■親のための学部・学科講座
「ビジネス学部」は経済学部や経営学部とはやや異なる、比較的新しい学部です。めまぐるしく変わる社会に対応して、全国の大学に続々と誕生しています。時代に合わせた学びの中身を探りました。(グローバルビジネス専修の講義=愛知淑徳大学提供)
アクティブラーニングで考える力と行動力を
ビジネス学部は、経営学、経済学、会計学のほか、マーケティングや商学などの分野を横断的、複合的に学ぶ学部です。一つの分野を学術的に究めることも可能ですが、どちらかといえば、幅広い視野を持つ実務家の育成に軸足を置いた学部と言えるでしょう。愛知淑徳大学がコミュニケーション学部を開設し、ビジネスコミュニケーション学科を置いたのは2000年のこと。それを前身として、ビジネス学部を04年に設置しました。ものづくりが盛んな愛知県で、産学連携も取り入れながら、社会で即戦力になれる人材を育成しています。
大塚英揮教授は、学部の成り立ちを次のように説明します。
「ビジネス分野の学部や学科が新設され始めたのは、インターネットの普及で情報技術が注目され始めた頃でした。当時は金融業界も上り調子で、本学も当初はそこにウェートを置いた教育を行っていました。しかし、時代が移り変わり、必要なのは自ら考えて分析し、行動できる力だと感じるようになりました。現在はアクティブラーニングに注力しつつ、より実践的なカリキュラムを導入しています」
多様なインターンシップ先で即戦力を磨く
同学部の入学定員は230人。大学によっては経済学部や商学部などの入学定員が1000人を超えるところもありますが、石坂綾子学部長は「少人数だからこそ、できる授業がある」と自信をのぞかせます。
「一部の学生だけが熱心に取り組むのではなく、本学部ではすべての学生がアクティブラーニングを実践します。例えば、ビジネスアカウンティング専修では、地域にある企業を分析し、企業の方の前で分析結果をプレゼンテーションします。数字を読むことはもちろん、企業の課題を発見し、提案するという経験を積みます」
グローバルビジネス専修では、3年次にすべての学生が国内外のインターンシップに参加します。アメリカ、ベトナム、オーストラリア、東京などで、IT企業や商社、製造業やコンサルティング、税務の事務所など、多様なインターン先から学生が選択します。コロナ禍ではオンラインで実施するなど苦慮しましたが、23年2月から現地への派遣を再開しました。海外でのインターンシップの経験からは、得られることもたくさんありそうです。
ビジネス系学部でアクティブラーニングに力を入れている大学は、他にもあります。例えば、宮城学院女子大学現代ビジネス学部の石原慎士教授の研究室では、東日本大震災で被災した石巻市の企業とともに商品開発をする「石巻おでんプロジェクト」に取り組みました。
また、兵庫大学現代ビジネス学部では、高齢化で管理しづらくなっているため池の草刈りを中心とした「ため池ビジネス」を行いました。企業や団体と協働し、現実の課題に取り組むことで、ビジネスに必要なスキルを磨いています。
現代社会を生き抜く力
前出の愛知淑徳大学の大塚教授はこう話します。
「私は大学に入るときに明確な夢がなく、4年後に社会に出て働く自分の姿をイメージすることもできませんでした。だから高校生の皆さんの不安な気持ちはよくわかります。でも本学部で学ぶ内容は、業界問わずどんな場所でも絶対に必要とされることです。今は将来が想像できなくても、きっと胸を張って卒業することができるし、自信を持って世の中に出られると思います。
また実社会や企業の問題は、100かゼロか、白か黒かの発想だけでは解決できないものです。こうした課題に対峙(たいじ)するためには、協調性とリーダーシップが必要です。ビジネス学部での学びを通じて、こうした力を身につけてほしいです」
ビジネス学部で培う力は、現代社会を生き抜く力そのものと言えるかもしれません。将来やりたいことがまだわからない人にとって、社会とつながる幅広い学びから、自分の興味を見つけられる可能性があります。
(文=鈴木絢子)
日銀総裁も学部長を務めた 「ビジネス学部」ってなに?(前編)はこちら
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