東京大学の女性学生がキャンパスライフの魅力を発信、 安全・安心な「東京一人暮らし」を全力支援―― 男女共同参画室の取り組みとは

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2024/01/15

東京大学で学ぶ学生の男女比は、およそ8対2。当然ながらこれは男女の学力の差ではなく、東大を受験する女性が少ないことを意味している。女子中高生とその保護者にとって東大受験のハードルが高いのは、東大の情報が十分に行き渡っていないことも原因の一つだ。男女共同参画室の進学促進部会長を務める後藤由季子教授に、情報発信をはじめとするさまざまな取り組みについて聞いた(写真は、東京大学大学院薬学系研究科分子生物学教授・後藤由季子氏)。

◆変な人ばかり!? イメージ先行の東京大学

『Perspectives』という冊子がある。全国の女子中高生向けに、東大で学ぶ女性学生の姿を紹介する情報誌で、デジタル版も公開されている。2023年度版の巻頭特集は現役女性東大生によるトークセッションで、日々のキャンパスライフや、東大の教育プログラムの魅力について、率直に語り合っている。他にも受験生時代にどのくらい勉強していたか、三鷹にある学生宿舎での生活、東大にまつわる噂の検証など興味深い内容が綴られ、女性学生目線の東大を知ることができる一冊となっている。この『Perspectives』を発行しているのが、男女共同参画室だ。

東大のキャンパスライフをいきいきと伝える『Perspectives』
https://www.u-tokyo.ac.jp/kyodo-sankaku/ja/activities/perspectives.html

男女共同参画室は、東京大学総長直轄の組織として、2006年に設置された。男女格差指数などの国際的な指標からも明らかなように、日本は男女共同参画という分野において世界から大きく遅れを取っている。日本を代表する高等教育機関として、また世界をリードする研究機関として、東京大学は学内の変革に着手した。女性学生の割合や活躍の場を増やすと同時に、ワークライフバランスやキャリア形成についても共に考え、包括的に支援していく。後藤由季子教授が部会長を務める進学促進部会が目指すのは、より多くの女子中高生が、進学先として東大に目を向けてくれることだ。進学は、いわば男女共同参画の最初の入り口であり、女性研究者やリーダーの裾野を広げる重要な位置づけとなる。後藤教授に、女子中高生が東大受験を選択から外してしまう現状の理由を尋ねた。

「とくに地方在住の中高生に顕著なのですが、東大のイメージに偏りがあるのが阻害要因の一つです。例えば、『東大生は天才で変人の集団、雲の上の存在で普通じゃない』みたいな。実際は、そんな学生はごく一部です。ほとんどの学生は、いたって常識的な人たちですよ。その一方、マイナスイメージは持っていないけれど、そもそも身近ではないので視野に入らないというケースもあります。こうした現状に鑑みて『Perspectives』では、親しみやすい口調で東大女性学生の実像を知ってもらい、先入観を払拭することに重きをおいています」

『Perspectives』を読めば等身大の東大がわかる

◆ロールモデルを見て話すことで、0が1になる

本人の自信の無さもまた、受験希望者が少ない要因だ。東大に興味は持っても、合格すると思えずあきらめてしまう女子中高生は一定数いる。『Perspectives』を読んで興味を持ったとしても、実際に受験を決意するにはもう一段ステップが必要だ。このとき背中を押すのが、ロールモデルの存在だという。

「母校に東大のOB・OGがいるというのは、0と1くらい大きな違いです。一気に視野が広がり、自分の延長線上に東大生のイメージができるのです。ですから女性学生には『Perspectives』への寄稿だけでなく、中高生に直接話をしてもらう機会を作っています」

代表的なのは、全国向けに実施しているオンライン説明会だ。保護者も参加できるもので、いろいろな高校出身の女性学生が自身の体験を話し、会には総長も出席する。それとは別に各部局ごとに女子中高生を対象にしたオープンキャンパスも開いている。こちらは実際の研究室を見学できるなど、より入学後の姿をイメージしやすいイベントで、とくに理系の部局が力を入れているところだ。

2019年に東大柏キャンパスで開かれた女子中高生向け理系進路選択支援事業「未来をのぞこう!」

「そして、男女共同参画室が主催するのが、母校訪問です。東大在学中の女性学生が出身校に行って後輩たちと東大について語るのですが、これはもう毎年、大変な威力があります。昨年は40人ほどが母校を訪ねました」

母校との交渉は学生自身で行う。8人程度のグループによる座談会もあれば、200人の高校生の前で行う講演もあり、規模やスタイルはまちまちだ。共通するのは、高校生にとっては卒業した先輩から直接話を聞ける機会であること。その説得力は圧倒的で、先輩たちの姿から得た勇気が人生の決断を後押しする。

◆安心・安全な学生生活のための支援が充実

情報を開示すること、ロールモデルとつなげること。この2つが、受験生本人に東大を身近に感じてもらうために後藤教授たちが継続している施策の柱だ。しかしもう一つ、本人たちの資質とは直接的に関係ないところに高いハードルが存在する。それは、保護者の事情だ。東大に関する偏ったイメージは、実は親世代のほうが根強い。「東大なんかに行ったら女の子は結婚できない」「物理など理系全般なんか学んで就職できるのか」--。令和の時代になってもこの2つを口にする保護者は存在する。

「卒業生はさまざまな人生を歩んでいますが、普通に結婚して子育てをしながら研究を続けたり働いたりしている人は多いです。東大出身者同士の夫婦もいますが、他大学生と結婚する人も多いですよ。それから就職ですが、とくに理系の卒業生は完全な売り手市場となっています」(男女共同参画室の中野円佳特任助教)

教員、医師、薬剤師といった資格を目指すもよし、そうでなくとも「東大卒」の学歴は女性の将来の選択肢を広げこそすれ、狭めることはない。

時代錯誤の偏見だけでなく、経済的な理由もある。2019年のデータをもとにした調査で、東大に進む環境として、男性学生より女性学生の家庭のほうが、より裕福な層からくる比率が高いことを指摘した研究があるという。

「子どもの教育費が潤沢でない家庭では、娘より息子にお金をかける傾向があると指摘されています。また、一人暮らしの安全面に配慮すると、女性のほうが家賃や生活費のコストが高くなるのは確かです。こうした理由から、ある程度家計の余裕がないと女性が東大まで辿り着けないことになるのです」(男女共同参画室の中野円佳特任助教)

志の高い優秀な女性たちが、経済的な理由で東大進学をあきらめるようなことがあってはいけない。東大では実家から通学に90分以上かかる女性学生を対象に、月3万円×2年間の住まい支援を行っている。また、三鷹国際学生宿舎の家賃は月に1万円強、女性だけのフロアもあるので快適だ。民間の賃貸と違い、住人が東大生ばかりなので、一人暮らしを始めてすぐにコミュニティができると、保護者からも好評だという。2019年には目白台インターナショナル・ビレッジも開寮した。

2017年に行われた女子中高生のための東京大学説明会

「東京大学女子ネットワーク・コミュニティの『さつき会』は、女性用奨学金として入学金30万円および月5万円×4年間を援助します。この奨学金は受験前から申請できるので、安心して受験することができるだけでなく、『さつき会』のネットワークを活かしたさまざまなアドバイスをもらえるメリットがあります。この他にも給付型の奨学金はいろいろとあるので、ぜひ申請して最大限に活用していただきたいと思います」

一人で上京しても安心・安全な環境でキャンパスライフに集中できるだけの支援体制が整っていることを、ぜひ知ってほしい。

◆多様性を実現する男女共同参画はここから始まる

日本のリーダーを育成する東大に女性学生が増えることには、大きな意味がある。それは女性だけでなく、男性にとっても有意義だ。東大に進学する男性学生の中で、男子校出身者が占める割合は高い。「男女共同参画」の機会がないままに大学生になり、圧倒的に男性の多い大学で学び、社会に出てこの国の舵取りを担うという事態になれば、男女格差が埋まらないのも当然だ。大学で共に学ぶ経験は男女ともに視野を広げる一助となり、現状を打開する一歩にもなる。予測困難な時代にあって、多様性は重要な戦略だ。男女に限らず、国籍や出身地の違いを包括し、Diversity & Inclusion※の礎を築くことが教育機関には期待されている。
※多様性と包摂性。多様な人材を受け入れて活かすことを意味する

後藤教授は、薬学部で初めての女性教授であり、今もただ一人の同学部女性教授だ。

「女性教授の少なさは課題ですが、少なくとも私が一人いるだけで、薬学部の女性学生の居心地は良くなると信じています。『女性が教員や先輩にいるなら私も学ぼう』と思えるのです。そして彼女たちをロールモデルとした後輩たちが続いていく。このように、東大において女性学生一人のインパクトはとても大きいものです」

後藤教授は明治6年(1873)の薬学部設置以来、唯一の女性教授だ

後藤教授自身も東大で学び、それによって「人生が変わった」と言う。キャンパスには、あらゆる方向性で面白い人々が集っていた。たくさんの魅力的な友人を得た。

「また、東大独自のカリキュラムも私の人生に大きな影響を与えています。東大では最初の2年間をリベラルアーツに充てていますが、理系の私が、日本最高峰の教授陣から文系の講義をたっぷり受けていたのです。豊かな知識を与えられた上で自分のキャリアを決められたのは、本当に幸せなことでした。女性として生きて、東大に来なければ得られなかっただろうと思える刺激的な経験がたくさんあります」

周囲の人々の魅力と学びの深さ。飛び込んでみれば人生の選択肢が一気に広がる。東大は、女性学生とその保護者が安心して入学を決められるよう、これからもさまざまな支援を行い、情報を発信していく。全国の女子中高生は安心して、東大の大きな懐に飛び込んでほしい。

<詳しくはこちらへ>
中高生のみなさんへ
https://www.u-tokyo.ac.jp/kyodo-sankaku/ja/activities/forstudent.html

学生支援では
https://www.u-tokyo.ac.jp/kyodo-sankaku/ja/activities/utstudent_support.html

<スタッフクレジット>
(取材・文/武田洋子 撮影/篠田英美 制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ)

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