■親のための学部・学科講座
社会科学、人文科学、情報科学など、複数の領域を融合した学びを実現できる「社会情報学部」。情報技術の発達とともに注目度が上がり、女子大でも社会情報系の学部を新設する大学が出てきています。(写真=武庫川女子大学提供)
生活環境学部からのバージョンアップ
この数年、社会情報系の学部を創設する大学が増えています。兵庫県立大学は2019年に社会情報科学部、十文字学園女子大学は20年に社会情報デザイン学部、23年には一橋大学がソーシャル・データサイエンス学部、武庫川女子大学が社会情報学部を設置しています。
武庫川女子大学は、生活環境学部(旧・家政学部)の中にあった情報メディア学科を改組し、新たに「社会情報学部」を設置しました。学部長の鯵坂恒夫教授はこう説明します。
「生活環境学部の学問領域は衣食住に関するいわゆる家政学で、これまではその一環として情報メディアを扱ってきました。しかし、技術革新が進み、情報がますます重要視される中で、生活領域のみならず社会全体を包含する内容にバージョンアップしていく必要があると考えました」
社会情報学部には、「情報メディア専攻」と「情報サイエンス専攻」があります。生活環境学部の学科を引き継ぐ情報メディア専攻は、社会科学を中心に文系の学びのウェートが高く、入試の受験科目も文系型です。
理系型も人気
一方、情報サイエンス専攻は理系色が強く、情報科学や工学に近い科目を中心に学びます。数学のみの受験もできるなど理系型の入試を行います。専攻は入試段階で選ぶ方式で、23年度の募集定員は情報メディア専攻が140人に対し、情報サイエンス専攻は工学系の女子の比率が一般的に少ないことを踏まえて40人となっています。
「それでも当初は情報サイエンス専攻に40人も集まるかなと心配しましたが、予想以上に志望者が多く、今後は情報サイエンス専攻の定員を増やしていくことも考えています」(鯵坂教授)
「数学や統計は面白い」と思えるような授業を
両専攻とも1年次にそれぞれの分野の基礎を習得します。2年次は演習を中心に実践的に学び、3年次からは専門性を深める科目の履修に加え、少人数制のゼミでプロジェクト型学習などを行い、4年次には集大成として卒業研究に取り組みます。企業と連携して社会調査をしたり、短期間で共同プロジェクトをやり遂げる「ハッカソン(hackとmarathonの合成語)」に挑戦したりするなど、体験型の学びを多く取り入れていることが大きな特長です。
また、両専攻に共通する素養として特に重視しているのが、データサイエンスの基礎となる数値を読み解く力です。「数学や統計は、専攻にかかわらずしっかり身につけてもらいたいと考えています」と鯵坂教授は言います。
「高校で文系クラスだった人の中には、数学を毛嫌いしている人が少なくありません。実は、中学・高校の数学教育は、なぜそうなるのかといった概念を教えることなく、計算ばかりをやらせてしまいがちです。テクニックを覚え込ませるような教育で、数学を面白いと感じることができないんですね。たとえば、統計でよく出てくる『Σ』は全部を足すことを表している記号ですが、Σを見ただけで『もう嫌だ。私にはできない』と拒否反応を起こしてしまう。
もっと単純に直感でわかるような説明をしてあげれば、数学を嫌いになることはありません。私たちは、数学を面白いと感じられるような授業を心がけています」(鯵坂教授)
データの専門領域で活躍できる人材を育てたい
卒業後の進路については、こう話します。
「これからはデータの時代ですから、企業にとってデータを扱える人材は、のどから手が出るほど欲しい存在になっていきます。前身の情報メディア学科では、IT系企業に就職してシステム開発の仕事に就く人が多かったのですが、これからはデータアナリストやデータサイエンティストといった専門職の領域で活躍する人も育てていきたいと考えています」(同)
大学側はどのような学生に社会情報学部で学んでほしいと考えているのでしょうか。
「データで仕事を進めたいと思ってくれるような人に来てほしい。具体的に言えば統計の力をつけたいとか、AIツールを使いこなせるようになりたいとか、そんな学生が入ってきてくれればうれしいですね」(同)
とはいえ、女性には情報分野への関心が薄い人も多いのではないでしょうか。
「はなから情報や技術は嫌いだとか、自分には向かないと思い込まないでほしい。実はそれほど難しくないし、やってみたらとても面白いかもしれません。情報に少しでも興味があるなら、とにかくやってみようよと勧めたいです。飛び込んできてくれれば、しっかり育てていきます。情報のようなこれからますます重要になる分野でこそ、もっと女性に活躍してもらいたいと思っています」(同)
(文=熊谷わこ)
記事のご感想
記事を気に入った方は
「いいね!」をお願いします
今後の記事の品質アップのため、人気のテーマを集計しています。
関連記事
注目コンテンツ
-
都市と環境を見つめる6つの視点、未来につながる学び――東京都立大学都市環境学部
自然環境、インフラ、防災、建築、観光、政策など、多様な領域を横断しながら「都市」を学ぶ――。東京都立大学都市環境学部では、世界有数の大都市・東京を実践フィールドに、未来の都市を創る実践的教育を展開。学
2026/09/07
PR
-
「自由を生き抜く実践知」を掲げる法政大学では、「DEI」を教育の中核に位置付ける
2026年、「法政大学憲章」の制定、「法政大学ダイバーシティ宣言」から10年を迎えた法政大学は、DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン=多様性、公平性、包摂性)を推進し、「実践知」という
2026/09/18
PR
-
AIなどの先端技術を活用しながら生物の構造や機能を応用する――東京工科大学バイオミメティクスセンターの挑戦
生物の優れた構造や機能、しくみを解明し、技術開発に生かす「バイオミメティクス(生物模倣技術)」が注目を集めている。バイオミメティクスはクリーンで環境に優しく、エネルギー効率に優れていることから、持続可
2026/09/30
PR
学部・学科・研究室
-
増え続ける薬学部、「薬剤師」が余る…はホント? 病院勤務・地方は…
■親のための学部・学科講座 大学の6年制課程の薬学部は薬剤師国家試験の受験資格が得られるため、根強い人気があります。しかし、昨今は「将来、薬剤師が過剰になる」「薬学部の新設や定員増は抑制される」といっ
2023/11/25
キャンパスライフ
-
「合格への設計図があったんだ」 離島出身の東大生が、初めての予備校で驚いたこと【離島・遠隔地出身 学生座談会】
■特集:学生座談会 難関大学に何人も合格者を出している首都圏の進学校と違い、離島や遠隔地から高みを目指すことは簡単なことではありません。鹿児島県・与論島、東京都・小笠原諸島、鳥取県から東京の難関大学に
2026/06/24
-
早稲田大学
早稲田大学は2022年10月21日に創立140年を迎え、同年は大隈重信没後100年でした。 1882年の創立から今日に至るまで、創立者大隈重信の理念(三大教旨)を基にその歴史を刻んできました。この動画...
2024/03/19
-
京都産業大学
京都産業大学から歩いて15分の場所に設置されている本山(もとやま)寮。 2024年に誕生した本山寮では、全国から集まった寮生が共同生活を送っています。 最大の特長は寮生一人ひとりのプライバシーと共同生...
2025/08/21
-
きのことお喋りするヤバい先生に見たことないきのこを食わされた…【東京農業大学 森林総合科学科】
東京農業大学 のHPはこちら! https://www.nodai.ac.jp/ 受験者に向けたイベント情報はこちら! https://brand.nodai.ac.jp/...
2023/05/19
-
おすすめ動画
大学発信の動画を紹介します。
大学一覧
NEWS
教育最新ニュース
- 芝浦工大が一部コースで女子枠募集停止へ 入学者増で「目的を達成」 2026年 10月 10日
- 同志社国際高校への補助金をカット 辺野古沖転覆事故受け、京都府 2026年 10月 09日
- サイバー攻撃を受けた大阪公立大が授業再開 臨時ネットワークを構築 2026年 10月 09日
- 若者の抗議が広がるフランス 高校生デモが映す日本の教育との違い 2026年 10月 09日
- AEW育成の現場 「専門職として判断に責任を持つ力を育てる」 2026年 10月 06日
Powered by 朝日新聞