あきらめが早い、今どきの大学生 謝恩会の参加率は3割以下に 大学職員の本音座談会【中編】

2025/06/26

■連載:大学職員座談会

今どきの大学生の他人との関わり方は、保護者世代の常識とはだいぶ違っているようです。そんな学生と日々関わっている大学の教務課や学生課の職員は、どのようなことを意識して彼らとコミュニケーションを取っているのでしょうか。(聞き手=朝日新聞「Thinkキャンパス」平岡妙子編集長、写真=Getty Images)

>> 「緊急なので電話」しても無視、チャットなら即レスの今どきの大学生 大学職員の本音座談会【前編】 

あきらめが早く、焦らない

 ――最近の学生を見ていて、気になることはありますか。

A大学担当者(以下A大学):今も昔も学生の本質はそれほど変わっていないように思いますが、最近はあきらめが早い学生が多いと感じます。例えば、単位取得がギリギリという場合、教員が追試や補講を用意して救済するよう制度化しているのですが、そうやって手を差し伸べてもらっても、必死にならない学生が少なからずいます。

C大学担当者(以下C大学):その感じ、よくわかります。

A大学:昨年度も、教員がわざわざ補講の日時を設定してくれたにもかかわらず、「その日はバイトで行けません」「他の日ではダメですか」と言ってきた学生がいました。

C大学:うちの大学だけじゃないとわかって、少し安心しました(笑)。

A大学:学生に「最後のチャンスをもらっているんだよ」と諭しても、「バイトなので、じゃあ大丈夫です」と言われてしまった時は驚きました。そもそも先生をはじめ、周囲のご厚意に応えるという姿勢は、社会人になってからも大事なことです。それも説明しましたが、伝わりませんでした。

C大学:最近の学生は、まずい状況になっても、「これはやばいぞ」と認識している感じが伝わってきません。自分のことなのに、どこかひとごとのような雰囲気を感じます。

 B大学担当者(以下B大学)学生に危機感がないのとは裏腹に、保護者の方がお子さんの学業面のことが心配でたまらなくて、何度も電話をしてくることがあります。「授業に出席していますか」「単位は取れそうですか」「どの授業を履修すればいいですか」「その授業で何が必要ですか」……と。

A大学:お子さんに聞いてもわからないのでしょうね。

 親が上京して卒業を嘆願

 ――保護者への対応で困ったことはありますか。

 B大学:保護者の方から「子どもの成績に納得がいかない」「子どもが単位を落としたのはなぜか」と苦情が来ることはありますね。

C大学:まさに昨年度、東北からご両親が連れ立っていらして、「子どもが単位を落として留年したのは、事前に伝えてくれなかった大学側にも責任がある。卒業させてほしい」と責められたことがありました。あの時は変な汗をかきました。

A大学:卒業見込みについては、学生専用のウェブサイトを見れば、簡単に確認できる仕組みになっていますだから、本人が気づいているはずですよね。

C大学:そうなんです。でも「わが子は頑張った。大学のほうに落ち度があったはず」という一点張りで。でも、留年してしまったことを変えることはできないので、ただ話を聞くことしかできませんでした。最終的に、学生本人から「大ごとにしてすみませんでした」と連絡があり、少し救われた気持ちになりましたが。

謝恩会の参加率は3割以下

 ――むしろ、学生本人のほうが冷静なのでしょうか。

 A大学:そうですね。象徴的なのは、卒業式の後の謝恩会の参加率が激減したことです。学科120人のうち30人くらいしか集まらなかったりするので、廃止する学科も出てきています。そうなると教員が自ら幹事を務めたり、学生に声をかけたりするケースもあったりと、教員に今までの感謝を伝えるための謝恩会なのに、立場が逆転しています。

C大学:確かに今の学生は関心事の領域が狭くて、自分の近くのものにしか興味がないのだろうなと感じます謝恩会のような大規模な集まりとなると、「自分には関係ない」と考えるのかもしれませんね。

A大学:もちろん、飲み会が好きな学生もいます。でも、研究室やゼミの飲み会には絶対に行かないという学生も増えていると感じます。

――学生同士でも「内」と「外」の境界線のようなものが存在するのでしょうか。

B大学:だから私たち大学職員も、日ごろから学生との距離を縮めておく必要があると思っています。

C大学:同感です。学生たちの関心事の「内」に入っていかないといけませんね。

B大学:私はクラブ生の面倒をみることが多いので、会ったら必ず自分から「最近どう?」などと声をかけるように心がけています

C大学:私も、どんなに嫌がられても「教務課のあの人からまた連絡が来たぞ」と思われるくらい、顔が浮かぶ関係性になることが大事だと思い、自分から声をかけるようにしています。一対一の関係性をいかに作っていくか。これが、今どきの学生と付き合う上で大事なポイントだと思います。

>> 「困っている学生を放っておけない」 心の不調から彼氏とのケンカまで、大学職員が神フォロー 大学職員の本音座談会【後編】

(文=小内三奈)

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