■大学受験のバトン・先輩の失敗から学ぶ
3歳のときから子役として活躍し、映画やドラマでの数々の名演技を披露してきた谷花音(かのん)さん。子ども向け番組「beポンキッキーズ」ではメインMCを務め、フレンドリーな笑顔が多くの人の心をつかみました。そんな花音さんは現在、大学1年生。大学受験のときは、7カ月間の猛烈な追い込みで合格を果たしたそうです。どんな大学受験だったのか、振り返ってもらいました。(写真=所属事務所提供)
高校3年の7月まで舞台に出演、そこから受験勉強をスタート
――大学受験は一般選抜に絞って挑戦したそうですね。
高校3年の7月まで、舞台の仕事に集中していました。大学受験はその舞台が終わってからの勝負だったので、総合型選抜を受けるには時間がないし、学校推薦型選抜には行きたい大学がなかった。それで、一般選抜に絞って勉強することに決めました。

――志望校や学部はどのように決めたのですか。
中学1年の春休みにオーストラリア留学をして、英語でコミュニケーションすることの楽しさを知ったときから、英語を徹底して学べる学部に行こうと決めていました。また、中学時代の担任の先生への憧れもあって、中学と高校の英語科の教員免許を取得しようと思いました。
大学受験では、この2つの希望に合うところを塾の先生がリストアップしてくれたので、その中から苦手な古文の配点が低く、英語・国語・世界史の3科目で受けられる大学を選択しました。「憧れの大学」も加えて、全部で12校を受けました。
――受験勉強は遅めのスタートだったと思いますが、どのように進めましたか。
受験勉強を始めるまでの勉強といえば、定期テストの直前に短期集中で行い、何となくの感覚で解いているような状態でした。でも、受験ではその方法は通用しないことはわかっていたので、英語はまずは英単語や文法を覚え直して、基礎から順を追って勉強していきました。国語の現代文は得意でしたが、世界史は範囲も広いので、最後の最後まで悩まされました。
11月ごろは模試で思うような結果が出ないうえに、体調不良も続いて、焦りがピークになりました。体調が悪いのに無理して勉強をしては、また体調を崩して焦りが増す、という悪循環を繰り返していました。でも、友だちに話したら、焦っているのは私だけじゃなかったんですよね。「みんな一緒なんだ」と自分に言い聞かせることで、スランプから脱することができました。今思えば、体調が悪かったときは一度休んで、全快したところで勉強に集中するべきだったと反省しています。
母の弁当と合格祈願のお菓子が最大の励ましに
――猛勉強の結果は、いつごろから出てきましたか。
受験直前は1日約11時間勉強しました。年末年始やクリスマスも塾の自習室に通い詰めて、結果的に偏差値が10以上は伸びました。自分でも驚くくらいで、自信になりました。受験は大学入学共通テストからスタートしましたが、私立大学の共通テスト利用方式としての受験だったこと、私立大学の一般選抜の腕試しのつもりだったこともあって、落ち着いて臨むことができました。
――受験ではハプニングがつきものですが、想定外だったことはありましたか。
願書を出す段階で、ヒヤッとすることがありました。英検やGTECなどの外部資格で英語の試験を免除されたり、加点してもらえたりする大学の場合、願書と一緒に合格証明書などを同封しますが、原本を必要とする大学と、コピーでもいいところがあります。そこを間違えていて、塾の先生に出願書類の最終チェックをしてもらった際、原本が必要な大学の封筒にコピーを入れていたことがわかりました! たまたま原本が1枚だけ残っていたので、差し替えて速達で送り、事なきを得たことがありました。
試験当日も、キャンパスの外にあるビルを試験会場にしている大学では、受験生らしき人があまり歩いていなくて、道に迷ってしまったことがありました。それから、人身事故で電車が止まってしまったこともありました。
ただ、仕事でも、想定外の出来事はよくあったので、私はいつも試験開始1時間前には会場に到着するようにしていました。そのため、電車遅延が発生したときも、焦ることはありませんでした。試験開始が1時間遅れたときには、待ち時間がだいぶ長くなってしまいましたが、勉強道具一式をいつも持っていたので、時間を有効活用することができました。
――想定外があることを前提に準備していたのですね。
一つでも多く、想定外の出来事を想定して準備しておけば、いざというときの焦りも少なくてすみますよね。試験会場では英単語や地図が書かれた服は禁止されているので、私は高校の制服で行くようにしていましたが、大学によっては寒さがこたえることもありました。ただ、私は常にひざかけを持参するようにしていたので、それほど寒さを気にすることはありませんでした。
想定できていなかったのが、時計のバッテリーです。試験中に充電が切れてしまったときはかなり焦りました。時計の電池やバッテリーには要注意です。
それから解答用紙のマークシートが見にくくて、ずれてマークしてしまったことがありました。見直しているときに気づいたのでセーフだったのですが、あれは準備不足でした。過去問を解くときに実際の解答用紙のコピーを使っていたら、このような失敗は防げたのかもしれません。
――準備していても、やはりいろいろと起こるものですね。
そうですね。そんな中で力になったのが母のお弁当です。母は塾に通うときも、受験中も、毎日お弁当を作ってくれました。お弁当には、「頑張れ」とか「合格」などと書いてある合格祈願のお菓子がいつも添えられていて、常に励まされました。
それに、わが家のお弁当の中身は、幼稚園のときからあまり変わらないんです。その「いつも通り」が安心感につながっていたので、母には本当に感謝しています。

「もったいないから浪人しては」と言われて……
――受験の結果はどうでしたか。
残念ながら憧れの大学には手が届きませんでしたが、もともと「ダメもと」で受験した大学だったし、この7カ月間でとことんやりきった思いがありました。
塾の先生には「これだけ短期間でこんなに成績が伸びたのだから、浪人してみてはどうか」と言われました。でも、やりきったというすがすがしい気持ちしかなかったし、受験した大学はやりたいことが叶うところばかり。合格した2校でも迷うほどでしたが、より英語力を高められそうな大学に進学しました。
――大学受験を乗り越えて、得たものはありますか。
もともと勉強はあまり好きではありませんでしたが、この7カ月間、集中して勉強して、偏差値も上がって、「自分はこんなに勉強を頑張れるんだ」という自信がつきました。
今は、ネイティブの先生が英語で行う授業や、英語の長編小説を読む授業など、英語三昧の日々で、英語力は格段にアップしていると思います。この調子で大好きな英語の勉強を頑張り続けたいですね。
谷花音(たに・かのん)/2004年生まれ。3歳から子役として活躍し、「全開ガール」「名前をなくした女神」(ともにフジテレビ)などのドラマ、映画「上京ものがたり」ではその名演技が注目を集めた。またBSフジ「beポンキッキーズ」でメインMCを務めたほか、現在は舞台、声優、CMと幅広く活躍中。2024年3月から4月に上演の舞台「うねり~踊らない二人~」に大幸亜樹役(ヒロイン)で出演。
(文=阿部桃子)

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