スマホゲーム依存、進学校の「優等生」が通信制へ 「いい子」プレッシャーからの脱却

進学校の優等生が目標を見失いゲーム依存に 通信制高校に転校して脱却できた理由

2023/12/07

■特集:保護者の悩み・スマホは受験の味方?

中学受験を経て進学校に通っていた中学3年のころから、ゲームやスマホにはまり、学校も休みがちになってしまった岡本歩さん(仮名)。両親や専門家と相談した結果、通信制の高校に転校し、兵庫県立大学への合格を果たします。ゲーム依存から抜け出したきっかけは何だったのでしょうか。大学生活を楽しむ現在のスマホとの付き合い方も含めて聞きました。(写真=Getty Images)

優等生のストレスから夜通しゲームに没頭

——中学受験して入学した中高一貫の進学校はいかがでしたか。

中学2年くらいまでは勉強も部活もうまくいき、学校生活を楽しめていました。しかし、2年の終わりごろにグッと身長が伸びる時期があって、ひざに痛みが出始めました。テニス部に所属していましたが、ひざに負担がかかるスポーツなので練習がつらくなり、部活から足が遠のいてしまいました。体を動かしてストレスを発散することができなくなって、なんだか無気力になってしまいました。成長期のせいか、いくら寝ても眠くて仕方がなくなり、朝も起きられない状態が続きました。

 中学3年の5月ごろからは五月病のような状態になってしまいました。僕の通っていた中学では、クラス内で成績がいい順に学級委員などの役職に就いていました。僕も中学2年から3年の1学期にかけて学級委員を務めたのですが、一つの目標が達成できたからか、勉強に対するモチベーションを保つのが難しくなってしまったのです。それまでは量の多い宿題も真面目にこなしていましたが、「逃げたい」という思いが強くなっていきました。

今思えば、僕は子どものころからずっと、優等生を演じて「いい子」になろうとしていた気がします。頑張っていい成績を取れば、親や先生にほめられて認められる。それがうれしくて「もっと評価されたい」という気持ちが強くなる。

でも、自分が心からしたいと思うことがわからなくなっていたようにも思います。

——優等生でいるのがしんどくなってしまったのでしょうね。

ゲームにはまり始めたのは、そのころからです。すべてを忘れたくて、夜、親が寝たのを見計らってはゲームをするという生活でした。その結果、学校に遅刻するようになり、友達に「ごめん、ごめん」とノートを借りるようになりました。それまでずっと優等生を演じていたせいで、そんな「できない自分」を認めることができず、ストレスを発散できていたテニスもできなくなり、ますます目の前の楽しいゲームをやるという悪循環でした。

——ゲームの魅力はどんなところだったのでしょうか。

時間を忘れられるところです。ゲームの世界に入り込んでいるときは、周りのことも自分のことも考えなくていいのです。電源を入れれば簡単に楽しめることもあり、高校に上がったころには、毎晩10時ごろから明け方3時ごろまでゲームをするようになっていました。高校1年の夏に「友達との連絡にLINEが必要だから」と親にスマホを買ってもらうと、スマホにもはまって、ゲームの実況動画などをひたすら見るようにもなりました。

そうなると、ますます起きられなくなり、遅刻が増えて勉強もわからなくなった。そして、将来に何の希望も期待も持てない状態になっていったのです。

——ご両親はそんな様子を見て、どう対応されたのですか。

何度も話し合いをしました。僕にとって救いだったのは、両親は僕がどんな気持ちなのかということを何度も聞いて、一緒に考えてくれたことです。おかげで「僕の意見が伝わるんだ」ということがわかって、うれしかったと同時に、自分の意見を言えるようにもなりました。

そして、母親と専門家のところに相談に行くことにしました。そこで「学校に通わずに勉強する方法もあるよ」と教えてもらい、学校説明会などにも参加した結果、オンラインで授業を受けたりレポートを提出できたりする通信制の高校に転校することに決めました。

大学合格という目標 距離感を保てるように

——大学受験を目指そうと思ったきっかけは何だったのですか。

その高校でいい先生と巡り合えたことです。「大学ではこんな勉強ができるよ」「こんな道もあるよ」といった情報を教えてもらえたおかげで、大学進学への興味が少しずつ湧いてきました。そのころもスマホで動画を見たり、ゲームをしたりするような生活は続いていましたが、以前のような勉強のストレスからは解放されたこともあり、スマホの使用は少しずつ調整できるようになりました。

——受験勉強中は、スマホとうまく付き合えましたか?

大学合格という目標ができたことで、「過去問を一つ終わらせたら動画を見る」「昼食後にリビングで少しだけYouTubeを見る」というように、自分でスマホやゲームとの距離感を保てるようになっていきました。

また、ストレスをためてスマホやゲームに手を出さないように、自己肯定感を上げる工夫もするよう心がけました。例えば、すぐにクリアできそうな小さな目標を立て、その目標を書き出しておく。それを達成できるたびに、シールを貼ったり丸を描いたりして成果が目に見えるようにしました。

——そうした生活の変化を経て、兵庫県立大学に合格しました。今はどのような生活ですか。

自分のやりたいことはとことん突き詰めようと思い、気になることにはどんどん挑戦するようにしています。いくつかの部活やサークルを楽しんだり、アルバイトをしたりと、毎日が充実しています。忙しいので、スマホやゲームは音楽を聴いたり、文章を考えるのに使ったりと、帰宅してからちょっと触るくらい。家にこもっているよりも、忙しくしているほうが自分の性に合っていたのかもしれないですね。

ただ、今でも試験前などストレスがかかる状況になると、ついスマホに逃げて、熱中してしまうこともあります。だから「家はくつろぐ場所」と決め、レポートは大学やカフェで書いたり、スマホのスクリーンタイムをうまく活用して使用時間を制限したりと、いろいろな方法で解決を試みるようにしています。

また、定期的に自分がやりたいことを書き出すなど、スマホやゲームよりも楽しいことを考えることも心がけています。この「やりたいことリスト」は、何かを始めるときの原動力にもなっています。

——大学では子どもとネットとの距離を考える活動にも参加しています。

小学生から高校生を対象に、スマホやゲーム、ネットとの付き合い方を主体的に考えてもらうための宿泊型イベントや、出張型のグループワークなどを提供する活動に参加しています。彼らを見ていると、家族や友人との関係がうまくいかず、ネットを「逃げ道」にしてしまっている子が少なくありません。僕の場合も、勉強がうまくいかないストレスや、親子関係において「認められたい」という気持ちが強すぎて、自分の主体性を失ってしまっていたことが、ゲームやスマホに逃げてしまった原因だったと思います。

ですから彼らと接するときも、頭ごなしに「ゲームやスマホは良くないものだから、使い方を考えよう」で終わらせるのではなく、それぞれの子が抱えている悩みに寄り添い、次のステップに踏み出せるような声かけができたらいいな、と思っています。

——将来の進路として、教育関係も視野に入れているそうですね。

現在の活動を通じて、少しずつ教育に興味が湧いてきています。大学卒業後は教員になるか、大学院に進んで教育方法や子どもの心理学に関する研究をしてみたいです。僕の個人的な体験が、誰かの気持ちに寄り添うことにつながるのなら、これほどうれしいことはないですね。

(文=中村茉莉花)

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