【新課程・大学共通テスト】私大希望でも受ける? 服装、受験料は?

2024/01/16

保護者世代にとって、実はよく知らないことも多い「大学入学共通テスト」。いつ申し込むの? 当日に体調を崩したらどうなる? さらに2025年からの新教育課程での変更点など、保護者からよく聞かれる疑問に、大学受験に詳しい河合塾教育研究開発本部の近藤治・主席研究員が答えます。(写真=Getty Images)

 

 

1. 共通テストって? 受験生はみんな受けるの?

保護者世代には、大学入試センター試験やかつての共通一次試験と同じような位置づけというと、わかりやすいかもしれません。毎年1月中旬の2日間(土・日)に全国で一斉に行われる試験で、現在では毎年およそ50万人が受けるため、「日本最大の入学試験」とも言われています。試験会場は、通っている高校または自宅がある地域の国公私立大が基本です。

国公立大の一般選抜では、この「共通テストの得点」と「大学独自の2次試験(個別学力検査)の得点」の合計で合否判定されるため、共通テストの成績をもとに、1月下旬ごろから各大学の2次試験に出願します。つまり国公立大の一般選抜を受ける場合は、原則として共通テストを受ける必要があります

(資料=河合塾)

一方、私立大志望の受験生は必ずしも共通テストを受ける必要はありませんが、共通テストの成績で合否を判定する「共通テスト利用方式」を実施している私立大がたくさんあります(個別試験を課すケースもあります)。共通テストの結果だけで複数の大学や学部・学科に出願できる場合もあるため、一般方式と並行して利用することで、合格のチャンスが広がるメリットがあります。

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2.「共通テスト利用方式」を受ける際の注意点は?

私立大の「共通テスト利用方式」は、志望大学まで試験を受けに行くことなく、共通テストの結果だけで複数の大学や学部・学科に出願できる選抜方式です。受験料についても、私立大の一般方式では1校あたり3万5000円ほどかかるところ、その半額程度で済むため、お手軽に受けられます。ただし、それはメリットでもあり、デメリットでもあります

というのも、願書を出すだけなので、大学のことをよく調べずに何校にも出願してしまいがちです。ネット通販で実物を見ずに買い物をしてしまうのと少し似ているのですが、不安なあまり「ここも出しておこう」「あそこも出しておこう」と出願しすぎてしまう傾向があります。そうなるとトータルの受験料もかさんでしまいます。

また、「共通テスト利用方式」の募集定員はかなり限られ、そこに多くの志願者が集まるので、合格ラインが高くなりがちです。私立大の独自試験と共通テストは出題形式が異なるため、両方受けるとなると、どちらの対策も必要になります。「共通テスト利用方式」に出願すべきなのか、本当に行きたい大学なのか、よく検討したうえで出願することをおすすめします。

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3. 申し込みはいつ? 受験料は?

9月下旬ごろには申し込みが始まるため、高校3年の夏には「受験するかどうか」を決めておく必要があります。受験する場合、現役生は通っている高校を通じて、既卒生は自分で出願します。

受験料は、3教科以上を受ける場合は1万8000円、2教科以下は1万2000円です。「理科」や「地理歴史,公民」の受験する科目数や選択方法は出願時に決めないといけません。必要な科目は大学によって異なりますので、早めに志望大の入試概要を確認しておきましょう

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4. 服装は? 必ず持っていくものはある?

受験時の服装についてはよく「制服を着ていくのですか」と聞かれますが、制服である必要はありません。冬なので寒さ対策ばかりに気を取られがちですが、試験会場は暑いこともありますので、温度調節しやすい服装がおすすめです。また、英文字や地図がプリントされた服などは禁止されていますので、受験案内をよく読んでおくことも大切です。

持ち物については、受験票、鉛筆(H、F、HB)、消しゴム、鉛筆削り、時計は必須でしょう。シャープペンシルはマークシートでは使用できませんが、計算などの際には使用可能です。

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5. 当日の時間割は?

下図は25年度以降の共通テストの時間割です。1教科60~130分。すべてを受けると朝9時半からまでみっちりで、昼休憩が80分、そのほかの休憩も40~50分あります。一見ゆったりとしたスケジュールですが、実際は答案回収や早めの入室などで、のんびりする時間はあまりありません。

共通テストに限ったことではありませんが、受験では前の時間の教科の失敗を引きずってしまう受験生が多くいます。つまり、合格にはメンタルも大事な要素です。心を落ち着かせる方法は人それぞれだと思いますので、休憩時間を使っていかに自分を立て直すか、その方法を知っておくことも対策の一つかもしれません。

(資料=大学入試センターが公表している時間割(イメージ)をもとに編集部で作成/実際の時間割は検討中)

 

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6. 当日、電車が遅れたり、調子を崩したりしたら?

「車が渋滞した」といった個人的な事情は配慮されませんが、交通機関の事故または災害等が発生した場合は、試験開始時刻を繰り下げる措置がとられることがあります。遅れに巻き込まれた場合には、受験票に記載されている「問合せ大学」へ連絡し、試験場に向かいましょう。

体調については、2週間後(年度によって変わる可能性があります)に実施される追試験の対象となる場合があります。試験開始前であれば受験票に記載されている「問合せ大学」に電話したうえで、申請受付時間内に「受験票」と「医師の診断書」を持参することで受験申請できますので、「医師の診断書」をもらっておくといいでしょう。試験場で調子が悪くなってしまったりした場合は、監督者や試験場の担当者に申し出て、指示を受ける必要がありますが、追試対象となるのは受験していない教科・科目からとなります。日頃の体調管理を心がけましょう

なお、これらの措置は大学入試センターが発表する「大学入学共通テスト受験上の注意」に詳しく記載されています。年度によって変わることもありますので、目を通しておくと安心です(上記は令和6年度版をもとにしています)。

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7. 試験結果はどうやってわかるの?

出願時に希望すると「得点開示」といって、得点を知らせてもらえるシステムがありますが、届くのは入試が終わってからです。そのため、受験生は新聞などの解答速報などを見て自己採点しないといけないので、解答を控えておく必要があります。

なお、塾や予備校では、各受験生の自己採点結果をもとに大学ごとのボーダーライン予測などをして、受験生に「○○大学を出願しようとしている人の中で30番目ですよ」といった情報提供をする「自己採点集計」というサービスを行っているところが多くあります。高校の先生がまとめて申し込んでくれるケースが多いものの、受験生に任せている高校もあるようですので、確認しておくといいでしょう。ボーダーラインだけなら予備校のホームページなどでも確認できますが、複数の「自己採点集計」を見比べると安心ですので、いくつか利用してみるのも手です。

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8. 2025年に新課程に移行する共通テスト。注意点は?

基本的に高校の教科書の範囲からの出題というところは、保護者世代の「センター試験」「共通一次試験」や、現行の「共通テスト」と変わりありません。ただし、21年度から始まった共通テストは、センター試験と比べると問題文がとにかく長い傾向があり、時間との闘いだということが特徴です。問題文を読むだけでかなりの時間を要しますので、模試を受けたり、過去問を解いたりして、どの問題にどのくらいの時間をかけるべきかという「体内時計」をつくっておくといいと思います。

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9. 旧課程で学んだ既卒生はどうなるの?

新課程に移行する初年度(25年度)だけ、浪人生向けの経過措置として、「数学①」「数学②」「地理歴史,公民」と新科目「情報Ⅰ」に関しては、旧課程の問題も用意され、既卒生は選んで受けることができます。ただし、「地理歴史,公民」から2科目を受験する際には、新旧の科目を組み合わせて受験することはできません。

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10. 選択科目で気をつけることはある?

「地理歴史,公民」で『地理総合,地理探究』『歴史総合,日本史探究』『歴史総合,世界史探究』『公共,倫理』『公共,政治・経済』から2科目を選択する場合は、組み合わせることができないパターンがあります。また、北海道大学、東京大学、京都大学などでは『地理総合/歴史総合/公共』は選択不可となっていますので、大学のホームページなどで調べておくといいでしょう。

また、受験生の間でよく「どの組み合わせが有利か」「どの科目が勉強しやすいか」といった話が出回ることがありますが、噂にすぎません。選択科目や組み合わせによって平均点に20点以上の差がついた場合は、得点調整も入りますので、あくまでも志望大学に必要な科目を選ぶようにしてください。

(参考) 地理歴史,公民で2科目受験する場合のパターン

○は選択可能な組み合わせ、×は選択不可能の組み合わせ

(b)のうちから2科目を選択する場合、『公共,倫理』と『公共,政治・経済』の組み合わせを選択することはできない。
(b)のうちから1科目と(a)を選択する場合、同じ名称を含む科目を組み合わせることはできない。
(資料=大学入試センター)

>>変わる大学入学共通テスト 問題数が増え、試験時間が延長…2025年度からの変更点

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11. 親が受験生にやってあげられることは?

共通テストでは、年度によって注意点や追試の時期などが変わることがあり、大学・高校関係者用としていち早く、毎年7月にその「受験案内(閲覧用)」が公開されます。そうした内容の確認や、当日の試験会場までのルートを調べるなど、勉強以外のことこそ、親にできることです。受験経験があるようでしたら、失敗談でも成功談でもいいので、それとなく話すと、迷ったときの参考にもなるようです。

それから、当日まで「いつも通り」を心がけることも大切なことです。わが子を心配してか、直前に態度がガラリと変わってガミガミ言い出したり、急に黙り込んだりする保護者の話を受験生から聞くことがありますが、大きなストレスになるようです。日頃から世話を焼くタイプなら世話を焼き続け、お子さんに任せるタイプなら任せ続ける。これも保護者にできる大事なことの一つです。

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(文=竹倉玲子)

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