■教育系YouTuber&専門家と予測 2025年度大学入学共通テスト
「楽しいから始まる学び」をコンセプトに、YouTubeやクイズ番組などで大活躍の東大発の知識集団QuizKnock(クイズノック)。「歴史王」として大人気の年内卒業を発表したこうちゃん(右)と、現役東大生・とむさん(左)に、大学入学共通テストを間近に控えた受験生は何をすべきか、朝日新聞「Thinkキャンパス」平岡妙子編集長が聞きました。
共通テストには魔物がいる? 本番に向けた心の準備を
――今日はお二人に、大学入学共通テストに向けての心構えをお聞きしたいと思います。まず、こうちゃんは、共通テストの前身のセンター試験と2次試験を受験して、東大に現役合格しました。高校3年生の冬休みはどんな勉強をしていましたか。
こうちゃん:いま振り返るとよくなかったなと思うのですが、冬休みの段階で2次試験の準備ばかりしていました。東大はセンター試験と2次試験の割合が1:4で、センター試験の比重が軽いんです。それでセンターを受験する前から、気持ちはもう2次試験に向かっていました。
――センター試験は自信があったのですか。
こうちゃん:実はそうなんです(笑)。夏のセンター模試の結果は全国100位以内で、直前の模試でもA判定。世界史は100点、英語も1問間違えるか間違えないかという点数を取れていたので、自信がありました。ところが、実際のセンター試験本番の合計点は770点くらいで……(満点は900点)。
とむさん(以下、とむ):え! それだってすごいけど……。こうちゃんにとっては予定外だったんですよね。
こうちゃん:センター試験の前日も当日の朝も「余裕!」だったのに、席に着いた途端に緊張してしまって。問題を解きながらもずっと「やばいやばい」「あれ?」「うわ、やばい」という状態でした。数学は計算ミスに気づかずに20点落とすし、そういう失敗だらけでした。

――なぜそんなに緊張してしまったのでしょうか。
こうちゃん:試験本番を想定した、気持ちや行動面の準備を全然していなかったから。つまり、アウトプットの問題です。もちろん合格するためにはインプットは重要で、合格の95%はインプットの量で決まるのは確かです。でも残り5%はアウトプットなんです。どんなに知識を詰め込んでも、それを発揮できなくては意味がない。僕の場合、当日の心の準備が全然できていなかったから、受験会場の独特の緊張感にのまれてしまったんだと思います。言い訳ですけど、当日使った机が傾いていたので、あの机のせいだった(笑)。
――とむさんは推薦入試で東大に合格しましたが、共通テストは受験したのですね。
とむ:はい。推薦入試でも共通テストの成績が合否に反映されます。だいたい8割は取らないといけないと言われていたし、推薦がダメだった場合には2次試験を受ける予定でした。早稲田大学政治経済学部の共通テスト利用入試にも申し込んでいたので、「失敗はできない」という気持ちは、ほかの受験生と変わらなかったと思います。

こうちゃん:当日、緊張しなかったの?
とむ:しなかったですね。こうちゃんとは真逆で、アウトプットできるかどうかの準備は抜かりなくやっていましたから(笑)。家や学校以外のざわざわした環境や慣れない環境で、試験と同じような問題を解く練習をしていました。
こうちゃん:すごいなぁ、やっぱりそういう心構えが大事なんだよね。ちなみに、どんなところで勉強していたの?
とむ:主にカフェですね。あとは公園。ベンチに座って地理を解くとか(笑)。とにかく普段と違う環境で解けることが大事だと思っていました。あとは「激落ちくん」のおかげかもしれません。
こうちゃん:「激落ちくん」って、掃除用のメラミンスポンジ?
とむ:はい。小さなキューブ型の激落ちくんに、スマイルの顔を描いて持っていきました。移動中は手の中に握って持ち歩き、休み時間は机の上に置いて眺めました。
――「激落ち」って、普通に考えたら一番縁起の悪い言葉ですよね?
とむ:そうです(笑)。でも、「自分はここまでやってきて実力があるんだから、激落ちくんを持っていたって受かるんだ」と思っていて、それを証明するような気持ちで持っていきました。それに激落ちくんは汚れを落とすけど、激落ちくんが落ちるわけじゃないですから。
こうちゃん:その考えは大賛成。「すべる」「落ちる」を全部避けようと思っても、会場に向かう途中で転ばないとは限らない。そんな時に、ゲンを担いでいると「もう終わりだ」と思ってしまうけど、激落ちくんをあえて持っている人なら気にしないということだよね。

1日1点上げていけば、必ず目標点に届く
とむ:あと、共通テストの当日はウキウキしていたんです。「どんな問題が出るかな」「おもしろい問題だといいな」って。なんていうか……イベントとか、フェスに行くみたいな気分になっていました。
――とむさんは共通テスト1年目の世代ですが、変更点などに不安を感じたりはしなかったのでしょうか。
とむ:逆に楽しみでした。だって全員が初めての共通テストなので、過去問は参考にならない。過去問を徹底的にやって、「同じ問題が出た。やった」って合格するのは、つまらないと思うタイプなんです。
こうちゃん:わかる。きちんと勉強していれば、出題形式が変わっても絶対に解ける。変化に対応できるような勉強をすることが大事なんだよね。
――さすがですね。では、受験生に向けて、お二人からアドバイスをお願いします。
とむ: 1日1点上げるつもりで頑張ってほしいと思います。私は高3の夏の段階で、「あと150点上げなくちゃいけない」という状態でした。共通テストで810点くらい必要なのに、模試では660点。150点足りないと思うとすごいプレッシャーなんだけど、共通テストまでは150日ぐらいある。だったら1日1点上げれば追いつくと気づいて、その気持ちで勉強しました。
こうちゃん: 1日1点って、かっこいい!
とむ:もともと私は、勉強に限らず、「昨日と今日の自分が同じ」というのが嫌なんです。人生がカードゲームだとして、「昨日の自分」というカードと、「今日の自分」というカードを同時に出した時、常に「今日の自分」が勝つ状態でありたい。1歩1歩は小さくても、昨日の自分より上に行ければ、きっと合格できると思います。
こうちゃん:僕がみんなに言いたいのは、「分の悪い賭けをするな」ということ。そもそも受験は「運」。知っているものが出れば点数が取れるけど、そうでないものが出たら落ちる。そのために、「だれも知らないところを狙って勉強しよう」と思う人がいますが、それは確率の低い賭けです。試験までの残りの日数が少なければ少ないほど、きちんと教科書を読むこと。ウルトラCより、みんなが解ける問題を落とさないことの方が大事です。
――共通テスト前に親がアドバイスできることってありますか?
こうちゃん うーん……ないかなぁ。親の力で変えられることなんて99%ない。でも実は残り1%が大事なんですよ。家の空気が落ち着いているとか、ごはんがおいしいとか、あと家でケンカしないとか。だって学校と塾で疲れ果てている受験生がホッとできるの、家だけなんですよ。穏やかに過ごさせてあげてください。
QuizKnock(クイズノック)/クイズ王で知られる伊沢拓司さんが率いる東大発の知識集団。伊沢さんが中心となってエンタメと知を融合させたメディアを運営する。「楽しいから始まる学び」をコンセプトに、何かを「知る」きっかけとなるような記事や動画を毎日発信中。YouTube(https://www.youtube.com/c/QuizKnock)チャンネル登録者は214万人を突破(2023年11月時点)。こうちゃんは東大法学部を卒業、とむさんは東大教育学部の3年生。
(文=神 素子、写真=山本倫子)

記事のご感想
記事を気に入った方は
「いいね!」をお願いします
今後の記事の品質アップのため、人気のテーマを集計しています。
関連記事
注目コンテンツ
-
ハイレベルな資質・能力を備える日本語教員を養成 ~学習院大学で体得する国際感覚
日本で暮らす外国籍の人々が増えるなか、日本語教師という職業が国家資格化された。学習院大学の文学部日本語日本文学科は、...
2025/06/27
PR
-
これからの時代に求められる歯科医師とは? デジタル歯科に対応する授業・研究に力を入れる日本歯科大学
歯科医療にデジタル技術を応用し、正確かつ高品質な治療を行う「デジタル歯科」が主流になりつつある。日本歯科大学でも、C...
2025/06/06
PR
-
国際文化学部を1学科3コースに再編(設置構想中)。社会と連携した学びを軸に多文化共生に貢献する関東学院大学
1884年に創立した関東学院大学は、校訓「人になれ 奉仕せよ」のもと、実践的な学びを展開してきた。2026年4月、国...
2025/05/30
PR
お悩み
-
東京理科大学 学生インタビュー(創域理工学部 経営システム工学科)
東京理科大学へ入学を決めた理由、高校時代・受験の思い出、キャンパスのお気に入りスポット、将来の希望進路・目標など学生...
2024/05/15
-
高3の8月まで部活を続けたい娘、受験と両立できるの? 佐藤ママの超・現実的アドバイスとは
■思春期子育てお悩み相談 部活を頑張る我が子を応援したい気持ちはあっても、受験が近づいてくると、このまま部活を続けて...
2025/04/25
入試
-
新・共通テスト1日目の「英語」終了は午後6時過ぎ 対策の肝は「スピード」
■教育系YouTuber&専門家と予測する 2025年度大学入学共通テスト 今の高校2年生が受験する2025年度入試...
2023/12/20
-
佐藤ママが長男の受験で「まさか」の経験 「絶対に大丈夫ということはない」
「佐藤ママ」こと、佐藤亮子さんは、3男1女全員を最難関の東京大学理科三類に進学させたことで知られています。とはいえ、...
2024/11/05
-
「高大連携」が年内入試につながる 連携大学が多い私立高校は「塾いらず」と専門家
■特集:多様化する年内入試 総合型選抜や学校推薦型選抜といった「年内入試」に比重を置く大学が年々増加しています。私立...
2024/11/08
おすすめ動画
大学発信の動画を紹介します。
大学一覧
NEWS
教育最新ニュース
- 存続ピンチの小学校、PR映画制作 保護者の中にプロ「本気出した」 2025年 07月 16日
- 夏休み中、昼食をすべての放課後児童クラブで提供 1食600円程度 2025年 07月 15日
- 草履にスリッパ、土足… 学校の上履き事情に識者「地域文化を反映」 2025年 07月 13日
- 学術会議論に欠けた視点は 各国で強まる圧力の構図 隠岐さや香さん 2025年 07月 12日
- 全員挙手、3分前学習…子ども苦しめる「かくれ校則」、なぜ不条理が 2025年 07月 12日
Powered by 朝日新聞