「はじめに」のページは必ず読め! 学習参考書マンガ『ガクサン』作者が教える、自分に合った選び方【後編】

©佐原実波/講談社

2025/06/27

■著名人インタビュー

学習参考書を題材に、参考書の出版社を舞台にしたマンガ『ガクサン』が注目を集めています。読者には中高生の保護者も多く、編集部には「自分の学生時代を思い出した」「高校時代に読みたかった」という声も届いているそうです。作者の佐原実波さんに、参考書選びのコツや、自身の高校時代の話などを聞きました。(マンガ=佐原実波『ガクサン』〈講談社〉から)

>>学習参考書の出版社が舞台のマンガ『ガクサン』作者に聞く 良い選び方と、いまの中高生の悩みとは?【前編】

美大から私大文系に進路変更

――佐原さんは、どのような高校生だったのでしょうか。

中学受験をして私立中高一貫校に通っていましたが、あまり勉強をせず、部活や趣味に没頭し、好きなバンドのライブに通っていました。成績も上がり下がりが激しく、高1のときは数学で一番下のクラスになりました。英語のテストも、赤点ギリギリだった記憶があります。

振り返ると、なかなかやんちゃな高校生でしたが(笑)、大学入試もやりたい放題でした。高2のときに美大に行きたいと思って美大受験の予備校に通ったものの、あまりうまくいかなくて、高3になってから私大文系に変更しました

自分に合った暗記方法を試して

――学習参考書は活用しましたか。

勉強自体は嫌いではなかったし、参考書も持っていましたが、使いこなせてはいませんでしたね。当時の私は「勉強は自分でするもので、参考書で情報を得るなんてダサい」と思っていました。書店へ行っていろいろ見ていたら、語学春秋社の「実況中継」シリーズなど、読書好きな私にもしっくりくる参考書にも出会えたはずで、もったいない話ですよね。その後悔の念も『ガクサン』を描く原動力になっているかもしれません。

それでもほんの数冊、気に入って使っていた参考書もあります。例えば、高3のときに友達みんなが持っているので買った『単語王』です。この単語集は、わからない単語があったページに付箋を貼って、バッサバサの状態でいつも持ち歩いていました。

とにかくたくさんの単語が収録されていたので、短期間でたくさんの単語を覚えたかった私には合っていたと思います。今はもう販売されていないのですが、「私も高校のときに使っていました」という人が案外いて、当時の話で盛り上がったりします。

――暗記作業は、書いて覚える人、口に出して覚える人など、個性が出ますよね。

『ガクサン』を描く中でいろいろな人の話を聞いて感じたのは暗記が苦手だという人の中には、暗記そのものが苦手なのではなく、自分に合った暗記方法がわかっていない人が多いのではないか、ということです。例えば、音で覚えるのが苦手な人は、歴史の年号を語呂合わせで暗記しようとしても頭に入りません。そういう場合は、声に出して読んでみるとか、書いてみるとか、他の方法を試すことで自分に合った方法が見つかると思います。

 

英語のリスニング学習に後悔

――参考書も勉強方法も自分に合うものを選ぶことが大切なのですね。

私の場合、受験勉強を始めたのは周りの同級生より遅かったものの、自分に合った勉強法を自力で探せるタイプだったので、最終的には何とかなったところがあります。ただ、自力に頼る分、親に対しても先生に対しても、周りの人のアドバイスを聞き入れない頑固なところもありました。学習参考書もそうですが、もっと他の人のアドバイスも取り入れるべきだったと今は思います。

――そうすればもっとうまくいったかも、と思うのは具体的にどのようなことですか。

とりわけ反省しているのは、リスニングの学習です。当時は学校も今ほどリスニング授業に力を入れていなかったとはいえ、学習参考書をうまく使えば勉強する方法はあったと思います。

でも、通っていた高校に帰国子女の同級生が多かったせいか、「日本で生まれて、日本で育った私が英語の聞き取りなんてできるわけない」と思い込んでいたんですよね。結局、英語のリスニング力は身につけることができないまま、今に至ってしまいました。

子ども向け発音教材がおすすめ

――リスニングの教材も、今は種類が豊富ですね。

私が実際に読んでみて、すごく効果があると感じた教材の一つが、『あいうえおフォニックス 英語の母音をひらがな5つで完全攻略!』(KADOKAWA)です。YouTube発の子ども向け発音教材ですが、リスニング力の基礎となる正しい発音を学びたい人は、中高生でも大人でも初めにやるべき教材だと思っています。

「はじめに」を読んでみる

――自分に合う学習参考書を探すコツはありますか。

まずは書店へ行って実物を手に取り、中を見ることです。もう一つ、これは毎度お話ししていることですが、学習参考書の冒頭にある「はじめに」とか、「この本の使い方」といったページを読んでみることをおすすめします。そういったページを読むと、その学習参考書の使い方だけでなく、この先生はちょっと理屈っぽいなとか、テンション高めだな、といった著者の人柄とかキャラクターもわかるんです。

あとは触ってみたときの紙の質感とか色の使い方とかが自分の好みに合うかも重要ですし、自分がその学習参考書をどのように使うかも想定して選ぶことです。例えば、たくさん書き込んで使いたい人は、余白の分量もチェックしたほうがいいですね。

 

――最後に受験生にメッセージをお願いします。

アイザック・ニュートンは、先人が積み重ねた業績や知識を利用し、さらに発展させていくことを「巨人の肩に乗る」と表現しました。学習参考書は、職人のような技を持つ編集者のみなさんの英知が集結された、まさに巨人の肩のようなものです。中高生の皆さんには、どんどんその上に乗って、学びを深めてほしいと思います。『ガクサン』でも学習参考書の活用法をたくさん紹介しているので、日々の勉強に役立ててもらえたらうれしいです。

 

<プロフィル>

佐原実波(さはら・みは)/マンガ家。神奈川県出身。2021年から、講談社の青年マンガ誌「モーニング」で、学習参考書をテーマにしたコメディ『ガクサン』を連載開始。2022年からは同社のマンガ配信サイト「コミックDAYS」で連載中。

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>>著名人インタビュー

(文=木下昌子、マンガ=佐原実波『ガクサン』〈講談社〉から)

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【写真】学習参考書マンガ『ガクサン』作者が教える、自分に合った参考書選び

(佐原実波『ガクサン』講談社/2巻から)©佐原実波/講談社
(佐原実波『ガクサン』講談社/2巻から)©佐原実波/講談社

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