大学受験に有利な「英語検定」は?識者に聞く 英検準1級で「みなし満点」になるケースも

2023/08/30

■大学受験の基礎知識

私立大学を中心に、民間の英語検定試験を入試に活用する動きが広がっています。では、どの民間試験を受けておくと、大学受験に役立つのでしょうか。大学入試英語や海外留学に詳しい英語塾・J PREPの斉藤淳代表に、高校生が受けるべき英語検定試験やそのメリットについて聞きました。(写真=Getty Images)

英語検定試験で入試が有利になる?

大学入試の一般選抜について、民間の英語検定試験を利用する大学は増えています。大学入試で利用できる英語検定試験には、主に以下のようなものがあります。

大学によって利用の仕方はさまざまですが、基準を満たすスコア・級の取得を出願の要件にしている場合があります。また、取得している級やスコアによって大学の個別試験の点数に換算したり、加点したりすることもあります。総合型選抜・学校推薦型選抜や、私立大学の一般入試で利用できる場合があるので、上手に活用していくことが大切です。

どの英語検定試験を受ければいい…?

志望大学が決まっていれば、その大学の募集要項を見て、採用している検定試験を受けることが近道です。しかしどの大学を受けるかまだ決まっていない場合は、数ある英語検定試験のなかから、どれを受けるといいのでしょうか。

斉藤さんが最初に挙げるのは、実用英語技能検定(英検)です。

「学習レベルに応じて七つの級があり、学習目標を設定しやすく、合理的に勉強を進められます。出題形式も安定しており、ほかの検定に比べると受験料が比較的安いことも、受験しやすいポイントです」

大学入試に活用している大学の数は多く、2022年度入試では424大学にのぼりました。一般選抜で外部検定を利用する大学が出始めた15年以降、7年連続で増え続けています

例えば、早稲田大の商学部「英語4技能テスト利用型」では、英検準1級合格が出願可能(2級以下は出願不可)。同大国際教養学部では英検2級で7点加点、準1級で14点加点、1級で20点の加点があります。そのほか、明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大などをはじめ、多くの大学で利用が進んでいます。

英検準1級を持っていると、一部の難関大学や中堅大学で英語入試が“みなし満点”になるなど、優遇されることが多いので、最も利用しやすいでしょう。もちろん取得は簡単ではありませんが、特に難関私大が第1希望ならば、高2の終わりごろまでに、英検準1級をひとつの目標にすることをお勧めします

また、英検と同様に汎用的な英語のスキルが問われるのがGTECです。「高校で一斉受験することが多く、その際のスコアが大学入試に使える可能性があることがメリットとして挙げられます」

アカデミックな英語力がつく「TEAP」

そして次に斉藤さんが注目するのが「TEAP」です。

これは、上智大と日本英語検定協会が共同で開発した大学入試向けの英語試験です。英検との大きな違いは、主に高校生を対象として開発されている点です。テスト内容は「英語で講義を受ける」「英語の文献を読み解く」「英語で発表を行う」など、大学教育で遭遇する場面を考慮して作成されています。

「日本の高校生の英語力を想定して、大学で学ぶ英語の難易度に近づけるための工夫がなされています。『meteorology(気象学)』のような大学教育を想定した語彙や分野の問題が多く出題され、大学後も通用するアカデミックな英語が身につきます」(斉藤さん)

出題レベルは英検準2級~準1級程度。つまり、「英検準2級程度の英語力を持っているか」がTEAPを受験するひとつの目安になります。英検は合否が決まりますが、TEAPはスコアとバンド(段階表示)で結果が示されます。

22年度は全国の287の大学がTEAPを採用しました。例えば、学習院大国際社会科学部では、TEAP総合スコアで390点を取得していると、個別試験の英語が150点(満点)と換算、210点だと100点と換算され、個別試験が免除となります。

ペーパーテストであるTEAPのほか、コンピューターを使って受験する「TEAP CBT」もあります。画像や映像と音声を組み合わせた問題により、IT社会に求められる思考力や判断力、表現力も含めた英語力を測ることを目的に開発されました。入試に採用している大学は230校を超えています(22年度)。

とはいえ、「英検一択」の現状

本格的に英語で教育を行う大学に出願する場合や、海外の大学をめざす場合は、TOEFLやIELTSを検討してみてください」と斉藤さん。アメリカ英語で出題されるTOEFLは北米への留学をめざす際に、イギリス英語で出題されるIELTSはヨーロッパの大学をめざす際に用いられることが多いのが特徴です。日本の大学入試にも利用できますが、将来的に英語で教育を受けたい、海外へ留学したい、と考える高校生はぜひチェックしてみるといいでしょう。そのほかTOEICには、問題にマーケティングや経理といったビジネスに関する語彙や場面が多く使用されるという特徴があります。

とはいえ、23年度一般入試の現状を見ると、受験生が実際に利用した外部検定試験は、圧倒的に英検が多いことが以下の調査からわかります。

 

受験生が利用した外部検定(全体)(2023年一般選抜)

©2023 旺文社 教育情報センター

外検利用者を100とした場合の各外検利用者の割合。
各外検はCBTなどの細かな種類も含めた合計値。
【調査時期】2023年3月~5月。
【調査内容】2023年一般選抜(共テ利用含む)志願者における各外検の利用者数。
【調査対象】外検入試(一般選抜)を実施した、国公私立250大学(専門職大は除く)。
【回答状況】152大学(回答率60.8%)、155,174人集計。

 

「英検一択」の背景には、実施回数や試験会場の多さといった「利用しやすさ」に加えて、利用できる大学の多さにあるのかもしれません。

それでは、大学受験に向けてどの検定試験を受験すればよいのでしょうか。

同じ4技能型で受験するのであれば、上に挙げた検定試験はいずれも大きな差はありません。どの検定試験も統計学に基づいて作問され、問題の難易度を比較できるようにある程度同じようなスコアが出るように設計されているので、どれを受ければ有利ということもないでしょう。自分が志望する大学の入試で活用できるかどうか、面接試験がある場合は対人とコンピューターのどちらが話しやすいかなど、自分が対策しやすいものを選んでください」

また、英語学習についてはこのようにアドバイスします。

最初から何かに特化した勉強をすると、応用が利かなくなります。英検は指標としてわかりやすいですが、どの試験を活用するにせよ、汎用的な英語力を磨こうという意識をもって、上手に利用してほしいと思います。高校3年の最初のうちに英検準1級レベルを取得できれば、大学入試へ対応できる英語力がついているということ。英語以外の科目に注力できるという面もあります。大学入試での特典を意識しつつ、英語力を客観的に測り、弱点を克服しながら、英語力を伸ばしていってください」

(文=Thinkキャンパス編集部)

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