■教育系YouTuber&専門家と予測する 2025年度大学入学共通テスト
2025年の大学入学共通テストは長文や資料を読んで考える問題が増え、さらに時間との闘いになる――。教育系YouTuber、宇佐見天彗(すばる)さんと西岡壱誠(いっせい)さんは、そう予想します。朝日新聞「Thinkキャンパス」平岡妙子編集長によるインタビュー後編では、「時間との闘い」に向けた対策や本番に臨む際の心得、親のサポートについて聞きました。(写真=左:西岡壱誠さん、右:宇佐見天彗さん)
>>共通テストを知り尽くす教育系YouTuberが教える 新・共通テストの注意点【前編】
過去問の解き方にもコツがある
――共通テストは限られた時間内で長文や資料を正確に読み解く力を求められることがわかりました。このことを踏まえたテスト対策が、必須になりそうですね。
宇佐見天彗(以下、宇佐見):そう思います。特に注意したいのが、数IAのデータ分析問題です。時間がかかるのは図表やグラフの読み取りと分析の部分なのですが、ここは解法に関する知識があまりいらない分、「その場で読み取れればいいや」と思って対策を怠りがちです。早くから素早い処理をする練習をしておけば、本番でもかなり違ってくると思います。資料読み取り問題が追加となる国語では、問題文を先に読んで、必要な情報をある程度把握してから資料を読む練習をするとか、それなりに戦略を立てて臨んだ方がいいかもしれません。
――過去問も、時間を計って速く解く練習をする方がいいのでしょうか。
宇佐見:僕の場合、最初は時間を計って解きます。その後、解答を見る前にもう一度、時間無制限で解くんです。もし、制限時間内で解いて60点だったテストが、時間をかけたら95点取れた場合は、問題文の読解や解答までの時間を短縮するトレーニングをすればいいのですが、時間をかけても65点しか取れない場合は、単純に実力が足りていないということ。まずはそこをしっかり見極めないと、「時間が足りなかったから解けなかった」と思い込み、実力不足を見過ごしてしまいます。時間はかかりますが、この方法はお勧めです。
西岡壱誠(以下、西岡):僕は「共通テストで時間が足りない」という人には、制限時間の半分、例えば70分のテストなら35分で解いてみることを勧めています。時間が足りないという人の中には、もっと必死になればいいのに、それができていない人が案外いるものです。だったらとことん負荷をかけて、どこまでできるか試してみようよ、と。ちょっと荒療治ではありますが、追い詰められたときに自分はどこまでもがけるのかが分かると、時間がうまく使えるようになって、点数も伸びます。

共通テストが一番特殊で過酷
――共通テストから大学入試が始まるという受験生は多いと思いますが、前向きなメンタルを保つコツはありますか。
西岡:共通テストは入試の中でも一番特殊だということを、しっかり認識することです。少なくとも「共通テストは入試の前哨戦」というイメージは、今すぐ捨てた方がいい。一番初めの試験が、一番特殊で過酷だということを、全受験生に伝えたいです。
宇佐見:メンタルと聞いて思い出すのは、2022年に行われた第2回共通テストの数I・Aですね。あれは難しかった。僕自身、大問1問を残した状態で「残り10分」と聞いてかなり焦りましたし、試験後の休憩時間には、廊下で泣いている人もいました。あの試験の後は、多くの人がそれなりに精神的なダメージを受けていたと思います。試験の真っただ中にいると、「自分だけができなかった」と思いがちですが、実はそうではないことは覚えておいてほしいですね。
西岡:2022年は、数I・Aの次の試験科目が数II・Bでしたが、こちらは想定内の難易度だったにもかかわらず、平均点が低かった。多分、多くの受験生が数I・Aの失敗を引きずったまま、試験を受けたんでしょう。共通テストは、何かの科目で訳がわからないほど難しい問題が出てきて、心を折られることを前提としておいてください。極端な話、本番に備えて、模試などで一度は心が折れる経験をしておいた方がいいかもしれません。それに国立大学の場合、共通テストで失敗しても合格できる可能性は十分ありますから、共通テストがうまくいかなかったからといって、落ち込む必要がないとも言えます。
宇佐見:僕も、国立大学は2次試験で逆転できるということをお伝えしたいです。一般的に東京大学合格のボーダーラインは、共通テストで750点くらいと言われていますが、実際の合格者に話を聞くと、600点台だったという人もいました。共通テストの後、予備校が出す合格ボーダーラインを見て不安になったとしても、そこであきらめる必要はありません。最後まで自分の意志を曲げず、戦い抜いてほしいです。

親からのアドバイスはいらない
――親はどのようなサポートをすればいいでしょうか。
宇佐見:正直に言うと、親御さんができるのは見守ることと、食事など健康管理の面について気をつけてあげることくらいじゃないでしょうか。何か伝えるにしても、あくまでさりげなく、こういうのがあるらしいよ、という感じがいいですよね。
西岡:僕はその「さりげなく」のアドバイスすら不要だと思っています。試験本番で向き合うのは、あくまで受験生自身。そして受験生はだれでも、多かれ少なかれ自分なりのやり方を持っているもので、中には試験当日に持っていく筆箱の大きさまで決めている人もいるほどです。そういうこだわりの強い人は、自分の決めたルールを崩されることをものすごく嫌がるし、さらに言えば、それくらいこだわりの強い人ほど合格できます。お子さんがそういうタイプだったら、親御さんはもう何も言わず、ただ見守る方がいいですよ。
――家にいても勉強しない、受験に対する危機感が足りないという場合も、ただ見守るしかないのでしょうか。
西岡:勉強は学校や塾の自習室でして、家では一切しないという受験生も、一定数存在します。だから自分の子が家で受験勉強をしている姿を見たことないからといって、勉強していないとは限りません。見当違いなことを言わないためにも、まずは先生など第三者の意見を聞くことをお勧めします。その上で、少し背中を押してあげた方がよさそうなら、親御さんからではなく、学校や塾の先生から話をしてもらえばいいんじゃないでしょうか。
宇佐見:確かに、第三者から言ってもらうというのはいい方法ですね。僕のYouTubeチャンネルPASSLABOを見て志望校に合格できたという学生も、何がきっかけで動画を見てくれたのか聞くと、友達や先生から勧められたとか、YouTubeのおすすめ動画に出てきたと言う人がほとんど。僕の知る限り、親から勧められたという人はいませんね。

――親は子どもが心配だからつい言ってしまうけど、そこはぐっと抑えて先生に託すということですか。
宇佐見:心配する気持ちはわかりますが、たとえ不合格になったとしても、それで何かが終わるわけではありません。もちろん受験生は全員合格するつもりで臨んでほしいですけどね。
西岡:その大学で勉強するために必要な学力があるかどうかを判断するのが入試で、不合格になるということは「今、その大学に入っても楽しく学ぶことはできない」という意味。ゲームに例えるなら、不合格はゲームクリアに至っていないものの、ゲームオーバーではありません。浪人して再度アタックする限りは、ゲームは継続しているんです。
最後に泣くような受験をしてほしい
――心強い言葉ですね。ちなみに、宇佐見さんは毎年、共通テストを受験しているそうですが、2024年も受験しますか。
宇佐見:はい、受験します。教育系YouTuberである以上、受験生と目線を合わせて話ができるようにしておきたいんです。
――最後に、受験生にエールをお願いします。
西岡:いつも言うことですが、結果はどうあれ、最後に泣くような受験をしてほしいですね。受かったのにうれしくないとか、落ちたのに悔しくないという人は、本気で受験を戦い抜いたとは言えない気がします。終わったときに涙が出てくるくらいの思いで挑んで、その上で勝ったり負けたりするのが大学受験。これは2浪を経験した、僕なりの結論です。
宇佐見:僕も受験生には、完全燃焼してほしいと思っています。試験前日に「できる限りのことはしたのだから大丈夫」という自信が持てれば、本番で思わぬ難問に出合っても、ミスをしても、気持ちを立て直すことができます。ぜひ普段の模試や定期テストから「やりきった」という感覚を持つ練習をしてみてください。あともう一つ、本番でわからない問題があってもクヨクヨせず、逆に1問でも解けたら「できた!」とテンションを上げることも大切。自己肯定感をキープしながら共通テストを乗り切ってください。
>>共通テストを知り尽くす教育系YouTuberが教える 新・共通テストの注意点【前編】

宇佐見天彗(うさみ・すばる)/1996年、香川県生まれ。東京大学理科二類に現役合格した後、2年次の進学選択により医学部に進学。医師国家試験に合格し、2020年3月に卒業。「地方と都会の教育格差を是正したい」という思いから、現在はさまざまなメディアで自身の経験や受験勉強に関する情報を発信している。自身のYouTubeチャンネル「PASSLABO」では、初回から毎年、会場で受験している大学入学共通テストの自己採点結果や総評も配信。PASSLABOのメンバーとの共著に『共通テスト直前に絶対に読むべき本-知っておくだけで得点UP!』(スタディカンパニー)がある。
西岡壱誠(にしおか・いっせい)/1996年、東京都生まれ。東京大学経済学部在学中。都内の私立一貫校を卒業後、偏差値35から東京大学を目指し、2浪を経て合格を果たす。入学後は漫画『ドラゴン桜2』(講談社)に情報提供を行う東大生チームのリーダーを務めたほか、2020年に設立した株式会社カルペ・ディエムの代表取締役として、出版、コンサルティングなどの教育関連事業に携わる。『東大式スマホ勉強術 いつでもどこでも効率的に学習する新時代の独学法』(文藝春秋)、『東大モチベーション 勉強のやる気がすぐ起きて→ずっと続く方法』(かんき出版)など著書多数。
(構成=木下昌子、撮影=加藤夏子)

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