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LINEマンガに掲載され、46カ月連続で読者数ランキング1位を獲得した韓国発の大ヒットウェブマンガ『女神降臨』。モデル・俳優のKōki,さんが主演し、前編「女神降臨 Before 高校デビュー編」が2025年3月20日から公開、そして後編「女神降臨 After プロポーズ編」が5月1日に公開されます。本作の脚本を書いた鈴木すみれさんは、中央大学に通う学生です。初めて取り組んだ映画の脚本について、語ってもらいました。(聞き手=朝日新聞「Thinkキャンパス」平岡妙子編集長)
Kōki,さんは役柄そのもの
――14歳でシナリオ大賞を受賞していますが、原作のある脚本を担当するのは、今回の「女神降臨」が初めてなのですね。オファーがあった時はどう思いましたか。
映画の脚本自体が初めてで、お話をいただいた当初は「自分にはできないだろう」と思っていましたが、原作の漫画を読んでみたらとても面白かったんです。なぜ人気があるのかもよくわかったし、自分としても挑戦すべき理由が感じられたので、やってみることにしました。とはいえ、打ち合わせ中も半信半疑だったし、今もまだ実感はありません。でも映画が出来上がってエンドロールに自分の名前が流れた時には、「夢に見ていたことだ」と感動しました。小さい時から憧れていたことだったので、とてもうれしかったです。
――この作品でどんなことを伝えたいと思いましたか。
Kōki,さん演じる主人公の谷川麗奈は、なかなか大変な人生を歩んでいます。でも彼女は悪い方向に考えず、いつも前向きに努力することで、いい意味で周りを巻き込んで変えていく力があります。そこが作品の人気の理由でもあると感じたので、特にそうした部分を表現したいと思いました。
苦労したのは、200話以上ある長い原作を削りつつ、面白さを残して前・後編の映画にまとめる作業です。麗奈の魅力はもちろん、登場する男子高校生の俊と悠との関わりや胸キュンのエピソード、麗奈が受けるいじめのことなど、盛り込みたいことがたくさんありました。大変な作業でしたが、誰もが共感できるストーリーに仕上がったと思います。
――本作はKōki,さんの初のラブコメ映画ということでも、話題を呼んでいます。
キャスティングを聞いた時点で「ぴったり!」と思いました。ただ、Kōki,さんはミステリアスというか、演技に関する情報が少なかったので、どう演じてもらえるかわからず、ドキドキでした。でもスクリーンで見たKōki,さんは、麗奈そのもの。まさに「降臨してる!」と思いました(笑)。メイクして美しく変身した後の麗奈はもちろん、すっぴん時のしぐさやしゃべり方なども、ご自身で研究してくれたそうです。

社会問題も無視せず描きたい
――脚本を執筆する際に追加した、映画オリジナルの設定はありますか。
麗奈が通うレンタルショップ「デビルパイ」は私が考えた要素です。作中では麗奈のすっぴんとメイク後の対比が大きく扱われますが、メイクの有無に限らず、場所や相手によって違う顔を持っているのは誰しも同じだと思います。その「いろんな顔」を表現するために、学校とも家とも違う場所を描きたかったんです。デビルパイの店長は佐藤二朗さんが演じてくれましたが、これがまた魅力的すぎて(笑)。麗奈にとって、ひと息つける場所であり、映画を見る人にとってもリラックスできるコミカルなシーンになっています。
――俊がヤングケアラーであるという設定も、鈴木さんのオリジナルですか。
これも原作にはありませんでした。母親が病気であるという設定を追加して、もともと描かれていた親との葛藤を膨らませました。社会問題を無視せず描きたいという思いがあり、プロデューサーに提案して受け入れてもらいました。例えば、貧困や宗教などのシビアな問題も、人を描く上では必然的にストーリーに入ってくるものだと思うんです。主題にせずとも、それを隠さずきちんと脚本の要素として書きたいと思いました。映画やドラマを見た人に、自分の身の回りにもこうした課題がきっとあると考えるきっかけにしてもらえたらと思っています。
意識した「今っぽい言い回し」
――映画で登場人物たちの言葉遣いに、大学生である鈴木さんらしさを感じました。
それはうれしいです。今っぽい言い回しって、ほんのちょっとしたズレが大きな違和感になってしまうものだと思います。見る人がそこで「ん?」と引っかかってしまったらもったいないし、せっかく私自身が大学生なので、その感覚はしっかり生かそうと、意識して書きました。ドラマでも映画でも、脚本家の好みが出るのは会話劇の部分だと思います。私は耳に入ってきた時に心地よい、テンポのいい会話が好きです。キャッチボールというよりラリーを思わせるような、リアルの会話よりも少しスピードの速い、ユーモラスなやり取りです。本作でも、ぜひそれを楽しんでもらえたらうれしいです。
――お手本にしたり、憧れたりしている脚本家はいますか。
ずっと憧れているのは坂元裕二さんです。小学生の時にドラマ「カルテット」を見て、俳優の魅力を引き出すハイセンスでハイテンポな会話劇に衝撃を受けました。スピード感のある会話を書きたいと思うのも、坂元さんの作品の影響が強くあります。
私はもともとは小説家になりたくて、小学校の自由研究でも、毎年、自作の小説を書いて提出していたぐらいでした。でも坂元さんを好きになって、脚本家という仕事があることを知り、そこからは「絶対、脚本家になりたい」と思うようになりました。単純なので(笑)、何をするにも「好き」という気持ちが中心になるんです。子どものころはYouTubeを見ることのほうが多く、テレビっ子ではなかったので、あまり数多くのドラマを見て育ったわけではありません。だから、まだまだ脚本は勉強中です。それでも今の自分があるのは、「好き」という気持ちの積み重ねによるものだと思います。
>>【後編】Kōki,初のラブコメで話題の映画「女神降臨」 脚本を手掛けた現役大学生が語る、進路の選び方

<プロフィル>
鈴木すみれ/2004年生まれ。東京都出身。18年に第30回フジテレビヤングシナリオ大賞を最年少で受賞。23年、第69回角川短歌賞佳作を受賞。同年に中央大学文学部に入学、国文学を専攻している。
(文=鈴木絢子、写真=加藤夏子)

【写真】脚本家は大学生 Kōki,初のラブコメ映画「女神降臨」で「夢がかなったエンドロールに感動」
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