郊外の大学が、都心の近くへ移転 新しい学食・トイレ…東洋大の学生が語るメリットとデメリット

2024/09/08

■特集:キャンパスと大学選び

郊外にあったキャンパスを、都心に近い場所に移転する「都心回帰」の大学が増えています。大学側にとっては志願者増などが期待できますが、学生にとっても、交通の便が良くなり、アルバイトや就職活動がしやすくなる、キャンパスライフが充実するなど、さまざまなメリットがあるようです。東洋大学はキャンパス移転や学部の再編などの改革を進めたため、2024年度入試では4年ぶりに志願者が10万人を突破しました。東洋大学の学生に、移転によって変わったことを聞きました。(写真=東洋大学朝霞キャンパス、東洋大学提供)

都心へのアクセス向上

東洋大学は2005年に、朝霞キャンパス(埼玉県朝霞市)で行っていた文系5学部の1~2年次の授業を、3~4年次と同じ都心の白山キャンパス(東京都文京区)へ集約し、4年間の一貫教育を実現しました。さらにその後も、学部の移転や改編などを続け、17年には赤羽台キャンパス(東京都北区)を開設して情報連携学部を新設。24年4月にも、生命科学部と食環境科学部を板倉キャンパス(群馬県板倉町)から朝霞キャンパスへ移転するなど、矢継ぎ早に改革を続けています。同時に、理工学部生体医工学科を生命科学部に組み込むことで、「生命(いのち)と食」について、学部を超えて総合的に学べる環境が誕生しました。

この移転により、これまで板倉キャンパスから都心の池袋駅まで電車で1時間40分ほどかかっていたのが、朝霞キャンパスからは25分ほどでアクセスできるようになりました。東洋大学の広報担当者はこう話します。
「食環境科学部の半数以上の学生は1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)在住です。板倉キャンパスの時は、東京都や千葉県から3時間近くかけて通学していた学生もいたので、移転によって利便性の向上につながったと思います。また、新しいキャンパスになることで、実験設備や調理設備も最新のものになりました。学部改組・再編に伴うキャンパス移転によって学部学科の垣根を越えた研究や学習ができるようになり、新たな価値が生まれることも期待しています」

こういった改革によって、キャンパスに通いやすくなっただけではなくて、学部ごとに分断されていた学びから、ほかの学部の学生と学ぶことで刺激を受けられる文理融合にもなり、志願者増につながっています。

東洋大学朝霞キャンパス

学生に聞く「キャンパス移転」

キャンパス移転は、学生にはどんな影響があったのでしょうか。朝霞キャンパスに移った食環境科学部健康栄養学科2年の鑓水(やりみず)千夏さんと布施桃花さんに聞きました。

――キャンパス移転はいつごろ知りましたか。

布施さん 入学前に大学のホームページで知りました。管理栄養士の資格が取れて、自宅から通える範囲の大学を探していたのですが、東洋大学は条件、学力、そして移転前と移転後の立地もちょうどいいと思いました。受験前には母と板倉キャンパスも見に行きました。そのとき帰りの電車を1本逃してしまい、電車は30分に1本しか来ないし、周りには何もないし、駅で待ちぼうけ。母は「ちょっとこの環境はきついんじゃないの?」と心配していましたが、1年後には朝霞に移転するからということで、賛成してくれました。

鑓水さん 私も入学前に知りました。実家が東北なので、もともと一人暮らしが前提でした。東洋大学は管理栄養士の資格取得に力を入れているので、第1志望でした。板倉キャンパスにはオープンキャンパスに行ってどんな様子かも確認しましたが、都心から離れていることはあまり気になりませんでした。でも、1年後に、より都心に近い所に移転するのはうれしいなと思っていました。どちらも大学の近くに家を借りたので、引っ越しは大変でしたが。

移転前の板倉キャンパス。最寄り駅からの道に店などはほとんどなかった

――新しい朝霞キャンパスはいかがですか。

鑓水さん 周辺に人が多いです(笑)。板倉キャンパスは最寄り駅から大学まで、お店が少ないこともあって、だれともすれ違わないこともありました。電車の本数も少なくて、1本逃すと確実に遅刻だったのが、今は10分間隔で電車が来るので、1本くらい乗り遅れても授業に間に合うようになりました。都心にも乗り換え時間を気にせず行けるし、交通費もかからないので行動範囲も広がり、時間も有効に使えています。

布施さん 校舎はきれいだし、学食のメニューも増えて、楽しみが増えました。大学の周りにもお店がたくさんあるので帰りに友達と寄ることができて、より仲良くなれたし、アルバイトも探しやすくなりました。学内には板倉キャンパスのときにはなかった大学生協があり、キャッシュレス決済が使えるのも便利です。お財布を忘れても安心ですね(笑)。

電子マネーにも対応している朝霞キャンパスの学食

鑓水さん 施設や設備が新しいのも快適です。それに、特徴的なのはトイレ。多様性を意識したつくりになっていて、男性用トイレの表示は青色、女性用は赤色というような色分けがされていないんです。例えば1階のトイレは男女ともに赤色、2階は同じく青色というようにフロアカラーに統一されているので、男性用か女性用かは表示で見分けなくてはいけないのですが、まだ慣れなくて。赤だと無意識に女性と判断して、男性用トイレに入りそうになることがあります(笑)。

トイレの表示の色はフロアごとに統一されている

布施さん 朝霞キャンパスのトイレはきれいだし、女性としては生理用品が常備されているのもいい。いざというときも安心です。

鑓水さん 敷地も広くてきれいなので、講義の合間に芝生で寝転んでリフレッシュしたり、友達とおしゃべりしたり。ギターを弾いている人がいたりして、キャンパスライフを満喫しています。

――校舎が新しくなったことで、いい影響はありましたか。

布施さん 講義棟の大教室に、メインスクリーンとは別に個別のモニターがつきました。板倉キャンパスでは、メインしかなかったので見にくかったですが、今は目を凝らさなくても見られるのでストレスが減りました。

鑓水さん 授業で使う調理室も最高です。調理台が広く、高くなったので、実習で食材を切る時にも腰が痛くならないし、レンジやオーブンも新しくて、やる気が出ます。

布施さん 図書館も板倉キャンパスでは奥まったところにあって行きにくかったのですが、今はキャンパスの入り口近くにあって開放的なので、ふらっと寄れるようになりました。1年の時よりは図書館に行って調べようと思えるし、実際に行く機会が増えました。

鑓水さん 教室のほかに勉強ができたり、相談できたりするスペースが増えたので、レポートを書く時にすぐ友達と相談したり、わからないことを教えあったりできて便利です。学校周辺のお店もたくさんあるので、帰りにみんなで勉強して帰ることもあります。都心にも近くなったので、夏休みの間にインターンシップに参加してみようと調べているところです。

新しいキャンパスになり調理室の設備も新しくなった

――理工学部現・生命科学部生体医工学科が再編によって同じ朝霞キャンパスになりましたが、いい影響はありましたか。

鑓水さん 生命や食、生きることに関する学部学科が朝霞キャンパスに集まったので、いろいろな話が聞けます。同じ器具を使って、似たような実験をしていても、目的や視点が違うと結果が違うことを知ったり、意見交換ができたりして面白いです。

布施さん 違う学部の学生から話を聞いて「へえ~」と思うことは、結構ありますね。

――逆に移転によってデメリットを感じたことはありますか。

布施さん 私自身はまったくありません。栃木や茨城の実家から通っている人たちの通学時間が延びた、という話は聞きます。

鑓水さん 家賃が高くなったことくらいでしょうか。それから、部屋の広さは板倉のときより狭くなりました。あとは引っ越し費用がかかったこと。親には負担をかけてしまったと思いますが、私の通いやすさを優先して、大学の近くに住まわせてくれた親には感謝しています。移転の話があってもなくても、私はこの大学のこの学部に入りたかったので、キャンパス移転はプラスアルファでラッキーという感じです。

 

キャンパス移転は、学生にとって魅力的であることは確かなようです。しかし、人によっては、一人暮らしの家賃や生活費の上昇など、親の負担が増える可能性があります。移転計画の有無について事前に調べておくことや、移転した場合のメリット・デメリットを考えておくことが必要です。今回話してくれた二人も、キャンパス移転の予定がある場合、親との話し合いは大切だと口をそろえて話していました。

>>【特集】キャンパスと大学選び

(文=石村紀子、写真=東洋大学提供)

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