苦手な学生が多いです。こちらからわざわざ電話をする時は、期日が迫っているなど、緊急性が高い場合です。それなのに電話に一向に出てくれないし、折り返しもない学生が多いですね。
A大学:わかります。
C大学:ところがチャットで連絡すると、即レスです。LINEなどに慣れ親しんでいる世代だけに、チャット形式のコミュニケーションが基本になっているのでしょう。
A大学:うちもまったく同じ状況です。学生とのやり取りは、Slackというコミュニケーションツールを基本としていますが、チャットで連絡したほうが明らかに反応が速いです。私たちの世代は「緊急連絡は電話」でしたが、その常識はもう通用しないようです(笑)。
B大学:中には、チャットも見てくれない学生もいます。そういう学生は恐らく何も見ていないので、連絡手段が尽きてしまいます。単位が足りなくて卒業がギリギリといった緊急性の高い用件を伝えたい場合は、結局は電話を使うしかありません。それでつながらなければ、ご実家に電話して「お子さんにチャットを確認するよう伝えてください」と泣きつくこともあります。
情報に受け身になりがち
――それは大変ですね。私たちの学生時代は、大学からの連絡事項は大学の掲示板を見てチェックするのが基本でしたが、もう過去のものなのですね。
B大学:すべて学生専用のウェブサイトを通じて情報配信しています。ただ、毎日のように何十件もメールが配信されるため、重要な情報が埋もれてしまうという側面もあるかもしれません。
C大学:そうですね。大学側からの情報をうまくキャッチできていない学生が一定数いるだろうな、と心配はしています。いろいろなITツールを使いこなし、メールもチャットもお手のもののはずなのに、期日までに必要な手続きができない学生もいますから。
B大学:それはありますね。今は情報があふれていますから、自分に必要な情報を取りにいこうとする行動力に欠けるところがあるかもしれませんね。
C大学:学生を見ていて、情報を主体的に調べる習慣や、自分のこととして理解する力があまりないように思います。さらに、そのことをまずい状況だとも感じていなくて、放置してしまっている学生もいます。これはとても心配な部分です。
B大学:学生がよく見ているだろうSNS一つをとっても、AI(人工知能)によって自分の興味に合った投稿ばかりが表示されますよね。そうやって欲しいものばかりが届く環境が当たり前になっているから、大学からの大量の情報が未読スルーになるのは無理もないのかもしれません。
A大学:教務課の立場としては、「これも伝えよう」「あれも送っておこう」と情報を詰め込んで送って満足しがちです。もちろん、そこから必要な情報をしっかりとキャッチしてくれる学生もいますが、学生からすると、1日に何十件もメールが届くのは確かに大変ですね。皆さんとお話をしていて、少し反省しました。
>> 【中編】今どきの大学生は、あきらめが早い 卒業式後の謝恩会の参加率が激減したワケ 大学職員の本音座談会
(文=小内三奈)

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