子供の大学受験…お弁当どうする? 料理研究家に聞いた「おすすめ食材」は?

2024/01/11

■大学受験のバトン・先輩の失敗から学ぶ

受験当日のお弁当は何にしたらいいのか、悩む保護者も少なくないかもしれません。料理のプロは、わが子にどんなお弁当を持たせたのでしょうか。料理研究家の渡辺あきこさんに、自身のお子さんが東京大学を受験したときのことを振り返ってもらいながら、受験期の食事のポイントを教えてもらいました。(写真=『渡辺あきこの東大合格ごはん』からお弁当イメージ/主婦の友社提供)

「栄養バランス」よりも「決まった時間にエネルギー補給」

――著書『渡辺あきこの東大合格ごはん』(主婦の友社)には、息子さんの大学受験時のエピソードが紹介されています。いつも以上に、毎日の食事を大切にされたそうですね。

2007年のことなので、かなり前の話ですが……。大学受験に、親が子にしてあげられることって限られますよね。息子が通っていた公立高校の保護者会で、「親は勉強に集中できる環境を整える『良き裏方たれ』」という話を聞き、裏方としての仕事をまっとうしたいと思っていました。

――親にできることの一つが、食事面のサポートだったのですね。料理研究家の方がどんなサポートをしたのか、気になる保護者は多いと思います。

特別なことは何もしていませんよ(笑)。受験の直前期に入ったら体調を崩さないことが一番なので、栄養バランスうんぬんよりも、決まった時間にきちんとエネルギー補給できることを、いつも以上に意識したくらいです。

――「栄養面」ではなく、「決まった時間にエネルギー補給」ですか。

息子はキッチンタイマーをセットしながら勉強していました。また、高校や塾は授業の時間がきっちりと決まっているので、受験生はそれに合わせて行動することが多いと思います。それなのに食事の時間が不規則だと、ペースが乱れてしまいます。

加えて、エネルギーが不足すると身体が冷えて頭が働かないし、風邪も引きやすくなります。簡単な料理や買ってきたピザで間に合わせる日があってもいいので、手の込んだものを作って待たせるよりも、決まった時間に食事を出すことを最優先にしました。

――塾に通っている場合は、特に夕食の時間が不規則になりがちです。

高校からそのまま塾に行く日もありますよね。でも、塾が終わってから夕ご飯だと翌朝に響いたりしてよくないので、息子の友達のなかには、昼のお弁当のほかに、塾の前に食べるお弁当も持って登校していた子もいたようです。息子の場合は下校後にいったん帰宅できたので、夕方5時頃にしっかり食べてから塾に向かうようにしていました。

――朝食はご飯と決めていたそうですね。

栄養士の方から、「米飯は消化吸収してエネルギーに変わり始めるのに、2、3時間かかる」と教えていただいたのがきっかけです。つまり、7時に朝ご飯を食べるとすると、授業や試験が始まる頃に、脳にエネルギーが回り始めるということです。それを知って以来、朝はご飯を中心に、ご飯に合うおかずやみそ汁などにしていました。

一方で一日の始まりの朝こそ、時間通りに食べることが大事です。わが家もインスタントのみそ汁や、卵かけご飯で済ませることがありました。用意しておいたものをレンジで温めるだけでもいいじゃないですか。食欲がないときは、バナナをつぶして牛乳と混ぜるだけのバナナジュースのほうが、のどを通ったりもします。親も頑張りすぎると参ってしまうので、上手に手を抜くといいと思います。

受験当日のお弁当 おすすめの食材は?

――受験当日、息子さんはどんなお弁当を持って行ったのでしょうか。

(下の写真を指して)この写真のような感じです。おにぎりっておいしいし、一個ずつ、食べたいタイミングに食べられるところもいいですよね。

(写真=『渡辺あきこの東大合格ごはん』からお弁当イメージ/主婦の友社提供)

――写真には、「チョコも添えて」とあります。

そうですね。まず、おかずには息子の好きな肉料理を入れました。甘いものがあると気持ちが落ち着くし、後でおやつに食べてもいいと思って、ちょっとしたお菓子もつけるようにしていました。

――受験本番のお弁当に、おすすめの食材などはありますか。

緊張するでしょうから、お子さんの好きなものを入れてあげればいいと思います。あえて挙げるとしたら、とんかつとキャベツのように、一緒に食べるとおいしい組み合わせを意識することでしょうか。

最近は保温機能があるお弁当箱など、便利なものがあります。温かいものを食べるとほっとするので、炊きたてのご飯とか、インスタントスープとか、温かいものを入れて持たせるのもおすすめです。

――遠方から来て、宿泊先から入試会場に向かう場合など、コンビニで購入する受験生も少なくありません。

宿泊先でも、パンにジャムをはさんだり、インスタントスープを作ったりするくらいなら、できるかもしれません。でも、作るかどうかじゃないんですよね。本番の朝にバタバタするのは落ち着かないと思うので、親御さんが同行する場合は、親御さんが買いに出るだけでも十分にサポートになるし、お子さんには気持ちが伝わると思います。

お子さんが自分で買う場合は、栄養などは気にしなくていいので、お昼が楽しみになるようなものを選べばいいんです。ただし、揚げ物ばかりだと胃もたれするので、コンビニに行き慣れていないお子さんだったら、それくらいはアドバイスしてもいいかもしれません。

それから、うちの息子は緊張すると胃がきゅっとなって、食欲がなくなるようでした。ロールケーキでも、ヨーグルトでも、ゼリー飲料でも、そういうときでも食べられそうなものを、少し余分に持って行っておくと安心です。

――お弁当で注意したほうがいいことはありますか。

「冷めてもおいしい」を意識することです。豚や牛の脂は、冷めると固まっておいしくなくなってしまいます。また、硬めの米飯は冷めるとカチカチになってしまいます。おかずは鶏肉をうまく活用し、お米は水分を少し多めに炊いたりするか、それこそ保温機能のあるお弁当箱を活用して、温かいまま持って行くことでしょうか。

それから、お弁当の中身がぐちゃぐちゃになってしまったり、汁がもれたりしたときの気持ちのダメージって大きいですよね。中身が混ざらないようにするには、横も上もきちんと詰めるのがコツです。お子さんがまだ高校1、2年というご家庭は、模試のたびにあれこれ試してみてもいいかもしれないですよ。

汁もれ対策にはプラスチック製の密閉容器もおすすめ(写真=渡辺あきこさん私物/編集部撮影)

――最後に受験生を持つ保護者へのメッセージをお願いします。

おいしいものがあるだけで、うれしくなったり、リラックスできたりしますよね。だから受験本番のお弁当は、栄養バランスや特別感よりも心の安定が第一。緊張するなかでお子さんがうれしくなったり、ほっとできたりするものを用意してあげるといいと思います。

ただし、入試の朝は早いですし、親御さんが無理をしないことも肝心です。野菜や彩りはプチトマトやきゅうりで十分だし、おにぎりの具はサケフレークを入れるだけでもいいし、ロールパンにゆでたソーセージをはさんだものだって立派なお弁当です。

親御さんがこうして一生懸命に考えてくれていることは、お子さんにもきちんと伝わりますので、お弁当の準備もぜひリラックスして楽しんでくださいね。私の経験が、少しでもお役に立てたら光栄です。

(写真=本人提供)

渡辺あきこ(わたなべ・あきこ)/料理研究家。料理学校の講師を務めたのち独立。和食を中心とした家庭料理を得意とし、雑誌、書籍、テレビ、新聞、講習会などで活躍している。著書に『渡辺あきこの東大合格ごはん』(主婦の友社/電子版発売中)、『すぐに作れてカラダにやさしいから、塾弁にもぴったり! こどもが喜ぶ スープジャーのお弁当』(世界文化社)など多数。

(文=竹倉玲子)

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