■大学いまむかし

大学の学部名に日本で初めてカタカナが使われたのは、芝浦工業大学が1991年に設置したシステム工学部といわれています。以来、キャリア、コミュニケーション、グローバルといったカタカナを使った学部が続々と誕生。一時は「軽い」という批判もあったものの、今やメジャー勢力になりつつ、ユニークな学部が増えています。多様化する大学の学部を紹介します。(写真=東京未来大学提供)

多様化する学部 学部数も30年で2倍に

国が48年から行っている学校基本調査によると、大学の学部数は90年度の1310学部から20年度には2612学部と約2倍に増えています。学生数は同期間で1.32倍の増加にとどまったことを踏まえると、学部数は大きく増加したことがわかります。

内容も多様化していて、受験生にとっては選択の幅が広がりました。かつては文学部などの人文科学系、法学部や経済学部などの社会科学系、工学部や理学部などの自然科学系という3つに分かれていた学部にも、学問と学問の接点(学際)を研究する学際系や、文系と理系を融合した文理融合系といった新たな分野が出てきました

政府も文理横断型の教育を推進しており、例えば金沢大学が23年に新設した「融合学域スマート創成科学類」は「仮想と現実の融合を実装し、イノベーションの創成をリードする人材の養成を目的とする」学部です(公式サイトから)。ちなみに金沢大学は従来の大学の「学部」の代わりに、学問領域が広い「学域」の名称を使い、「学域」の下に従来の「学科」に当たる「学類」を置いています。

大好きなマンガや恐竜も、今や研究対象に

ユニークな学部としてよく知られているのが、06年に全国で初めて設置された京都精華大学の「マンガ学部」です。マンガ学科とアニメーション学科があり、マンガ学科には「ストーリーマンガコース」や「キャラクターデザインコース」など4つのコースがあります。マンガを描く技術から業界や作品の歴史まで広く学び、多くの有名漫画家が輩出しています。

恐竜の化石が多く発見されている福井県。25年には、福井県立大学が「恐竜学部(仮称)」を新設する予定です。県立恐竜博物館に隣接する新キャンパスでは、恐竜学や地質学、気象学などを学び、発掘などのフィールドワークを加えて恐竜研究を進めます。学部とはいえ、定員は30人の少人数で、全国の恐竜ファンが狭き門に殺到しそうです。

自然災害や大規模事故、経済や国際関係の危機などが絶えない現代社会では、「危機管理学部」の注目度も上がっています。例えば04年、アジアで初めて危機管理学部を設置した千葉科学大学では、学部内に危機管理学科、保健医療学科、航空技術危機管理学科、動物危機管理学科を設置。安全、安心を追求する知識と技能を身につけた、健全で平和な社会の実現に貢献する専門家や技術者の養成が目標です。ほかに日本大学と倉敷芸術科学大学も危機管理学部を設置しています(倉敷芸術科学大学は23年度以降の学生募集を停止)。

昔はなかった「モチベーション行動科学部」とは?

人間をテーマにしたユニークな学部を設置したのが、東京未来大学です。その名も「モチベーション行動科学部」。07年に、こども心理学部で開学した同大学の2つ目の学部として12年にスタートしました。髙橋一公学部長はこう話します。

モチベーションは、よく動機づけや、やる気という意味で使われますが、それを学術的に、多面的に教育・研究することを目的に始まった学部です。東京未来大学では心理学を中心とした教育に力を注いでいます。特にモチベーション行動科学部では心理・コミュニケーションを柱にしつつ、経営学と教育学といった側面からも複合的にそれにアプローチしています」

コミュニケーション能力を磨く授業では、活発に意見を交わします(写真=東京未来大学提供)

自らを問いただし、社会で活躍するための応用力と実践力を身につけることも教育目的の一つです。他者を理解し、自分自身を理解することでコミュニケーション能力を高め、ひいては所属する組織を発展させる能力を磨くことを目標にしています。またディスカッションやプロジェクトを通して社会のニーズを学び、日常的にアクティブラーニングを取り入れた授業を展開しているのも特徴です。

社会で活躍できる力を大学がアピールする時代

「すべての大学に言えることですが、研究だけではなく、社会や学生に対して具体的に教育目標を示し、こういう力が身につきますよ、とアピールする時代です。単に知識を与えるだけでなく、学生が社会で活躍できる教育を行うことが、今の大学に求められていると思います」(髙橋学部長)

足立区生涯学習センターとの共同プロジェクトで、周辺の空き家や古民家を再生した施設などを調査し、マップを作製した産学連携活動の様子(写真=東京未来大学提供)

学部を開設した当初は、軽いカタカナ学部と揶揄されたこともあったといいますが、学部名に冠されたモチベーションという言葉も浸透し、ユニーク学部の老舗としてメディアで紹介される機会も増えています。

今後は少子化によって大学合格のハードルは下がり、どこの大学で学ぶかより、何を学ぶかが大事になるといわれています。好きなことを究め、生涯の味方となってくれる教養を身につけられる、ユニーク学部が狙い目です。

(文=福光 恵)

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