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今春、韓国発の大ヒットウェブマンガ『女神降臨』を原作とする映画が2部作で連続公開されます。脚本を手掛ける鈴木すみれさんは、中央大学に通う学生です。インタビューの後編では、脚本家になるまでの歩みや、今後の展望を語ってもらいました。(聞き手=朝日新聞「Thinkキャンパス」平岡妙子編集長)
脚本に時間を使いたくて、大学付属校へ
――脚本というのは、小説ともまた形式が違うものだと思いますが、最初はどんなふうに書き方を学んだのですか。
正直、初めて書いたころのことはあまり覚えていないんです。でも、坂元裕二さんの脚本などを実際に読みながら、「セリフはこういうふうに書くんだ」「話者の名前を先に書くんだな」と学びながら、まねていったことは記憶にあります。小説と脚本の大きな違いは、脚本は自分の書いた言葉を実際に話して演じる人がいるというプロセスがある点です。そこがとても面白いなと思いました。

――14歳で第30回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞しました。その時はどんな気持ちでしたか。
この賞は、憧れの脚本家である坂元裕二さんが第1回の受賞者だったこともあり、とてもうれしかったです。しかもサプライズで坂元さんご本人が授賞式に来てくださり、うれしすぎて、その時のこともあまり覚えていません(笑)。
――小学生の時に書くことに目覚めたとのことですが、どんな子どもでしたか。
当時はいろいろな習い事をしていて、ピアノやバイオリン、フィギュアスケートにチアリーディング、男の子に交じってサッカーも習っていました。楽器は今も気分転換に楽しんでいます。今思えば、小学生のころが人生で一番アクティブでした。
――中高生時代は、どのように過ごしましたか。
学校から帰るとすぐに、自宅で小説や脚本を書いていました。自称「帰宅部のエース」だったんです(笑)。私は、まず好きなものが生活の中心に来る性格で、その上で、ほかのことと好きなことをどう両立させるかを考えます。勉強とも両立させたいけれど、自分の自由な時間は、大学受験よりも脚本を書くことに充てたい。そう思ったので、高校受験の時点で、大学付属の高校に行かせてほしいと親にお願いして、大学付属校に入学しました。
うちは両親ともに映画や本が好きで、私にも昔からたくさんの本を読ませてくれました。小説家を志していたことにも、やがて脚本に興味を持ったことにも、その影響はあると思います。何かをしろとか、するなとか言われたこともなく、いつも私のしたいことを見守ってくれる。それでいて、助けてほしい時には支えてくれる頼もしい家族です。
郊外のキャンパスもおすすめ!
――付属高校から中央大学文学部に進学していますが、大学で何をするかはどの段階で決めたのですか。
ずっと小説や脚本が好きだったので、文学を学びたいという気持ちに迷いはありませんでした。興味がある分野を専門的に勉強できるのはすごく楽しいです。例えば、先日は近現代文学の授業で、村上春樹さんの作品をグループで考察して、その内容を発表する機会がありました。一人の作家についてもさまざまな見方があることが実感できて、興味深かったですね。
――授業以外のキャンパスライフはいかがですか。
高校も同じ系列だったので校風なのかなと思いますが、大学ものびのびしていてとても過ごしやすいです。小中学校では監視というか管理というか、どうしても大人のコントロールが強い印象がありましたが、高校に入ってからはそれを感じなくなりました。多摩キャンパスは都心からやや離れていますが、その分、広くて自然も豊かで、自由な雰囲気があります。留学生も多く、いろんな人がいるのも楽しいです。個人的には、多摩キャンパスはすごくいいところだと思います。
――大学生としての実体験が脚本に生きている感覚はありますか。
実体験をシナリオに書くことはほぼありませんが、それでも自分の考え方は話に入り込んでいるだろうとは思います。「脚本に生かそう」という目的で周囲を観察するようなことは失礼だと思うのでしませんが、軽妙な会話劇を目指しているので、友達の会話が面白すぎたらメモを取ることはあります。
進路選びは身構えなくていい
――鈴木さんが目指す脚本家像とは、どんなものですか。
以前、賞に応募する自分の作品を読み返した時、「全然面白くない」と思って直前に書き直したことがありました。その理由を言語化するのは難しいのですが、違和感があったというか、自分の身勝手な視点が入りすぎていると感じたというか。とにかく、その自分の作品は「好きじゃない」と感じたんです。だからやっぱり、これからも自分で「好き」だと思える脚本を書けたらうれしいです。
まだまだ書き始めたばかりだと思っているので、とにかくもっとうまくなりたいと考えています。媒体や企画の枠組みを問わずに書ける脚本家になりたいし、社会問題をきちんと取材して脚本にしていきたいです。そのために、まずはいろんな映画を見たり本を読んだり、必死でインプットを続けているところです。
――卒業後の進路はどう考えていますか。
今まさに迷っているところです。どんな経験も役に立つと思うので、企業で働くことにも興味がありますが、脚本も就職も片手間でできることではないと思います。今はできるだけ、長く作品づくりに関われる環境にいたいと考えています。
――これから大学受験を迎える高校生に、メッセージをお願いします。
進路をどうするか考える時に、「この決断で人生が変わる」なんて思う必要はないと思います。塾などでも「受験にすべてがかかっている」とあおったりプレッシャーをかけたりするので、みんなドキドキしてしまいますよね。でも振り返ってみれば、私はあまり大きな決断をすることなく、ここまでやってきたと思うんです。私の場合は「このドラマ、面白い」とか、「このお話いいな」といったことでしたが、こうした日常の中の「好き」が重なった先に、きっと何かがあるはずです。だからあまり身構えず、わりとぬるっと決めてもいいんじゃないかなと思います。
>>【前編】脚本家は大学生 Kōki,初のラブコメ映画「女神降臨」で「夢がかなったエンドロールに感動」

<プロフィル>
鈴木すみれ/2004年生まれ。東京都出身。18年に第30回フジテレビヤングシナリオ大賞を最年少で受賞。23年、第69回角川短歌賞佳作を受賞。同年に中央大学文学部に入学、国文学を専攻している。
(文=鈴木絢子、写真=加藤夏子)

【写真】Kōki,初のラブコメで話題の映画「女神降臨」 脚本を手掛けた現役大学生が語る、進路の選び方
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