新設される商学科の学び「現場」「実践」を体現する「美瑛プロジェクト」――龍谷大学経営学部・眞鍋ゼミの先進的試み
Sponsored by 龍谷大学
2024/10/31
2025年4月、龍谷大学経営学部は商学科を新設し、経営学科との2学科制となる。スタートアップ志向型人材の育成を目指す商学科は「現場」と「実践」を重視し、学びのフィールドは全国に及ぶ。眞鍋邦大准教授のゼミ活動の一つ、北海道・美瑛町の人々と地域活性化に取り組む「美瑛プロジェクト」を例に、学びの実際を見てみよう(写真は美瑛町で農業支援活動を行うゼミ生たち。提供:龍谷大学)。
◆実践を通して、学生のうちにリアルな社会体験をしてほしい
東京大学の野球部副将を務め、リーマン・ブラザーズ証券に入社。世界を揺るがす経営破綻の渦中に巻き込まれた後、スポーツビジネスを学ぶため渡米。帰国後、東日本大震災を契機に香川・小豆島に移住し、地域おこしの会社を起業。現在は「食・農・ローカルビジネス」をテーマに、実務と研究に打ち込んでいる――そんな激動の半生を送ってきた眞鍋邦大准教授のゼミは、座学がほとんどない。「事業共創」をテーマに、企業や自治体、NPOなどと連携し、プロジェクトを進めながら、実践の中で学びを得ていく。
「社会や実務には教科書に載っていないことがたくさんあります。だから実践を通して、学生のうちにリアルな社会体験をしてほしい。大学外の人と関わることで大変なことも多いですが、だからこそ成長度合いが大きく違ってきます」(眞鍋邦大准教授、以下同)
ゼミは眞鍋准教授が龍谷大学に着任した2022年に発足した。1学年約25人が所属し、5~6人のグループでそれぞれのプロジェクトを進めている。東北の企業と連携して害獣駆除によるジビエを関西に広める「東北獣害×ジビエ班」、地元サッカーチームとの連携で地域スポーツを盛り上げる「地域×スポーツ班」、京都の学生同士の交流を促す「ゼミフェスタ班」、まだ着られるのに捨てられる衣服を減らす活動を行う「ファッションロス班」など、内容もエリアも幅広い。
「メンバー構成は重要なので相性も考慮しますが、基本的には本人のやりたいこと、興味のあることをやってもらっています。例えば徳島県の過疎の町で実施している『海陽町地域活性化』プロジェクトなどは、学生が希望したテーマをそのまま採用しています。母方の実家があり、幼少から親しんだ町の活性化に取り組みたいという学生の想いを尊重しました」
同じように、学生の熱い想いから始動したのが「美瑛プロジェクト」である。
◆「美瑛町に恩返しをしたい!」。現地で交流を深め、京都で魅力をPR
北海道のほぼ中央に位置し、丘陵が連なる風景から「丘のまち美瑛」とも呼ばれる美瑛町。小麦やじゃがいも、ビート、とうもろこしなど豊富な農産物を育む「パッチワークの丘」や、幻想的な青い池、十勝岳を模した三角屋根の街並みなど観光スポットは多いが、多くの地方都市と同様、人口減少という課題を抱えている。
「美瑛プロジェクト」は、この町の地域活性化を目指している。美瑛町の関係人口※創出事業「美瑛コ・ワーケーションビレッジ」に、ゼミ生の佐々木鴻さん(現在3年生)が1年生の冬と2年生の夏に参加、「お世話になった町にゼミの活動を通して恩返しがしたい」という想いから、2023年秋にスタートした。
※関係人口/移住者(定住人口)や観光客(交流人口)ではなく、兼業や副業、イベント運営など、継続的に多様なかたちで地域に関わる人々のこと。地域づくりの担い手として期待される
「美瑛コ・ワーケーションビレッジ」は、町の資源めぐりやワークショップなどに参加し、町民と交流する3泊4日のプログラム。佐々木さんが参加することになったのは、眞鍋准教授に「長期休暇の過ごし方」について相談したことがきっかけだった。
「そのときは佐々木さんに、『大学生活は社会に出るための勇気を養う準備期間だから、行ったことのない場所に行き、出会ったことのない人と出会い、交わったことのない世代と交わると良い』とアドバイスしました。大学生は普段はみんな同じような生活を送っていますから、長期休暇をどう過すかがきわめて重要になります。その期間に経験したことが『個』をつくり、他にない誰かになるチャンスだと思うのです」
だが当時はコロナ禍もあって、多くの人と交流する機会はほとんどなかった。そこで眞鍋准教授は自身の豊富なネットワークを活用し、学生の受け入れを呼びかけたところ、全国から30以上も賛同の声が寄せられた。
「そのころ、佐々木さんと同じような相談を持ち掛けてきた学生もいたので、彼らと受け入れ先のマッチングを行いました。その一つが、美瑛町でした。佐々木さんは初めての一人旅、しかも一人での参加だったので大変だったと思いますが、美瑛町の人びとと交流し、その温かさに触れ、予想や期待を超える経験を得ることができたようです」
◆“総力戦”で展開する「事業共創」
美瑛プロジェクト班のメンバーは6人。主な取り組みは、京都でのイベントの企画運営や販売活動、現地での交流。特産品を生産者から仕入れ、市内の催しで販売したり、定期的にある校内のマルシェに出品したりしている。2024年2月には美瑛町のファンを増やすためのイベント「HOKKAIDO BIEI FUN LIVE!」を京都で開催。3月には『伏見酒フェス』で京都の地酒メーカー玉乃光酒造と連携して飲食ブースを運営した。このブースでは、美瑛町特産の美瑛豚と玉ねぎを使った「びえいバーガー」を120個販売する予定だったが、保健所への営業許可申請に不備があり、やむなく玉ねぎだけを完売。仕切り直して、6月に京都の共創施設で「びえいバーガー祭り」を開催し、好評を博した。
「保健所の申請もそうですが、やってみないとわからないこと、実践だからこそうまくいかないことがたくさん出てきます。そこでどう対応するかが、これから社会に出ていくうえでの大切な学びになると考えています」
今年は美瑛での交流を2度実施した。春には「美瑛コ・ワーケーションビレッジ」に参加。夏は「地域おこし協力隊インターン」として2週間滞在し、商品開発や、「美瑛出会いふれあい祭り」への出店、「美瑛コ・ラーケーションプログラム2024」にも参加した。このプログラムはコ・ワーケーションビレッジの若者・学生版で、地域の資源や人に触れながら学びや対話を深め、人生やキャリアについて考えるというもの。龍谷大学からは、眞鍋ゼミの他の班の4人と農学部の学生1人も加わった。
現在は新たな商品開発を進行中で、その素材には、販売活動を通じて縁が生まれた「笑顔菜園ひらまつ」のトマトを選んだ。地球や人に優しい農業を目指す姿勢に共感したのが理由だ。商品開発については、そのノウハウを持つ他のゼミからアドバイスをもらうなど、眞鍋ゼミの活動は学内外に広がりを見せる。そこに展開されるのは、まさに「事業共創」だ。
「私が常々言っているのが、ゼミはみんなでつくるもの、ということです。メンバーはもちろん、関係者が増えれば増えるほど面白くなる。関わってくれる人からたくさんの学びを得て、また学生同士が刺激し合うことで、一人ひとりが成長していく。そんな“総力戦”のゼミを、これからも続けていきたいと思っています」
◆商品開発を進め、プロジェクトを後輩につないでいきたい~佐々木鴻さん(滋賀県出身、経営学部経営学科3年)
眞鍋ゼミを志望した理由は、眞鍋先生への尊敬と、ゼミのテーマに魅力を感じたことです。やるからには本気で活動し、大きく成長したいので、熱量の高い学生が集まるゼミに所属したいと思っていたのですが、その願いが叶いました。ゼミでは実践的な学びを通して、仲間と高め合い、社会に出る勇気を養えています。
先生に紹介されて初めて参加した「美瑛コ・ワーケーションビレッジ」では、帰りの電車で号泣してしまうほど町が好きになり、この体験をもとにプロジェクトを立ち上げました。発足当初、他のメンバーは美瑛町のイメージが曖昧で、活動内容を決めるのが大変でしたが、少しずつ町と関わり続けることで各自に当事者意識が芽生え、いまは“総力戦”で取り組んでいます。目の前のことに一つひとつ全力かつ丁寧に取り組むことの大切さや、社会が信頼関係で成り立っていることなど、多くのことを学びました。いまは新たな商品開発を進めていますが、それはこのプロジェクトを後輩につなぐフックになり得ると思ったからです。
将来についてはまだ決めていませんが、ゼミで得たものを何らかの形で社会に還元したいと思います。自分にしかできないことがきっとあるはずなので、それを見つけるためにも、これからも、何事にも、本気で取り組んでいきたいと考えています。
◆プロジェクトの経験を生かし、いつか地元に貢献したい~髙木麻衣さん(徳島県出身、経営学部経営学科3年)
2022年にできた新しいゼミで、学生主体でやりたいことができること、外に向けた活動ができること、そして、「ゼミは総力戦」という先生の言葉に共感したのが、眞鍋ゼミを志望した理由です。メンバーはみんな個性豊かで頼りがいがあり、刺激し合いながら成長できる、大切な存在となっています。
徳島から京都に来て、地元を離れたからこそ、地元のよさに気づきました。いつか地元に貢献したいと思うようになり、「美瑛プロジェクト」での経験が将来生かせるのではと考えています。このプロジェクトに参加した当初は、活動内容が明確ではなく、停滞していた時期もありました。しかし、多くの人に支えられながら、マルシェやイベント活動をするなかで、人とのつながりの大切さを学び、美瑛町に少しでも貢献したいという気持ちが強くなりました。美瑛町のことを想う人々の輪が、町を一層魅力的にしているのだと感じ、人をつなげて地域を盛り上げる活動をしたいという具体的な目標を見つけることができました。
活動で心掛けているのは、自分の考えや思いを相手に伝えること。もともと気持ちを言葉にするのが苦手で、自分の意見を言うことができなかったのですが、それは自分で壁を作っていたのだと気づき、今は班のためにできることを考えながら行動するようになりました。自分を変えることができたこのゼミに、そして成長できる環境がある龍谷大学に入って、本当によかったと思っています。
◆新しい時代の新しい形の商いを創っていきたい
来年4月から新体制となる経営学部のもとで、眞鍋ゼミはどう進化するのだろうか。
「ゼミは全国を舞台にプロジェクトを展開していますが、今後は京都にキャンパスがある地の利を生かして、京都に関することをもっとやっていきたいと思っています。京都は外国人の関心が高いですから、そこからグローバルな展開ができるのではと考えています」
新設される商学科 は、「『新たな価値を創造し提供する商学』を学ぶ」ことを目指している。眞鍋准教授は「新しい商いの形を考えることが、この時代に誕生する商学科の役割」と言う。
「環境や地域、ローカルビジネスなどに関心を持つ学生が増えています。変化が激しい現代にあって、経営学も社会性や地域性を取り入れて考えていく必要がある。その点でも京都は、伝統産業など、社会や地域の課題に向き合える題材が豊富にあります。龍谷大学は浄土真宗の教えを建学の精神として、SDGsが掲げる『誰一人取り残さない』というマインドを400年近くつないできた大学です。そのマインドをこれからも大切にして、新しい時代の新しい形の商いを、学生のみなさんと一緒に創っていきたいと思います」
<詳しくはこちらへ>
経営学部 特設サイト
https://www.ryukoku.ac.jp/biz/
眞鍋邦大准教授インタビュー記事
https://academic-doors-ryukoku.jp/interview/20
https://retaction-ryukoku.com/2170
取材・文/石井聖子 撮影/山本仁志(フォトスタジオヒラオカ) 制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ
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