「本心でない志望理由書、すぐ見抜かれる」 総合選抜で大学合格、大切なポイントは

2023/11/07

知りたい!年内入試

大学入試の変化で広がる「年内入試」と呼ばれる「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」。一般選抜とは異なり、ペーパーテストで競うわけではありません。合否はどのように決まるのでしょうか。そして合格のために必要なことは何でしょうか。(写真=早稲田塾提供)

やりたいことを明らかに 興味ある研究者を調べて

総合型選抜(旧AO入試)は、志望理由書や高校時代の活動報告書、面接などを通じて、総合的に評価する入試です。受験生が、大学の求める学生像(アドミッションポリシー)に合っているかどうかが合否のポイントになります。年内入試には学校推薦型選抜もありますが、こちらとはどう違うのでしょうか。

総合型選抜専門塾AOIの木伏聖陽さんによると、「学校推薦型選抜では学校長の推薦が必要になるので、評定平均が4.0以上など、高校で一定の成績を収めていることが応募できる条件となります。また、スポーツの全国大会で優勝したなど、秀でた能力を大学側が評価することも多いです。一方の総合型選抜は、人物評価の入試であり、高校での成績は学校推薦型選抜ほど重視されません。好きなことや興味のあること、大学で学びたいことや研究したいことをアピールし、それを評価される試験といっていいでしょう。それほど高い評定平均がなくても受験できる大学は多くあります」。

同じく総合型選抜専門塾、早稲田塾の中川敏和執行役員は、こう話します。

受験生が学びたいことや研究したいことと、それができる大学に出願することが、まずは合格の第一歩です。そのために早くから探究学習などに取り組み、やりたいことを明らかにする必要があります。同時に大学のアドミッションポリシーを理解し、その大学に自分の興味と関連する研究者がいるかどうかや、カリキュラム、シラバス(講義計画)などをよく調べることも大事です」

本心でない志望理由書は、すぐに見抜かれる

学びたいことや、研究したいことを記載するのが志望理由書です。出願書類の中でも最も重要なものです。呼称は自己推薦書や学修計画書など、大学によって違いがあります。また、具体的な設問が設けられている場合もあれば、自由記述の場合もあります。面接は、この志望理由書に基づいて行われます。

本心ではないことが志望理由書に書かれている場合、すぐに見抜かれてしまう」というのが専門家の共通した意見です。

ChatGPTの登場もあり、文章をうまく書くことは誰にでもできるようになっています。面接で本当に本人が書いたものかを確認する意図もあるでしょう」(AOIの木伏さん)

「そもそも、合格するために志望理由書の内容を考えるというのは間違っています。やりたいことが先にあることが大前提です。もっといえば、興味のあるテーマについて探究学習をしているが、まだ結論は出ていないので、それを大学で行いたいというのが理想です。やりたいことや研究したいことが、部活やボランティア活動から生まれることもあります。例えば、スキー部に所属していたある男子高校生は、自分の大好きなスキーについて考える中で、休業や廃業に追い込まれているスキー場が増えていることを知りました。これを解決するために大学に入りたいと志望理由書に書きました。評定平均はそれほど高くありませんでしたが、総合型選抜で合格することができました」(早稲田塾の中川執行役員)

志望理由書のほか、課題論文などを課す大学もあります。例えば、立教大学異文化コミュニケーション学部(方式A)の24年度自由選抜入試では、以下の課題作文を課しています。「異文化コミュニケーション」について考えさせ、自分の意見を述べる内容です。

(立教大学2024年度自由選抜入試要項から抜粋)

英語資格の取得は早くから取り組みを

志望理由書はもちろん重要ですが、これだけが評価対象ではありません。ほかにどのような書類が必要なのか、またそれぞれのポイントを見ていきましょう。

まず、出願条件として「評定」「英語資格」「活動実績・資格」があります。評定は学習成績の状況を示し、評定平均と呼ばれます。出願時点で最新のもの(高校3年の1学期まで)で評価されます。浪人生可の大学・学部もあり、その場合は卒業時点のものが使われます。

「出願条件として『評定平均3.5以上』としている大学が多いです。ただし、総合型選抜では評定が高いからといって合格するとは限りません。なお、出願条件に基準がない場合は評定が低くても気にせず、出願してください」(AOIの木伏さん)

英語資格は、実用英語技能検定(英検)、TOEIC、TOEFLなどの英語検定試験のスコアです。

「最近は、英語の4技能(リスニング、リーディング、スピーキング、ライティング)を評価するものが増えています。それぞれのテストの間で点数換算できるようになっており、英検2級相当や英検準1級相当を出願資格や加点基準としているところが多いです。英語資格がなくても合格できるところはありますが、その分、他の分野で評価される必要はあります」(同)

なお、総合型選抜の出願時期は多くの大学が9月中です。このため、英語資格は遅くとも8月までに取得する必要があります

「英語資格は高1から受験することをすすめます。早くから取り組めば高2で英検2級は十分狙えますし、準1級を取得することも不可能ではないでしょう」(早稲田塾の中川執行役員)

一般選抜では合格が難しい大学に、総合型選抜で合格するケースも

活動実績・資格は、学校内外の活動について資料を作成し、提出します。生徒会活動や部活、スポーツの実績、コンテストの入賞歴やボランティア活動のほか、英語資格、漢字検定、数学検定などが含まれます。当日の試験では、面接と小論文というところがほとんどです。面接は志望理由書の内容を確認する目的のほか、コミュニケーション能力や学問の知識などを評価します。大学によってはプレゼンテーションやディスカッションが課せられるところもあります。小論文は、読解力や論理的に意見を述べる力を見ます。国公立大学の場合は大学入学共通テストが課せられることもあります。

総合型選抜は、選考結果を点数化している大学はほとんどなく、受験した場合の合格確率が見えにくい試験です。それでも、「過去の受験生の分析から、合格できそうかどうかの予測はつく」というのが専門塾の見解です。さらに総合型選抜はテストの点数だけを問う入試ではないため、本人の偏差値からは一般選抜での合格が難しい大学に、総合型選抜で合格するケースも少なくないそうです。

「総合型選抜では、大学で何を学び、どう将来に生かしていきたいのかという意欲や情熱が必要です。テストの点数だけで評価されるわけではないため、高校のランクはあまり関係ないと考えていいと思います」(早稲田塾の中川執行役員)

一般選抜の学科試験を回避したいからという消極的な考え方は望ましくありませんが、総合型選抜という方法が、大学選びの幅を広げてくれる可能性はありそうです。

(文=狩生聖子)

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