■ランキングまるわかり

医学部医学科に合格するためには国公立、私立大学を問わず、高い学力が必要です。医学部は他学部と比べて、どのくらい難しいのでしょうか。河合塾のデータをもとに編集部で作成した「医学部偏差値ランキング」から読み解きます。国公立大学と私立大学の難易度を、それぞれランキング表で表しました。(写真=2024年2月25日、東京大学の2次試験会場。朝日新聞社撮影)

国公立大のランキング

現在の医学部医学科は、どのくらい難しいのでしょうか。

以下に示した表は、河合塾の最新(1月現在予想)の「2024年度入試難易予想ランキング表(医・歯・薬・保健学系)をもとに、編集部で作成したものです。なお、この入試難易度は河合塾が2023年度入試の結果と2023年度に実施した「全統模試」や「共通テストリサーチ」を参考に設定しています。医学部の難しさをわかりやすくするために、参考として東京大学や京都大学などの他学部(科類)を併記しました。

まずは国公立大学医学部医学科のランキングベスト10(一般選抜前期日程)です。

・赤字は医学部医学科以外。カッコ内に表記のないものは一般枠。
・表は大学入学共通テスト(以下、共通テスト)のボーダー得点率の高い順。ボーダーは2024年1月18日時点のもので、河合塾が予想する合否の可能性が50%に分かれるラインを意味する。
・共通テストの得点率による順位としているため、2次試験の偏差値は70.0~72.5のように幅を持たせている。国公立大学の一般選抜は共通テストの得点と大学別に実施される2次試験(面接を含む個別学力検査)の得点で、合否が判定される。
・11位以下の医学部医学科については、掲載していない。
(図=編集部作成)

ランキング1位は、共通テストのボーダー得点率が92%、2次試験の偏差値が72.5の東京大学理科三類です。難易度が医学部と並ぶ他学部(科類)をランキング表の参考欄に掲載しました。東京大学理科一類(ランキング表4位)、東京大学理科二類(同5位)、京都大学薬学部(同9位)、大阪大学薬学部(同10位)を医学部と比較しました。神戸大学医学部医学科は、東京大学理科二類よりも難しいといえます。

医系専門予備校メディカルラボ情報研究所の山本雄三所長は、「国公立大学の医学部は、ブランド力や知名度から東京大学や京都大学など旧帝大の人気が高い」と言います。

国公立大学は、都市部に近いほど難度が高く、離れるほど入りやすくなっています。また、国公立大学は共通テストで80%以上の高得点を取れないと、2次試験で逆転合格することは難しくなります。共通テストで十分な得点が得られなかった場合は、全国の地方国公立大学を照準に出願先を検討しなければなりません」

私大医学部は偏差値60以上

私立大学医学部医学科のランキング(一般選抜前期日程・全大学)はどうでしょうか。

赤字は医学部医学科以外の学部・学科。カッコ内は試験方式。(図=編集部作成)

私立大学の一般選抜は、数学、理科2科目、英語での受験がほとんどです。2次試験は面接や小論文が中心となります。ランキング表では、1位の慶應義塾大学を筆頭に、全国すべての私立大学医学部が偏差値60.0以上に入っています。

30年以上前であれば、私立大学医学部は偏差値50前後で入れるところも。具体的には、1980年のデータにさかのぼると、偏差値50以下の医学部は6大学もありました。
「当時は大学進学率が今よりも低く、私立大学医学部は学費が高いこともあって受験できる層は限られていました。単純に今と比較することはできませんが、医学部に入りやすい大学が現在と比べて多かったのは事実でしょう」

医学部人気が高まったのは、バブル崩壊後の1990年代からといいます。
「将来の不安から、安定した職業を求める受験生や保護者が増えました。所得の高い一般世帯が多くなったこともあり、私立大学医学部の受験者が増え、偏差値も上がってきたのです。2000年のボーダーライン表では、ほとんどの私立大学医学部の偏差値が60.0を超え、2005年には現在とほぼ同じようになっています」

慶應義塾大学病院。病院を取り巻くように医学部キャンパスがある(写真=2020年、朝日新聞社撮影)

私立大学の医学部医学科も国公立大学と同じく、歴史が古く、かつ都市部にある大学が上位に入っています。2位には、慶應義塾大学とともに医学部御三家といわれる日本医科大学東京慈恵会医科大学が並びます。ここに、順天堂大学も加わっています。

「順天堂大学が難化したことで、近年は御三家でなく、『医学部四天王』という言い方もされています。これらの私大医学部は、一部の地方国公立大学の医学部よりも難しいといわれています。地方国公立大学の医学部に合格しても、入学を辞退して、これらの私立大学を選ぶ受験生は珍しくありません」

私立大学の場合は複数の大学を併願できるので、合格しても入学を辞退する者の数も少なくありません。
「大学によっては正規合格者の半分以上が抜け、補欠合格者が繰り上がるところもあります。このため、実際に入学した人のボーダー偏差値は、もう少し低くなる可能性があります」

女子の志望者増加

ランキングは学費とある程度の相関関係があるといわれています。学費が安い私立大学には国公立大学との併願者が多く集まり、難度が上がります。

>>私大医学部の学費は平均約3200万円 費用を抑える手はある…?

私立大学の中で学費が最も安い国際医療福祉大学は、医学部が開設された2017年度の志願者は2769人(募集人員100人)でしたが、年々増えて2023年度は3027人(同105人)、2024年度は3249人(同105人)で過去最高になりました。志願者増に連動して偏差値も上がってきています

今後、医学部医学科の人気はどう推移していくのでしょうか。山本所長によれば、進学校では理系学部の人気が高まっており、医学部も同様と言います。

特に女子は医学部医学科を志望する人が増えています。今後、少子化で大学受験者の数は減っていくと思われますが、医学部人気はしばらく続くと予想しています

医学部医学科は入学定員も限られているため、どの大学も難関です。志望する場合は、しっかりとした対策が必要です。

>>【連載】ランキングまるわかり

(文=狩生聖子)

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