■就職に役立つ大学選び
人気の商社への就職は東大、京大、一橋大、早稲田大、慶應義塾大などの難関大学から多数の応募があり、入社するのが難しいことが知られています。文系学部からの就職が目立ちますが、実就職率で分析すると、工科系の単科大学ながら実績を出している大学があります。(写真=豊田工業大学提供)
資源を扱う部門では理系の知識が必要
商社には文系からの就職が目立ちますが、石油や天然ガスといった資源を扱う部門では理系分野の知識が必要です。大学通信 情報調査・編集部の井沢秀部長は「5大商社への就職者数ランキングで必ず上位に入るのが、東京工業大学と東京理科大学です。理系大学出身者の活躍の場は多いです」と話します。
2022年の「著名400社 業種別実就職率」(大学院進学者を除く卒業生(修了者)のうち何%が就職したかを示す指標。大学通信調べ)ランキングの商社部門では、東京工業大学や東京理科大学を抑えて6位に入ったのが、愛知県名古屋市にある豊田工業大学です。
学部生の半数近く、院生の3割が海外留学を経験
1981年に設立された豊田工業大学は、次代を担う国際産業リーダーとして、さまざまな課題を解決し、グローバル社会に貢献できる技術者や研究者を育成することを目標にしています。
「グローバル企業であるトヨタ自動車が資金を投じてつくった大学で、学費は国立大学並みです。実践的な技術力を養うことに加えて、工業大学でありながら高い語学力も身につけることができるカリキュラムが確立されています。卒業生の就職先にはそうそうたる企業が名を連ねています」(井沢部長)
一学年100名の少人数教育により、外国人英語教員とも身近に接することができる(写真=豊田工業大学提供)
海外でのインターンシップも
2022年度に卒業した同大学の学生は、TOEIC®の平均スコアが4年時で600点以上と、全国の理・工・農学系学部4年生の平均(506点)を大きく上回っています。留学やインターンシッププログラムなど豊富な国際交流の機会があることが背景にあります。コロナ禍以前の2019年度のデータによれば、学部生の43%、大学院生の33%が、豊田工業大学シカゴ校への協定留学をはじめとする海外留学や、インターンシッププログラムに参加しています。また、海外からの研究員や学生も積極的に受け入れています。
学内には、語学教育や国際交流促進を目的とした機関「International Communication Plaza(通称iPlaza)」があり、英語での研究発表や、学生の海外での体験報告会、留学生との交流などが行われています。さらに、外国人英語教員によるフリー英会話レッスンなど、日常的に英語に触れる機会が提供されています。
iPlazaでは定期的に英語で学生が発表する機会を設けている(写真=豊田工業大学提供)
学生部長の齋藤和也教授は、こう語ります。
「世界各国から博士号を取得したPD研究員(Post-Doctoral Fellow)が来ています。研究内容を英語で議論するなどレベルの高いコミュニケーションも見られ、とてもアグレッシブな雰囲気です」
研究室配属後は、外国人PD研究員と共同で研究を進めることもあり、自然と語学力も洗練されていく(写真=豊田工業大学提供)
インターンシップで最前線の研究開発
学生が業界理解を深めるインターンシップの経験は、就活に有利に働くことがあります。就職みらい研究所の調査によると、インターンシップや1日仕事体験に参加した23年卒の学生は86.7%で、経験者の平均参加回数は8.85回となっています。しかし、短期間のプログラムでは、体験できる内容に限りがあるのが実情です。
同大学では、トヨタ自動車が母体である強みを生かし、トヨタ自動車の系列企業や日本を代表する電機メーカーなどでのインターンシップを提供しています。1年次と3年次の2回の機会があり、単位として認定します。
「1年生は製造ラインに入り、1カ月間、ものづくりの現場を体験します。3年生は最低1カ月半以上、研究開発分野で競争力を維持するための知恵を結集している最前線で学ぶことができます。3年生のインターンシップでは、具体的な内容を明かすことができないほど、重要な研究開発分野に関わらせてもらうこともあります」(齋藤教授)
幅広い知識の修得と豊富な体験的授業を通じて、工学的思考プロセスと課題解決力を養う(写真=豊田工業大学提供)
独自のハイブリッド教育
機械システム、電子情報、物質工学の3分野を融合した「ハイブリッド教育」という独自の教育体系も特徴です。独自の学びとインターンシップなどの実践的な体験の成果が、商社への就職率の高さにつながっているようです。卒業後の就職先から大学を選ぶ場合は、就職者数だけでなく、実就職率にも着目すると、その大学の実情がわかるかもしれません。
2022年 著名400社 業種別実就職率 商社編(13社)
大学通信『大学探しランキングブック 2023』から「2022年 著名400社 業種別実就職率」を一部引用。
(文=外山武史)

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