■【インタビュー・後編】
土佐兄弟は、兄・卓也さんと、7歳年下の弟・有輝さんによるお笑いコンビ。高校生の日常をリアルに再現した「高校生あるある動画」が TikTokやYouTubeで人気を集め、2023年3月には、受験期の高校生を対象にしたYouTubeチャンネル「大学ドコイク」をスタートしました。インタビュー後編では、「大学ドコイク」の取材時に抱いた学生の印象や、二人が考える大学選びの基準、さらに受験生と向き合う親のあり方などについて、平岡妙子編集長が聞きました。
――YouTubeチャンネル「大学ドコイク」を始めたのは、どうしてですか。
卓也さん(以下、卓也):最近は「高校生あるある動画」に加えて、「大学生あるある動画」も投稿しているんです。大学生の日常を投稿していることもあって、同じ「大学」という枠組みの中で何かできないかな、と思ったのが始まりですね。
――すでにいろいろな大学へ撮影に行っていますが、大学生の印象はいかがですか。
有輝さん(以下、有輝):みんな大学選びの段階でかなり調べていると知って、驚きました。自分はこの分野に興味があって、調べたらこの大学にこういうゼミがあって……みたいな話を聞くと、単純にすごいな、と思います。みんな、本当にまじめですよ。
卓也:確かにね。

有輝:まじめといっても堅苦しいということじゃなく、自分の好きなことに対して、まじめなんですよね。適当に流しておけばいいや、という感じの人は、今のところ一人もいない。今の学生は「自分はこれが好きだから、勉強するんだ」っていう信念を持っている気がします。
卓也:いや、必ずしも全員がそういう信念を持っているわけではないと、ぼくは思いますよ。特にやりたいことがないから、とりあえず大学に行くって人もたくさんいるんじゃないかな。でも、それはそれでいいんですよ。特に好きなことがないまま大学に入るのがダメなんてことは、まったくないです。
有輝:いや〜、お笑いやりながら大学に通っていたぼくからすると、特にやりたいことがないのに大学に行くのって、結構苦痛だと思うよ。最初から好きなことがあって入るほうが絶対にいい。
卓也:そりゃそうかもしれないよ。でも、好きなことや打ち込めることなんて、そう簡単には見つからないでしょ? 高校卒業までに見つかった人はラッキーだね、ってくらいの感じだよ。それに、入学するときは好きなことが見つかっていない人も、大学に入ってから見つかるかもしれないんだし。
「好き」のハードルは高くしないで
――自分の好きなことが見つからないと悩んでいる学生は多いと思います。
有輝:好きなこと、っていうとものすごく大きなことと思いがちだけど、ほんのちょっとしたことでいいんですよ。好きなことが見つからない人は、もしかすると「好き」のハードルが高過ぎるのかもしれない。「最近知って、今めちゃくちゃハマってるんですけど」みたいなライトな「好き」でも、大学での勉強につなげる熱量としては十分だと、ぼくは思いますけどね。
――ライトな「好き」が勉強になりますか?
有輝:「大学ドコイク」で取材した日本女子大学に、ウルトラマンが好きだという女の子がいて、これが勉強なのか?と思いましたけど(笑)。でも、入り口は何でも良くて、それがゼミの研究につながっていくみたいで。好きなことをアツく話しているのは、めっちゃ楽しそうでいいなぁと思いましたよ。
卓也:そういう意味で言うと、何かに憧れる気持ちも、大学選びの入り口としてはありですね。ぼく自身、教師になりたいと思ったのは、反町隆史さん主演のドラマ「GTO」がきっかけでしたから(笑)。先日、「大学ドコイク」の大学潜入企画で行った桜美林大学の航空・マネジメント学群にも、いたよね。「キムタクのドラマに憧れてパイロットを目指しました」っていう学生が。
有輝:いたね。パイロット養成コースは、面白かったな。
親の口出しは愛情か、干渉か?
――最近の大学は新しい学部がたくさん誕生していて、研究内容も多様です。芝浦工業大学では、最新のゲーム機を置いている研究室がありましたね。
卓也:情報工学科の研究室ですね。コンピューターの活用法を専門にした研究室で、ゲーム機も研究用だって聞いて驚きました。 AR(拡張現実)技術を使ったeスポーツにも挑戦しましたけど、あれで体育の単位が取れるそうですね。楽しいだろうなあ。
有輝:親の世代からすると、聞いたことがない学部とか研究もあるんだろうけど、子どもが興味を持った分野なら、それを認めてあげてほしいですね。ゲームやK-POPなんて勉強じゃないでしょ、とか言わないで。
卓也:子どもを持つ立場から言わせてもらうと、親の気持ちも複雑なんだよ。子どものことを思えばこそ、「親の言うことのほうが正しいんだから、黙って聞け」って言いたくなる。自分自身が学歴や仕事で成功している親ならなおさら、自分のやり方を子どもにも継承させたいって思うだろうし、それはそれで愛情だからね。
有輝:でも、子どもの人生は親の人生じゃないよ。失敗したって、何とでもなりますって。
卓也:そりゃ、あなたは芸人で楽しくやっているからいいけど、そうじゃないこともあるんだよ、世の中には。
有輝:この前、番組でも占い師に言われていたよね。「子どもに干渉し過ぎ」って。あー、お兄ちゃんの子ども、かわいそうに……。
卓也:いやいやいや、もちろん進路を押し付けるようなことはしませんよ。ただ、大学受験は人生のターニングポイントですから、話し合いや意見交換は、たくさんしようと思います。

子どもを否定するのはダメ
――時代が変われば、親の成功例が子どもには通用しないこともありますからね。
有輝:そうですよね。こうしなさいって命令されたら、子どもは「うるさいな」ってなりますから、何かアドバイスするなら、選択肢だけ示して「どっちがいいの?」って言うくらいでいいと思いますよ、ぼくは。
卓也:まあ、子どもにあれこれ言う前に、親も大学の最新情報を知っておかないと。 頭ごなしの否定はダメだね。
――最後に、高校生に向けてメッセージをお願いします。
有輝:大学選びに必要なのは、ほんのちょっとの勇気なのかな、と思います。例えば、先生や親に反対されても「いや、自分はこの大学に行きたい」って言える勇気。友だちに目標を宣言しちゃうのも、いいと思います。ぜひ自分の選んだ道に自信を持って、大学という新しい世界に飛び込んでください。
卓也:少しでも気になる大学があれば、まずはインターネットで情報を調べてほしいと思います。ぼくの時代は、大学の中の様子を見たかったらオープンキャンパスに行くしかなかったから、あまり多くの大学を見て回ることはできなかった。でもいまは、ネットでいくつでも映像を見られますからね。どこの大学にも映像的なものはあると思いますし、「大学ドコイク」も見ながら、ぜひたくさん情報を集めて、しっかりと大学選びをしてください。
【前編】TikTok総再生回数12億回以上の人気芸人「土佐兄弟」が振り返る大学受験

土佐兄弟/兄の卓也と弟の有輝によるお笑いコンビ。2014年、活動開始。SNSで公開した「高校生あるある動画」が話題を呼び、バラエティー番組にも多数出演。23年5月現在、YouTubeの「土佐兄弟の青春チャンネル」は登録者数42.8万人、有輝のTikTokはフォロワー130万人。23年には新たなYouTubeチャンネル「土佐兄弟の大学ドコイク」に出演し、大学選びに役立つさまざまな情報を発信中。
(構成=木下昌子)
(写真=篠塚ようこ)

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