【大学受験の仕組み】受験生2人に1人が「年内入試」で大学へ 「探究学習」でさらに拡大か

2023/11/09

■知りたい!年内入試

大学入試で総合型選抜や学校推薦型選抜を実施する大学が増えています。これらの入試が増える背景や、どのような生徒が向いているのかを解説します。(写真=早稲田塾提供)

2人に1人は年内入試で入学 誰もが検討すべき状況

以前の大学入試は、年明けの1月に行われる大学入試センター試験(現在の大学入学共通テスト)から各大学の個別試験という一般入試(現在の一般選抜)が一般的でした。しかし、2022年度入試では、全国の大学入学者のうち学校推薦型選抜(旧推薦入試)が31.0%、総合型選抜(旧AO入試)が19.3%と合わせて50.3%となり、一般選抜を上回っています。こうした総合型選抜や学校推薦型選抜は9月から12月にかけて実施されることから、最近は「年内入試」と呼ばれています。今では2人に1人は年内入試で大学に入学しているのです。

(令和4年度文部科学省委託調査「大学入学者選抜の実態の把握及び分析等に関する調査研究」から抜粋)

総合型選抜の専門塾、洋々(ようよう)の清水信朗代表は「現在は年内入試を実施していない大学のほうが珍しい状況」と話します。

「16年度入試から始まった私立大学の定員管理厳格化(23年度入試からは厳格化を緩和)の影響もあり、一般入試の入学者は減ってきました。この分を年内入試に割り当てる大学も増えています。一方で、少子化の影響もあり、早い時期にできるだけ多くの学生を確保したいという大学側の意図もあります。どの大学を志望するにせよ、ひとまず年内入試も含めて検討してみるといいでしょう

年内入試に力を入れる大学が増える背景には、この10年来の大学入試改革の影響もあります。総合型選抜専門塾、早稲田塾の中川敏和執行役員は、「大学入試改革を通じて多面的評価の必要性が広まったことが、総合型選抜や学校推薦型選抜には追い風になった」と話します。

「大学教育を受けるために必要な基礎学力の確保を前提にしたうえで、1点刻みの評価からの脱却を目指した入試方法の多様化が求められました。国立大学では21年度入試までに一般選抜以外の入学者を3割とすることを目標にするなど、総合型選抜や学校推薦型選抜を推し進める流れができました」

個別学力試験が課される場合も

「年内入試」と呼ばれるものには、大きく分けて3種類あります。「総合型選抜」「学校推薦型選抜(指定校制)」「学校推薦型選抜(公募制)」です。それぞれの特徴は以下の通りです。

【年内入試の分類】

(早稲田塾の資料をもとに編集部で作成)

いずれも主に1次選考で志望理由書や活動報告書などの書類選考があり、2次選考で面接・小論文などを課すことが多いです。2次選考では、学科の筆記試験や口頭試問を課す大学もあります。また、国立大学では年内に面接や提出書類などによる選考を行い、共通テストの成績で最終合格とする場合もあります。年内入試では意欲などが重視されますが、その一方でしっかりとした基礎学力を求める大学もあることがわかります。

年内入試は目的意識を問う入試

大学入試改革と並行して、学習指導要領が改訂され、高校では22年度入学生から新しい学習指導要領に移行しています。この目玉の一つが「総合的な探究の時間」(探究学習)です。

探究学習では興味のあるテーマを見つけ、問いを立てるところからスタートし、それを自分なりに解決していくために調査、分析して発表し、振り返ります。この探究学習が、今後、年内入試の拡大につながるというのが、専門家たちの共通した見方です。

探究学習を通じて、自分の興味や学びたいことが見えてくるでしょう。それによって、進学したい大学や興味のある学部などもわかってくると思います。もっと言えば、なぜ大学に行くのか、大学に行く必要があるのか、ということまで突き詰めて考えることになります。年内入試は、目的意識を問う入試です。探究学習はそのきっかけになり得ると思います」(洋々の清水代表)

探究学習で見つけた『問い』が未完成で、その続きを大学で取り組みたいと、自然な流れで大学を志望する生徒が増えています。探究学習に積極的に取り組むことで、学びへの意欲やリサーチ力、表現力が培われ、年内入試への素地をつくることができます」(早稲田塾の中川執行役員)

年内入試が広がっている背景には、こうしたいくつかの要素が重なっているのです。

(文=狩生聖子)

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