■受験生のメンタルヘルスケア
受験生が合格するためには、健康管理も重要です。受験勉強で夜型生活になりがちですが、あまりに夜型化してしまうと、睡眠不足や生活リズムの乱れから体調を崩すことにもなりかねません。受験生が上手に睡眠と付き合うコツについて、睡眠研究の第一人者の三島和夫医師に話を聞きました。(写真=Getty Images)
日本の子供は世界トップクラスの「夜更かし」 肥満・うつ病のリスクも…理想の睡眠時間は?
夜型を悪化させない対策を
勉強時間を確保するために、受験生はどうしても夜型の生活になりがちです。しかし、夜ふかしも程度問題で、寝るのが午前2時、3時といった極端な夜型は、成長の面からも心身の健康面からもお勧めできません。
また、入学試験はほとんどが午前中から始まります。あまりに夜型化してしまうと、試験当日にパフォーマンスを発揮できなくなってしまいます。多少は夜型生活でもいいのでそれ以上は悪化させないこと、そしてなるべく朝型に近づける生活を心がけることが大切です。
「朝の光」を利用して体内時計をリセット
朝型に近づけるには、具体的にどのようなことをすればいいのでしょうか。
コツは、「光」を利用することです。人間の体内時計(生活リズム)は、日中と夜間に浴びる光(ブルーライト)のバランスで調整されています。目の網膜には体内時計をコントロールする視細胞があり、早朝から昼すぎにかけて強い光を浴びると、目から入ってきた光によって体内時計の時刻が早まり、夜型傾向に歯止めをかけることができます。太陽光であれば曇りの日でも体内時計を動かすくらいの光が得られます。空や明るい方向に顔を向けるだけでも光は入ってきます。
朝型化の効果が特に高いのは、午前8時くらいから11時くらいまでです。登校時はしっかり朝日を浴びましょう。電車に乗っている間、ドアのそばに立って外を見るのもお勧めです。午前中の休み時間は教室の窓際に移動し、明るいほうを見ているだけでもかなり効果があります。朝起きるのが苦手な人はやってみてください。
休日もいつもの時刻に起きる
夜型の人は、土日など学校がない日は昼近くまで寝ていることが少なくありません。平日の睡眠不足を「休日の寝だめ」で解消しているわけですが、平日と休日の睡眠時間帯がずれると生活リズムが乱れ、体調不良を起こしやすくなります。これは時差のある国へ旅行したときに生じる時差ボケと同じ状態で、「社会的時差ボケ」とも呼ばれています。
「土日くらいゆっくり寝たい」という気持ちは理解できますが、わずか2日間でも午前中に光を浴びないと体内時計が夜型化し、平日の努力が無駄になってしまいます。休日も頑張っていつもと同じくらいの時刻に起きて、朝の光を浴びることが大切です。平日の寝不足は、体内時計への影響が少ないお昼前後に1時間+αの昼寝をして、解消するようにしてください。
また、平日と休日の数時間の体内時計のずれが5年、10年続くと、血圧が上昇し血糖が下がりにくくなって生活習慣病の発症リスクが高まります。さらにうつ病になりやすくなることもわかっています。社会人でも休日に寝だめをしている人はたくさんいますが、生涯心身ともに健康に過ごすためにも、「休日もいつも通り」を心がけましょう。
「寝る前にスマホ」はNG
朝の光は体内時計を朝型に近づけてくれますが、夕方以降に光を浴びると、体内時計は後ろにずれこみます。この時間帯に問題になるのは、スマホやタブレットなどのデバイスから出るブルーライトです。夜は日中よりも光の影響を受けやすいので、太陽光よりもかなり弱い光でも、長時間目に浴び続けていると夜型化してしまいます。
夜遅くまで頑張って勉強したあと、「寝る前にちょっとだけ動画を見よう」とか「SNSをチェックしてから寝よう」という人は多いのではないでしょうか。しかし、ブルーライトには即効性の覚醒作用があるので、目がさえて寝つきにくくなってしまいます。眠れなくなって延々と動画を見続ければ、さらに夜型化を進めてしまうことにもなりかねません。スマホを見るのは翌朝まで我慢して、勉強が終わったらすみやかに電気を消して横になりましょう。
「遅い時間の長すぎる昼寝」がさらなる夜型化を招く
「昼寝(仮眠)」の時間にも注意が必要です。
学校や塾から帰宅した後や夕食後、あまりにも眠くてうたた寝をしたら、その晩はなかなか寝つけなくて困ったという経験はありませんか。昼寝は、時間帯が遅くなるほど、「夜の本格的な眠りへの影響」が大きくなります。また、長すぎる昼寝も、睡眠リズムを崩す大きな原因になります。長く眠ると深い睡眠に入ってしまうことが多く、目が覚めてもボンヤリして勉強に集中するまでに時間がかかります。さらにその晩はなかなか寝つくことができないなど、夜の睡眠に悪影響を与えてしまう場合があります。
仮眠をとるならできるだけ早い時間帯(せめて夕食前まで)にしましょう。30分以内がベターですが、睡眠不足が続いて眠気が取れない人は1時間程度を目安にしてください。午後8時以降に眠くなったら、仮眠ではなく、そのまま朝まで寝てしまいましょう。夜型化を防ぐことができますし、翌朝目覚めてから勉強したほうがずっとはかどります。

【回答者】
三島和夫(みしま・かずお)医師/秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座教授。秋田大学医学部医学科卒。同大学医学部精神科学講座准教授、バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長などを経て、2018年から現職。睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者を歴任。
(文=熊谷わこ )
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