勉強する気にならない 総合型選抜は無理?…「大学受験カウンセラー」に寄せられる悩みとは?

2024/07/26

■特集:多様化する年内入試

塾や予備校が提供するサポートの一つに、大学入試に関するさまざまな相談を受ける「カウンセリング」があります。実際に利用する人は、どのような相談をし、どんなアドバイスを受けているのでしょうか。予備校のカウンセラーに、よくある相談事例や家庭でできるサポートについて聞きました。(写真=Getty Images)

「専門カウンセラー」がサポート

高校での文理選択から志望校や学部選びなど、大学受験までの過程には重要な「選択」の場面がいくつもあります。入試方式が年々複雑になり、「大学ごとに出願要件や日程が異なり、調べ切れない」という受験生や、「自分の頃の大学受験とは違っていて、アドバイスできない」と悩む保護者も多いようです。

迷ったときは、プロの意見を聞くのも一つの方法です。近年は生徒一人ひとりの個性を把握しやすい少人数制の塾や予備校を中心に、「進路カウンセラー」「学習カウンセラー」を置くところが増えています。

大学受験や海外留学などの講座を開講するトフルゼミナールも、受験全般の相談を受け付ける「専門カウンセラー」を取り入れています。中1から高3まで、幅広い学年を対象にしています。

長年カウンセリングを担当している犬塚泰輝(やすあき)事務局長は、次のように話します。
「志望校や入試方式といった具体的な相談のほか、『大学で学びたいことがない』『勉強する気が起きない』など、学習そのものの悩みにも対応しています。最近は、『学校の進路相談で一般選抜を勧められたが、年内入試は無理ですか』といった相談も多いですね。相談者は生徒一人でも、親子でもいいし、保護者のみでも構いません」

プロの観点でアドバイス

実際のカウンセリングでは、どのような相談がされているのでしょうか。犬塚さんに、よくある相談事例と、家庭での声がけにも役立つアドバイスのポイントを聞きました。

 

相談例1

留学などアピールできる経験がないので、総合型選抜への出願は無理でしょうか。 

●アドバイスのポイント:
・総合型選抜は、特別な経験がなくても出願できる。
・入試方式は「なんとなく」ではなく、正しい情報とすべての選択肢を理解した上で決める。


入試方式も含め、大学受験で最優先すべきは、本人の希望です。ただ、情報不足や間違った情報によって年内入試をあきらめている生徒や、なんとなく「こっちの方が向いていそう」と判断している生徒もいるため、カウンセリングでは本人の希望とその根拠を確認し、情報を補足・修正した上で、再度どの方式を選択するかを考えます。
「総合型選抜への出願に、特別な経験や実績が必要とは限りません。総合型選抜で大事なのは、大学教員が教えたい内容と、受験生が学びたい内容が合致すること。学びたい分野がはっきりしている生徒は、それを書類や面接で直接アピールすれば、合格の可能性は十分あります。入試まで時間がある高校1年生のカウンセリングでは、本人の学習意欲や志望校の出題傾向を見ながら、『年内入試と一般選抜の両方を視野に入れて頑張ってみよう』と提案することもあります」

 

相談例2

大学で何をやりたいかがわからないので、志望校を決められません。

●アドバイスのポイント:
・「何を学びたいか」ではなく、「どのような環境で学びたいか」を考える。
・大学は、何をやりたいかがわからないからこそ行く場所、と前向きにとらえる。


こういった悩みを持つ生徒には、「何を学びたいか」ではなく、「どのような環境で学びたいか」という視点で志望校を絞ることを勧めています。

「キャンパスの所在地や広さ、共学か女子大かなどの要素に加え、注目してほしいのが在籍する学生数です。数万人の学生がいる大学であれば、たくさんの人との出会いを通じて自分の世界を広げられますし、数千人規模の大学であれば、同級生とより親密な関係を築けます。そもそも大学は、何をやりたいかわからないからこそ行く場所。中高生でも考えやすい切り口で少しずつ選択肢を絞り、大学進学へのポジティブな気持ちを高めていきましょう」

 

相談例3

追い込まれないとエンジンがかからないタイプなので、まだ時間があると思うと、受験勉強をする気になれません。

●アドバイスのポイント:
・英検で段階的にモチベーションアップする。
・大学受験は全国大会。長期的な準備が必要だと納得させる。


エンジンがかかれば一気に頑張れるタイプの生徒には、目標を細分化する「スモールステップ方式」で、だんだんとやる気を高める方法が効果的です。設定する目標として勧めたいのは「英検」です。
「何年生のいつまでに英検○級に合格する」とスケジュールを立て、それに沿って勉強していけば、少しずつ気持ちを盛り上げられます。英語は志望校や志望学部にかかわらず必要な科目ですし、年内入試の面接でも「国際問題に興味があるので、自主的に英語を勉強し、英検も取得しています」といったアピールができます。

高校2年生以上になれば、受験に対する意識を変え、短期間でやる気を引き出す方法も有効です。
「大学受験は、時間をかけて取り組まなければいい結果は出ないと納得すれば、おのずとモチベーションは上がります。これまでの経験で有効だと感じたのは、『近隣の生徒がライバルになる中学受験や高校受験は地方大会。全国から受験生が集まる大学受験は全国大会』と説明する方法です。部活が野球部の生徒なら甲子園を、音楽や美術の活動をしている生徒なら全日本コンクールをイメージし、それに大学受験を重ねて、『そういうことか』と腹落ちするのです。思春期の生徒の場合、こういった話は保護者ではなく、私たちのような第三者から言われる方が、素直に聞いてくれます」

 

家庭では「自己分析の手助け」を

子どもが自分の気持ちを整理し、後悔しない選択をするためには、まずはしっかりと「自己分析」をする必要があると、犬塚さんは言います。
「とはいえ、中高生に『自己分析をしなさい』と言っても、一人ではなかなかできませんから、ここはぜひ親御さんに手助けしてほしいです。親から、自分が生まれたころの世の中のことや小さいときに夢中になっていたもの、好きだった遊びなどを聞くことは、子どもが自分自身を知るいいヒントになります。ぜひお子さんといろいろな話をして、一緒に考える時間をつくってみてください」

 

>>【特集】多様化する年内入試

(文=木下昌子)

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