■教育系YouTuber&専門家と予測する 2025年度大学入学共通テスト
国公立大だけでなく、私立大の入試にも広く利用されている大学入学共通テスト。2025年には新たな科目「情報I」の追加を含む再編を予定しています。共通テストを知り尽くす教育系YouTuber、宇佐見天彗(すばる)さんと西岡壱誠(いっせい)さんに、朝日新聞「Thinkキャンパス」の平岡妙子編集長が攻略のポイントを聞きました。(写真=左:西岡壱誠さん、右:宇佐見天彗さん)
共通テストは全受験生が受けた方がいい
――まずは基本的なことから教えてください。そもそも共通テストって、全受験生が受けるものなのでしょうか。
西岡壱誠(以下、西岡):現状、必須ではありません。でも、ぼくは受験生全員が受けた方がいいと思っています。
宇佐見天彗(以下、宇佐見):同感です。国公立大志望の人は受験が必須ですが、私立大でも共通テストの点数を合否判定に利用できる共通テスト利用方式があります。
西岡:私立大では、共通テスト利用方式と、大学独自の個別試験で合否判定を行う一般方式を併願すれば、2回受験できるわけなので、合格のチャンスは広がります。ただ、共通テスト利用方式は、共通テストの点数だけで合否を判定する単独型や、個別試験の結果もあわせて考慮する併用型など、方式が複雑です。志望校がどの方式を採用しているかは、事前に確認しましょう。
宇佐見:現役生は「大学入試の最初の試験が共通テスト」という人が大半ですから、本番ならではの緊張感を体験する、という点でも受験する意義はあると思います。
――私立大の一般選抜で、一般方式と共通テスト利用方式の両方の対策をするのは大変ではありませんか。
西岡:そうなんです。以前はセンター試験対策と私立大対策は重なる部分が多かったのですが、共通テストと一般選抜では、傾向がまったく違います。簡単に言えば、共通テストは短時間での情報処理能力を問うテストで、一般選抜は細かい知識を問うテスト。対策が異なるので、共通テスト利用方式と一般方式を併願する場合、受験生の得意不得意に合わせて、学習のバランスを取る必要があります。
宇佐見:ぼくは初回の2021年からいまでも毎年、共通テストを受験しているのですが、長い文章や資料を読んだ上で判断させたり、考えさせたりする問題が年々増えているのを感じます。例えば、世界史は、センター試験のときは30~40分あれば解けたのですが、共通テストは資料をしっかり読みこまないと解けない問題が多く、時間ギリギリまでかかってしまいます。
西岡:センター試験の世界史は「この年代でこの問題なら、答えはこれ」というパターンがあったから、問題文を全部読まなくても、正直、解けました。でも共通テストは、問題文をしっかり読まないと解けない上に、問題冊子のページ数もセンター試験の1.3倍と、とにかく長い!

分量が多く時間との闘い 手を止めずに走り続けること
――まさに時間との闘いですね。
宇佐見:英語のリスニング問題も、時間との闘いです。センター試験の時は、すべての問題文は2回読み上げられたのに、共通テストでは1回読みの問題があって焦りました。しかも問題と問題の間隔も少し短くなったような気が……? いや、問題文の1回読みで焦っていたから、短く感じただけかもしれません。自分の力で解く速さをコントロールできないという点では、リスニングが一番怖いです。
西岡:そして、まったく予想外の問題が出る。マークシート方式だから証明問題は出ないと思っていたら、ある時、数学の証明方法の名前を問う問題が出て驚きました(笑)。
――でも、どんなに焦っても、驚いても、時間がないからそこで立ち止まる余裕はないですね。
宇佐見:そうです。とにかく手を止めず、走り続けなければ、全問を解き切ることはできません。
西岡:センター試験ならば、選択肢を選んだ後に本当にその答えでいいのか、10秒程度考えたり迷ったりする時間があったのですが、今はその時間こそ一番の無駄になります。共通テストは、普段の練習や模試ではいい結果を出せるのに、本番では力を発揮できない人が多く、「共通テストには魔物がいる」なんて言われることもあります。
なぜこういうことが起こるかというと、模試ならば一度選んだ解答に迷うことがないのに、本番だと「これが間違っていたら、志望校に合格できないかもしれない」というプレッシャーから、手が止まってしまうから。自分の解答に自信が持てないので、怖くて先に進めなくなるんです。共通テストは、迷いが生じてもそれを振り切って先に進むことが重要です。

「情報Ⅰ」は点数が取りやすい科目になりそう
――大学入試センターのホームページでは、2025年共通テストの試作問題を見ることができますね。
西岡:試作問題自体は、現行の問題とほとんど変わらないように思いました。あえていうなら、読解力が求められる度合いが増したかな、という程度。本番はもう少し難しくなるかもしれません。
宇佐見:長文や資料を読んだ上で解く問題は、どの科目でも出題されていました。例えば、数I・Aで出題されるデータ分析の問題は、図表やグラフの分量が多く、読み解くのに時間がかかりました。国語の場合、現行は現代文2題に古文、漢文の計4題が出題されていますが、2025年からは現代文に資料読み取り型の問題が1題追加され、試験時間も80分から90分になります。試作問題を見る限り、資料読み取り型の問題自体はそれほど難しくありませんが、全体の分量が増えるため、時間内でしっかり読み取れるかというと、難しいところです。
――2025年からは、新たな科目として「情報I」が追加されます。
宇佐見:試作問題を実際に解いてみましたが、授業や教科書を勉強していれば十分対応できる内容なので、心配はいらないと思います。過去問がないので模試は必須、あとは学校や予備校でもらう予想問題で対策をしておけば、むしろ点数が取りやすい科目になるというのがぼくの予想です。センター試験に英語のリスニング問題が追加された時もそうでしたが、新しい科目や問題って、導入開始当初は簡単なことが多いんです。
西岡:試験は、相対的に周りよりいい点数を取れば「勝ち」。みんなの対策が遅れそうな科目だからこそ、情報の対策を頑張って得点源にする、みたいな発想もありですね。
>>【後編】思いもかけぬ難問に、心を折られるのが大前提。共通テストは「特殊なテスト」だと心得て

宇佐見天彗(うさみ・すばる)/1996年、香川県生まれ。東京大学理科二類に現役合格した後、2年次の進学選択により医学部に進学。医師国家試験に合格し、2020年3月に卒業。現在は教育系YouTuberとして、自身の経験や大学受験に関する情報などを発信している。大学入学共通テストは初回から会場で受験しており、試験後は自己採点結果や総評を自身のYouTubeチャンネル「PASSLABO」で生配信するのが恒例。著書に『東大現役合格→トップ成績で医学部に進学した僕の超戦略的勉強法』(KADOKAWA)など。PASSLABOのメンバーとの共著に『共通テスト直前に絶対に読むべき本-知っておくだけで得点UP!』(スタディカンパニー)がある。
西岡壱誠(にしおか・いっせい)/1996年、東京都生まれ。東京大学経済学部在学中。都内の私立一貫校を卒業後、偏差値35から東京大学を目指し、2浪を経て合格を果たす。入学後は漫画『ドラゴン桜2』(講談社)に情報提供を行う東大生チームのリーダーを務めたほか、2020年に設立した株式会社カルペ・ディエムの代表取締役として、出版、コンサルティングなどの教育関連事業に携わる。『東大式スマホ勉強術 いつでもどこでも効率的に学習する新時代の独学法』(文藝春秋)、『東大モチベーション 勉強のやる気がすぐ起きて→ずっと続く方法』(かんき出版)など著書多数。
(構成=木下昌子、撮影=加藤夏子)

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